「被害者」は大谷翔平だけじゃない。イチローにもあったMLBジャッジとの戦い

7月19日(月)11時5分 Sportiva

 メジャーリーグの後半戦が始まり、今もっともメジャーを熱くさせているロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平への期待は日々高まっていく。
 大谷は前半戦だけで、打者としては両リーグトップ33本のホームランを放ち、投手としては4勝1敗、87奪三振という成績を残した。投打で乗りに乗っている大谷だが、その一方で、大谷に対する厳しいジャッジがいくつもあり、後半戦でもそれによって不利になるのではないかという懸念がある。
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投打で厳しいジャッジに苦しむ場面が目立つ大谷
 前半戦、打者・大谷は審判の判定に苦戦していた。記憶に新しいのは、現地時間7月10日に行なわれたシアトル・マリナーズ戦の6回表のこと。大谷の第3打席、2−2のカウントで投じられた6球目はストライクゾーンから大きく外に逸れ、大谷が見送ったこのボールを球審はストライクと判定した。この判定に現地のテレビ実況も、「これは本当によくない判定だ」と怒りを露わにした。
『USAトゥデー』系スポーツ紙『フォー・ザ・ウィン』はその翌日、「大谷への最悪の判定にアナウンサー激怒」という見出しで、映像を検証しながらいかにこの判定が間違っているかを綴り、「この球審は最低である」と酷評した。ちなみに、同球審は大谷のこの打席中、6球目とほぼ同じコースに投げられた初球をボールと判定しており、同じ打席のたった5球の間で判定が異なるという異例の事態になった。
 さらに、大谷は投手としても判定に苦しめられている。6月11日の敵地アリゾナ・ダイヤモンドバックス戦で、メジャー初のボークを取られた試合だ。
 5回裏、2アウトで2人の走者を背負った場面で、二塁に牽制しようとマウンドを外した大谷に対し、二塁塁審は即座にボークを宣告。大谷は状況がわからず戸惑っていた。この判定に対し、パドレスのダルビッシュ有は自身のSNSで、「見ている場所によっては膝が先に動いているように見えるのでそこでボークを取った気がします」と分析。だが、その直後にクイックで投球をした大谷に対し、球審と三塁審判が同時にボーク判定を下した。この判定に対して、エンゼルスの指揮官は「不可解だ」と不快感を露わにした。

 大谷以外にも審判の判定に苦しめられた日本人選手がいる。今季からボストン・レッドソックスでプレーする澤村拓一がそうだ。
 澤村がメジャー初ホールドを記録した4月11日のボルチモア・オリオールズ戦、8回裏2死の場面。この日は最低気温が約7度と非常に寒い日だった。澤村は投球前に手を温めるため、握った手に息を吹きかけた。すると、審判は澤村の持っているボールの交換要請と同時に、ボールカウントを宣言した。
 現地の解説によると、投球板付近(18フィート以内)で指を温めるために息を吹きかける行為は、MLB野球規則に記載されている禁止事項にあたると判断されたという。地元メディアの『NESN』は、「他にどうしろというんだ!」と審判を批判。結局、カウントを悪くした澤村はこの打者に対して四球を与えてしまった。
 さらに投手・大谷は、試合によって厳しいストライクゾーン判定に苦しめられることもある。澤村は日本人のルーキー、大谷は全米の注目が集まるほど好調だから、ということで審判に目をつけられているのか。現地の報道によれば、それは審判のレベル自体の問題のようだ。
 大手スポーツメディア『スポーツ・イラストレイテッド』系列の『ザ・スパン』は審判の判定を批判する記事を相次いで出している。6月19日のニューヨーク・メッツ対ワシントン・ナショナルズ戦では、「審判のストライク判定の精度が最悪で、結果メッツが不利になった」という記事を掲載。数日後には、「MLB審判の最悪の判定」という見出しで、6月28日に行なわれたサンフランシスコ・ジャイアンツ対ロサンゼルス・ドジャースでのストライク判定が、今季の中で最悪なものであったと酷評している。
 また同記事では、"Umpire Auditor(審判監査人)"という、メジャー全試合で起こった誤審を取り上げているSNSアカウントに投稿された動画を掲載し、いかに審判の判定が間違っていたかを紹介している。同動画では、ドジャースの投手トレバー・バウアーが、ジャイアンツの右打者バスター・ポージーに投じた外角のボール球がストライクとコールされているシーンが映っている。

