【MLB】メジャーは「夢」から「選択肢の1つ」に “田澤ルール”は見直しを検討すべきか

7月12日(木)10時38分 フルカウント

メジャーは“夢”から“選択肢の1つ”へと変化

 野茂英雄氏がドジャースで鮮烈なデビューを飾ったのが1995年。それから24年目を迎える今日に至るまで、かつては遠い存在だったメジャーや海外野球は、日に日に身近な存在となっている。日本プロ野球でさえ地上波では滅多に中継されない今、BC放送やCS放送、あるいはインターネット配信で簡単に視聴できるメジャー。視聴者としてファンが感じる距離感は、日本もメジャーもあまり大差はないのかもしれない。

 取材を続けて感じるのは、選手と海外野球の距離の変化だ。今の40代くらいまでは、メジャーといえば海の向こうにある夢の場所。いつかメジャーでプレーしたい。そういう強い思いを持った選手が、一度は日本プロ野球を経て“挑戦”する舞台だった。

 それが徐々に、野茂氏やマリナーズのイチロー会長付特別補佐らの活躍を経て変化する。メジャー球団にとって日本が人材発掘の場所としての評価を高め、数多くの球団が大学や高校、中学の大会にスカウトを派遣。同時に、U-12やU-15といった世代の国際大会、リトルリーグなど所属チームでの海外遠征など、選手自身が海外に触れる機会も増えた。

 高校時代の菊池雄星大谷翔平清宮幸太郎らが頭を悩ませたように、メジャーを含む海外野球はもはや遠い“夢”ではなく、より現実味のある“将来の選択肢”の1つになっている。先日、ロイヤルズとマイナー契約を結んだ16歳の結城海斗投手は、象徴的な例かもしれない。

 これから先を考えた時、日本プロ野球や社会人、大学、高校ではなく、海外でのプレーを選択する選手は増えてくるだろう。マイナーやメジャー球団でプレーした彼らが、次のステップとして日本プロ野球でプレーしたいとなった時、現行制度ではドラフト会議での指名が必要になる。だが、例えばメジャーで5年以上のキャリアを持っていた場合、高校生や大学生らアマチュア選手と同じ土俵の上で扱うことに、ひずみが生じる可能性はある。時代の流れや情勢の変化を見越しながらの新たなルール整備は、そのうち必要になるだろう。

 今から10年前に生まれた“田澤ルール”も、見直しが検討されるべきルールの1つかもしれない。新日本石油ENEOSに所属していた田澤純一は2008年のドラフト上位指名が期待されたが、日本プロ球団に指名見送りを求めてレッドソックスと契約。この後、NPBは通称“田澤ルール”と呼ばれる規定を導入し、アマチュア選手が日本プロ野球のドラフト指名を拒否して海外球団と契約した場合、当該球団を退団後2年間(高卒選手は3年間)は日本のプロ球団と契約できないと定めた。

海外野球経験者が日本球界にもたらす貢献とは

 日本球界に優秀な人材を引き止めるための対策として設けられたルールのようだ。だが、世間一般がグローバル化の一途をたどり、侍ジャパンが世界の野球に対抗しながら頂点を目指す中で、海外でプロとしての1歩を踏み出し、日本とは違った角度から野球を見て、考えて、実践した選手の視点や経験を、すぐに日本球界に還元しないことは、宝の持ち腐れになりかねない。

 今季のプロ野球界で言えば、ロッテの井口資仁監督、西武の松井稼頭央、巨人の上原浩治、阪神の福留孝介、藤川球児、ヤクルトの青木宣親に代表される海外経験者が還元する経験は、一緒にプレーする選手、所属チームの枠を越え、広く日本球界の成長につながるものだろう。ビジネスという観点を度外視した話だが、海外に活躍の場を求める選手を快く送り出し、日本でプレーしたい選手を快く受け入れる懐の深さが、長い目で見た時、日本の野球をより魅力的なものにするのではないか。

 2009年、田澤は強い意志を持って渡米した。“田澤ルール”に関しても「決まりなので従うだけ」と話す姿勢は一貫している。同時に、自分がどんな制限を受けても構わないが、図らずも“田澤ルール”が生まれたことで後に続く選手の可能性を狭めたかもしれない、と責任を感じ続けている。

 先日、DeNAはダイヤモンドバックス傘下マイナーを自由契約になった中後悠平と契約した。記者会見で、高田繁GMは2年半のマイナー生活を通じて中後が得た経験に期待し、中後は好きな野球を続けるチャンスを与えてくれたDeNAに感謝し、貢献を誓った。

 中後がダイヤモンドバックス傘下2Aと契約解除になった後、田澤は左腕の行く末を気に掛けていた。挨拶をする程度で親交はないが、環境の厳しいマイナーから積み上げた経験を持つ1人として、挑戦し続ける中後の姿に感じるものがあったようだ。「誰が何と言おうと、彼は人とは違う経験をしていますからね」。もちろん、中後には1軍マウンドで結果を残すことが求められるが、自身の経験を伝えることもまた、大きな貢献となるだろう。

 十年一昔どころか、五年一昔、三年一昔くらいのスピードで、物事が目まぐるしいスピードで移り変わる今。時代の流れに遅れないことはもちろんだが、半歩先、一歩先を見据えながら、少しずつ恐れず変化することは大切なのかもしれない。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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