小林祐希 米販売会社と美容サロンを経営する起業家の顔も

7月14日(土)7時0分 NEWSポストセブン

山形県で生産する有機栽培米の販売をスタートさせた

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 西野ジャパンの躍進は、この男にも刺激になったに違いない。2016年5月、キリンカップのボスニア・ヘルツェゴビナ戦で日本代表デビュー、その後移籍したオランダ1部リーグのヘーレンフェーンでは、2シーズンにわたりコンスタントにプレーしてきたMF小林祐希。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の下ではたびたび代表に招集されていたが、本大会開幕を2カ月前にしての突然の指揮官交代も影響してか、ロシアW杯では予備登録メンバー35人からも漏れることになった。


 日本中がロシアW杯に沸いたなか、「4年後のカタールW杯で日本代表のキャプテンになる」という目標を掲げてすでに始動した小林。だが、一歩ピッチを離れれば、日本で米の販売会社をスタートし、オランダで美容サロンを開店させるなど起業家としての道も歩み始めた。現役サッカー選手が描く、ビジネス戦略について聞いた。(取材・文/栗原正夫)


 * * *

──昨年は岐阜県飛騨高山の酒蔵と組んで日本酒をプロデュースしたのを皮切りに、秋には会社も立ち上げ、山形県南陽市で生産された有機栽培米「夢ごこち」の販売をスタートさせました。また、2月にはアムステルダムで美容サロンもオープン。サッカー選手が現役中からビジネスを行うことには賛否ありますが、企業したキッカケは何だったのですか?


小林:いちばんのキッカケは、東京Vのジュニアユース&ユースで同期だった仲間、高野光司(*東京V、ギラヴァンツ北九州などでプレー。現在は小林のビジネスパートナーとして活動する)の引退です。光司は2016年に23歳で現役を引退することになりましたが、一緒にサッカーをやってきた仲間がこれからどうするんだろうって思いましたし、引退したら「さよなら」じゃ寂しいじゃないですか。


 引退後に指導者や解説者になる人もいますが、そうした仕事に就ける人は一握り。じゃあ、サッカーをやってきた人がほかの仕事をやったらダメかと言ったらそうじゃない。やっぱり、サッカーをやってプロにまでなるってすごいことだと思うし、仮に仲間が「あの人サッカー選手だったけどプロではダメだったとか」と言われてしまうとしたら悔しいじゃないですか。会社を立ち上げれば、今後も仲間でいられる。


 サッカー選手は「サッカーだけやってろよ!」って声もあるだろうけど、オレはサッカー以外のことをやっているからといってサッカーに集中していないわけじゃない。むしろ、オランダにいる時は1人でサッカーのことばかりを考えているけど、それだけだと頭が疲れる。もちろんサッカーをやっているときは楽しいけど、それ以外のことで自分のモチベーションを上げるのもいいじゃないですか。それに、企業と言ってもオレ自身は好きなことをやっているだけなんですけどね。


──将来的にはホテルを経営したいとか。


小林:ホテルをやりたい。とういうのも、自分が好きなものを集めて、人が集まる場所を作りたいんです。たとえば、いまこの取材を受けているレストランだって美味しいものがあるから人が集まっているわけで、自分の作るホテルに自分の好きなコンテンツがあったら最高じゃないですか。考え方としては相当イージーなんですが、オレはお酒や美味しいものが好きだし、ファッションも好き。だから、いいレストランがあって、いい美容サロンがあったら、そのホテルに行きたくなりますよね。オフに茶道や陶芸を体験したり、酒蔵や農家さんともいろいろコラボさせてもらっていますが、最後はみんなそこにつながっていくと思うんです。


──すでに具体的なイメージもあるようですね。


小林:例えばそのホテルのレストランで料理人を育成するシステムがあったり、優秀な女性が心配なく働けるようにホテル内に託児所を設けられたらいいですよね。それに、身体に障害のある人でも、その人の良さを生かして健常者と同じ待遇で迎え、プロスポーツ選手を目指しながら夢が叶わなかった人のセカンドチャンスの場にもできたらいい。別に偽善じゃなくて、そういう困っている人の受け皿になれたらと思うんです。


 1度失敗しても、やる気があればチャンスをあげたいですよね。オレだってオランダでトップ下で出たかったけど、監督に適性はボランチにあると言われて試合に出続けた。それだってアリじゃないですか。それを実現するためにも、いまはオレがピッチで頑張りたい。


