速さは見せるも結果に繋がらなかった琢磨「何もかもがうまくいかなかった」
2018年7月16日(月)12時4分 AUTOSPORT web
今年レイホール・レターマン・ラニガンに移籍した佐藤琢磨は、シーズン序盤に歯車の噛み合わないレースが続いた。その象徴的なレースがインディ500であり、ダブルポイントのインディ500を早々にリタイアしたが故に、今どれほど連続入賞をしてもポイントランキングの挽回が難しいのだ。
だが好結果が続いているのは、琢磨にとってもチームにとっても良い事に変わりはない。前戦アイオワでもぎ取った久々の3位表彰台はチームの雰囲気を明るくしたし、ドライバーの琢磨としても気持ちよいものだったに違いない。
昨年はこのトロントで素晴らしい速さを見せていたレイホールのチームなら、2年連続表彰台も期待しても良かっただろう。
そして現実に金曜日のプラクティスから30号車、琢磨のマシンは速かった。FP1で4番手、FP2で2番手と金曜日のスピードは申し分なく、しかも土曜日午前中のFP3では非公式ながらコースレコードもマークしてトップに立った。
ここまで順調な流れは今シーズン初めてと言って良いだろうし、表彰台どころか、ポールポジション、そして優勝を狙うと言っても嘘には聞こえなかった。
だが琢磨は自制するように「もうタイム差はわずかであってないようなもの。レインタイヤでのデグラーデーションも気になるし、レースはどうなるかわからないと」語った。
そして悪戯なトロントの空が泣き出し、予選開始直前に雨が降ってウエットコンディションへと変わった。
幸いにも琢磨はグループ2で後からのグループだったが、レインタイヤで予選は始まった。雨はすぐに止み、琢磨は1周の計測を終えたらすぐにピットに入りレッドタイヤに交換して、再アタック。Q1を4番手で通過した。
Q2はまずユーズドのレッドでアタックした後に、ブラックタイヤでコースに出たのである。ブラックのフィーリングが良かったということもあったが、残念ながらわずかに足りず予選を7番手で終えることになった。
ギャンブルだったと言えなくもないが、ブラックタイヤでトライする選択肢も増えたほど、マシンは上出来だったのだ。
日曜日は気温もどんどん上昇していくトロント。当日はテニスのウィンブルドン決勝やサッカーW杯の決勝もあり、スポーツイベントが盛りだくさん。レースファンにとっての締めくくりがこのレースだった。
スタートもポジションをうまく取り、6番手に浮上。さらにウィル・パワーとアレクサンダー・ロッシのバトルを、後ろから狙いすましてポジションをひとつアップ。5番手でレースが始まる。
レッドタイヤでのパフォーマンスを危惧していたが、そこでポジションを落とすことなく、最初のピットインでブラックタイヤに履き替えた後は一時3番手まで上がってきていた。
イエローコーションがグリーンになった33周目。トップのジョゼフ・ニューガーデンがリスタート時にターン11のウォールにヒット! チームはスタートキャンセルと読んで、無線で琢磨にノースタートと伝えるが、実際にはレースは続行されたまま。
琢磨は行き場を失いつつも、加速し直して6番手となった。ニューガーデンがピットに入り、さらにポジションを戻す。
その後、マルコ・アンドレッティらとバトルをしつつ周回を重ね2度目のピットインの後には再び5番手に戻り、猛プッシュを続けていた。
前のマルコを捉えるべくベストタイムを更新しながら追った琢磨だが、65周目にターン11外側のタイヤかすに乗り、ウォールにヒット。リヤサスペンションにダメージを負ってリタイア。
速いマシンを手に入れながら、結果に繋がらない週末になってしまった。
「今日は酷かったですね。チームがノースタートって言うから、アクセルを戻したら、みんなにバババーって抜かれちゃって。それと2度目のピットインのタイミングもあまり良くなくて、ピットアウトしたら抜いたはずのマシンが、みんな前にいる感じ。何もかもがうまくいかなかった‥‥」
連続入賞の良い流れは途絶えたが、次戦はチームのホームグラウンドとも言うべき、ミドオハイオ。グラハム・レイホールもここでは圧倒的な速さを見せており、琢磨も得意とするコースだ。今週の雪辱を晴らすには持ってこいの舞台だろう。