 MLB審判の誤審疑惑は多く、同アカウントはその都度動画を上げ、現地の野球ファンの間ではちょっとした話題になっている。筆者はこのアカウントの運営者に、最近のMLB審判の判定について詳しい話を聞いた。
 まず、昨今の判定について意見を求めた。
「ストライクゾーンに関して言えば、一般的に、MLBの審判は約91〜92%で正しい判定を行なっており、この数値は過去数年にわたり維持されています。また、PITCHf/x(投球速度や軌道を追跡するスポード判定器システム)の導入後、さらに1〜2%は改善されました。しかし、判断する投球数が増えれば、大切な場面でミスジャッジが起こることはあり得ますし、それを避けることは難しいでしょう」
 では、誤審をほぼ0%に近づける方法はないのか。同氏は「ノー」と答え、その理由を次のように述べる。
「球審の仕事は人間には難しすぎます。人間の目はベースすれすれを横切る98マイル(約156キロ)のカットボールを追うように作られていません。正直無理があります」。
 大谷のように160キロ台の速球を投げる投手や、ダルビッシュのようにさまざまな変化球を投げる投手が増えてきた昨今、球審がこれらの球を瞬時に判断することが難しくなってきていると指摘する。
 同氏はこの問題を解決するため、「正確にストライクを判定できる技術があるわけですから、MLBはこれを早期に導入すべきです」と訴えるが、機械判定の導入は現地でも賛否両論があり、まだ現実的ではない。
 球審によってバラつきがあるため、大谷や他の選手たちが引き続き判定に苦労することもあり得る。後半戦で少しでもいい判定をもらうには、審判にいい印象を与える必要もあるのかもしれない。
 例えば判定に対するアピールの仕方ひとつにしても、その後の判定に影響を及ぼす可能性がある。イチローも、ちょっとしたことで審判から不評を買ったことがあった。

 2009年9月26日、敵地トロント・ブルージェイズ戦での出来事である。当時マリナーズに所属していたイチローが第3打席目に行なった球審へのアピールが侮辱行為ととられ、人生初の退場処分を受けている。
 カウント0−2と追い込まれたイチローは、外角への3球目を見送った。ところが、球審はストライクと判定。滅多に感情を表に出さないイチローが珍しく怒りを露わにし、バットでボールが通過した線を地面に引き示した。のちに流されたリプレーで、ストライクと判定されたそのボールはイチローが引いた線上を通っていた。イチローが正しかったことになるが、「審判の判定は絶対」というメジャーリーグからすると、イチローは「やってはいけない行為」をしてしまった。
 大谷はこれまで一度も退場処分を受けたことがないが、先述のダイヤモンドバックス戦(11日)では、ボークの判定に対して首を大きく前に出し、「なぜ?」とアピールした。現地メディアは大谷のリアクションを面白がって好意的に見ていたが、大げさなアピール行為は一歩間違えれば退場処分を受ける可能性もある。
 もっとも、大谷の審判に対する普段の態度は"極めて紳士的"として有名で、その心配は杞憂に終わるかもしれない。例えば6月21日から始まったイニング間の粘着物検査で、23日に初めて検査を受けた大谷は、笑顔でグローブと帽子を審判に渡し敬意を示した。この大谷の姿勢に現地メディアは「パーフェクトな対応だ」と大絶賛している。
 このように「模範的選手」とも呼ばれている大谷が、今後も今まで通りの紳士的なプレーをし続ければ、必ずや正しい判定が下されることになると信じたい。


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