──ビジネスを始めるというと引退後に備えて、みたいなイメージもありますが、そういうわけでもないんですか。


小林:別に引退後のことを考えてやっているわけじゃなくて、いまやりたいからやっているだけ。困っている人はいま必要ですよね。それに、引退後に働きたくないからいまやっているというのもある(笑)。一般の人には、わかってもらえるかわからないですが、オレはこの20年ずっとサッカーをやってきて、いろいろなものを犠牲にしてきた部分もあります。だから、引退後はできるだけ自分の好きなことに時間を使いたいんです。


 でも、こんなこと言いながら、オレがいまやっていることはぜんぶ好きなことだから、たぶん引退後もいろいろなことをやっていくと思います。酒作りだって米作りだって、好きだからやっているだけで、まったくストレスにはなってないので。ビジネスというと言い方は硬いですけど、自分の好きな仲間と「一緒に何か楽しいことできたらいいよね」って言ってたら、それがたまたまビジネスになっただけなんです。


──オフには、自社で販売している「夢ごこち」を作っている山形県南陽市にある黒澤ファームを訪れ、田んぼにも行っているとか。


小林:オフには、いつも顔を出していますし、田んぼに行ってトラクターも乗っていますからね(笑)。米でも酒でも果物でも、何かに真剣に取り組んでいる職人さんとは話しているだけでも学ぶことが多いし、楽しいですよ。サッカーの監督は、たまに負けたら選手のせいにするような人もいますし、オレ、人によって態度を変えたり言うことコロコロ変わる人の話は聞けないんです。でも、職人さんってみんな一本筋が通っているから男としても尊敬できるし、話もすっと入ってくるんです。


──2月にはアムステルダムに美容サロン「Blatto」をオープンさせましたが、話はトントン拍子で進んだようですね。


小林:元々オランダで知り合った美容師の方から独立したいという話を聞いて、なら一緒にやろうとなったところから話が広がって、やると決めてからオープンまで半年もかかってないと思います。ただ、美容サロンを始めたけど、オレは別に美容に関する知識があるわけじゃないし、オーナーとして経営にかかわるだけ。それに普通、会社を作れば理念とか決まりを作ると思うんですが、オレはそういうものを一切作ってないし、美容サロンだって何1つ決まりごとは作っていません。


 朝何時から始めようが、お客さんの都合に合わせてやっていれば自由にやってもらって構わない。もちろん、それでお客さんが不満に思うようだったら、オレは怒ります。自由度があるってことはそれだけ責任が増すということ。オレは組織として、責任感が強い人の集団にしたいし、スタッフはみんなオレよりも年上の人たちですが、問題があればビシっと言います。最終的には誰かが物を言わなくてもスムーズに回るのが理想ですし、そうしないとオレが遊んで暮らせないじゃないですか(笑)。


──引退後、たとえば指導者などに興味はないのですか。


小林:オレの性格的には向いているかもしれないですが、指導者には興味ないですね。サッカーってたとえば5年、10年周期でどんどん変わっていると思うんですけど、オレはいまのサッカーを知っていても30年後のことはわからないから。そこで、過去の栄光を押し付けて指導するのもどうかと思うんです(笑)。


 たとえば、Jリーグの神戸に元スペイン代表のイニエスタが加入しますけど、神戸の監督はイニエスタにどんな指導をされるのか興味深いし、どういう指導をされるんですかね。もちろん、選手として指導者目線を持っていることは大切で、プレーを言語化することなどは若い頃から意識はしてきました。でも、もし引退後もサッカーに関わるならオレはクラブの社長とかGMやオーナーとして関わる方が興味あります。そっちの方がビジョンが大きそうだし、たとえばその街をサッカーで変えましょうとか、日本サッカーをこういう風に変えられたらということだったら面白そうですけど。


──そういうこう構想もあるのですか。


小林:いやいや、ないですよ(笑)。あくまでイメージですが、もしサッカーに関わる仕事をするなら、そういう方が楽しそうじゃないですか。


──オランダで経験した“世界”を日本に伝える役割もあると思いますが…。


小林:世界を知っていると言っても、世界の端くれですよ。もちろん、オレだってもしバルセロナのようなビッグクラブに移籍できたら、指導者としてブイブイやるかもしれないですが(苦笑)。とにかく、オレはサッカーでもビジネスでも日本人はすごいということを世界に見せたい。日本人が舐められるのだけは絶対に嫌なんですよ。

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