【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第10/11戦】萎縮し遅くなっては意味がない。失敗から成長せよ

2022年7月20日(水)8時5分 AUTOSPORT web

 2022年、アルファタウリの角田裕毅は、F1での2シーズン目を戦っている。昨年に続き、エディ・エディントン氏が、グランプリウイークエンドを通して角田の動きをくまなくチェックし、豊富な経験をもとに、彼の成長ぶり、あるいはどこに課題があるのかを忌憚なく指摘する。今回は2022年F1第10戦イギリスGPと第11戦オーストリアGPについて語ってもらった。


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 シルバーストンを訪れた私は、次のオーストリアGP行きの誘いを断れず、2週連続で現地でレースを見る羽目になった。大勢の人々に知恵を授け、私の忠告に従った賢明な人々は、好成績を収めたようだ。詳しいことは、ギュンター・シュタイナー、あるいはオットマー・サフナウアーに聞いてみるといい。


 さて、いつものように「早く本題に入ってください」と君にせかされる前に、角田裕毅の話をすることにしよう。本当はイギリスGP決勝11周目以降の話をするのは気が進まないのだが、これが本コラムのテーマなので逃げるわけにはいかない。


 その11周目、角田はターン3で不必要な動きをして、自分自身とチームメイトのピエール・ガスリーをポイント争いから叩き落とした。ガスリーのすぐ後ろを6周にわたって走り続けた後、裕毅は追い越しをかけようと決め、ルーキーしかしないようなミスを犯し、2台にダメージを与えた。その結果、ふたりともが入賞のチャンスを失ったのだ。

2022年F1第10戦イギリスGP ピエール・ガスリーと角田裕毅(アルファタウリ)がコースオフ

 一週間後のオーストリアでの角田は、プッシュしたりリスクを冒すことを避けているようだった。ガスリーよりはるかに遅く、スプリントとメインレースでは後方を走り続けた。一週間前のガスリーへのチャレンジは、アグレッシブすぎたし、楽観的すぎたし、ルーキーのミスとしかいいようがないものだった。その彼は、オーストリアでは自分の影に怯えているような様子で、一言で言って強さがなかった。
2022年F1第11戦オーストリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 ヘルムート・マルコとフランツ・トストを何十年も前から知っている私は、彼らがイギリスGP後に角田に対してショック療法を施したのだろうと想像しているが、翌日に萎縮して遅くなってしまうというのは、彼らが望む答えではない。もちろん、毎戦、無線で罵声を上げるのがボスが望んでいることでないのも明らかだ。


 マルコが公然と裕毅を“問題児”と呼び、心理療法士を雇ったと発言したことは、喜ばしいこととは言えず、これが角田の自信を喪失させたかもしれない。とはいえ、角田は(かつてのスコット・スピードのように)トストに首根っこをつかまれてガレージの壁に押し付けられたわけではないし、今のところレッドブル傘下のF2ドライバーのなかには脅威になりそうな存在はいないので、危機的状況ではない。

2022年F1第7戦モナコGP 角田裕毅(アルファタウリ)とヘルムート・マルコ(レッドブル・モータースポーツコンサルタント)

 だが、私から角田への貴重なアドバイスとして、『モンティ・パイソン』(若い人は知らないかな)の銀行強盗のコントのなかに出てくる台詞「受容、適応、改善」を心がけることを勧めたい。つまり、この2戦から教訓を学びとり、それを自分のドライビングスタイルや自分の気質や性格に適応させ、ドライバー、チームプレイヤー、そして一人の人間として改善する、それが重要なのだ。


 そして、以前にも言ったことだが、経験豊富で、レースの世界での実績があり、ビジネスに関する最高の頭脳を持った人間の助けを借りたいと思うなら、遠慮なく私に連絡するといい。契約金も昔と違って、かなりリーズナブルにするつもりだが、いかがだろうか。


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筆者エディ・エディントンについて


 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。

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