W杯開幕前に知りたい ラグビーボールはなぜ「楕円」なのか

7月14日(日)7時0分 NEWSポストセブン

ラグビーW杯日本大会で使用する楕円のボールと、優勝カップ(時事通信フォト)

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 日本で初開催となるラグビーW杯がいよいよ迫ってきた。7月7日からはラグビーを題材にした池井戸潤原作のドラマ『ノーサイド・ゲーム』も始まり、競技への注目度も高まっている。ラグビー観戦の初心者が、その特徴として真っ先に思い浮かべるとしたら、あの「楕円球」ではないだろうか。


「なんでわざわざ凝った形のボールでプレーするの?」──そんな素朴な疑問に、ラグビー通は「ボールがどこに転がるかわからないから、ラグビーはおもしろいんだよ」などと答えがちだ。ゲームがおもしろくなることを狙って、あえて楕円球にしているというのである。


 本当にそうなのだろうか? 日本のラグビー統括団体である日本ラグビーフットボール協会に尋ねると、「かつてラグビーボールは、ある動物の臓器を利用したものでした」という答えが返ってきた。同協会の広報担当者が解説する。


「イングランドラグビーフットボール協会が発行している『MUSEUM OF RUGBY』という書籍によると、ラグビーボールは、昔は豚の膀胱を膨らませ破裂しないように革で包んだものでした。そのため形や大きさはばらばらでした。形は楕円形でしたが、現在の物よりも少し大きく、球に近いものだったそうです」


 ラグビーボールはもともと、「豚の膀胱」をリユースしたものだったというのである。それを人間が群がって蹴ったり投げたりする様子は、想像するになかなかシュールである。


 ラグビーの統一ルールができようとしていた1800年代前半は、豚の膀胱を風船のように膨らませてボールにしていたという。割れないように牛革などで包んでいたのだが、当然ながら豚の膀胱だから膨らませてもきれいな球体にならず、また技術的にも完全な球体をつくることが難しかったため、そのまま楕円球の時代が続いた。


「前出の書籍には、1862年になってボール製作者Richard Lindonの妻が、豚の膀胱を膨らますことが原因で病気にかかり死亡したことをおそらくきっかけとして、ボールの内袋にゴムが使われ出した──とあります。その後、ハンドリングとパスがキックよりも重要になり、ボールの形がどんどん流線型となった、とも記されています」(同前)


 かつてラグビーは、トライ後のゴールキックによってのみ得点を競う競技であり、トライそのものには得点は与えられなかった。その後トライにも得点が与えられるようになったことと、そもそもキックより手で扱うことを重視されていたことから、球体が少しいびつになっただけの“楕円球”から、よりはっきりと楕円球になっていった。確かに、ボールを強く抱きしめて走るときには、球体よりも楕円球のほうが扱いやすい。


 ラグビーボールが楕円球なのは、「どこに転がるがわからない」といった偶発性を重視したわけではなく、選手がよりプレーしやすいよう機能性を旨として、ボールもまた変わってきた。まったくもって実利的な理由であったのだ。


 ただ、実際、試合中にどこに転がるかわからない楕円球だからこその“演出”が行われることもしばしば。「あのプレーで、相手チームのほうにボールが転がらなければ……」というシーンはよくある。「ボールはひたむきに努力している奴の前に転がってくる」というのも、ラグビー選手が好む“寓話”のひとつだ。


 そんなラグビー特有の寓話をおもしろがれるようになったら、あなたはもう相当なラグビー通といえる。今回のW杯を機に、そんな寓話に親しんでみるのも一興かもしれない。


●取材・文/岸川貴文(フリーライター)

NEWSポストセブン

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