なでしこ、緻密な攻守でザンビアを圧倒。東京五輪から上がった戦術レベル【女子W杯】

2023年7月23日(日)18時0分 FOOTBALL TRIBE

日本女子代表 写真:Getty Images

なでしこジャパンことサッカー日本女子代表は22日、2023FIFA女子ワールドカップのグループC第1節でザンビア代表と対戦。最終スコア5-0で勝利した。


ザンビア女子代表に1本もシュートを放たれることなく、大勝を収めたなでしこジャパン。2019年の同大会(フランス大会)、及び2021年の東京五輪では詰めの甘い戦術が災いしメダル獲得を逃したものの、この試合では緻密な攻守で相手を圧倒。オーストラリアとニュージーランドで開催中の今大会での躍進を予感させる戦いぶりだった。


なでしこジャパンがどのような戦術を駆使し、ザンビア女子代表を凌駕したのか。ここではこの点について解説する。




日本女子代表vsザンビア女子代表、先発メンバー

日本女子代表vsザンビア女子代表︰試合展開


前半10分に放たれたMF藤野あおばのミドルシュートがゴールポストに当たるなど、キックオフ直後からなでしこジャパンに得点の匂いが漂う。同21分にはFW田中美南がフリーキック直後の混戦からゴールネットを揺らしたが、同選手がオフサイドポジションでプレーに関与したと判定され、得点は認められなかった。


チャンスを物にできない時間が続いたなか、MF宮澤ひなたがこの嫌なムードを払拭。前半43分、藤野の右サイドからのクロスに右足で合わせ、先制ゴールを挙げた。


前半のうちにリードできたなでしこジャパンは、後半もサイド攻撃や速攻からチャンスを量産。同10分、MF遠藤純の左サイドからのクロスに田中美南がスライディングで合わせ、追加点をもたらした。


後半17分、敵陣右サイドのゴールライン付近で粘った田中美南のクロスに宮澤が合わせたほか、同26分にもMF長谷川唯のラストパスに反応した遠藤が加点。途中出場のFW植木理子がアディショナルタイムにPKを成功させ、駄目を押した。




日本女子代表 MF藤野あおば 写真:Getty Images

なでしこに浸透していた攻撃の原則


[4-1-4-1]の守備隊形で自陣へ撤退したザンビア代表に対し、基本布陣[3-4-2-1]のなでしこジャパンが攻め込む。


[4-1-4-1]という布陣の特性上、ザンビア代表のFWバーバラ・バンダ(1トップ)の両脇が空く形となり、ここでボールを保持したDF南萌華がロングパスを繰り出す場面がキックオフ直後から見られた。


まずは相手最終ラインの背後を狙う。この原則がなでしこジャパンの面々に浸透しており、前半2分には遠藤のスルーパスに長谷川が反応。敵陣ペナルティエリア左隅への侵入に成功し、チャンスを迎えている。最終ラインに吸収されていたザンビア代表MFスーザン・バンダの背後に立ち、相手の視野外から走って遠藤のパスを呼び込んだ長谷川のプレーは秀逸だった。


田中美南や宮澤など、一旦相手選手の視野外(死角)に立ち、そこから走り出して相手ゴール前へ侵入できる選手が揃っているのが今のなでしこジャパンの強み。この試合の先制ゴールも、藤野が相手の左サイドバック(DFマーサ・テンボ)の背後へ走り、長谷川の浮き球パスを受けたことで生まれている。藤野がテンボとMFエバリン・カトンゴのどちらにも捕まらない、両者の中間地点あたりに立ったうえで長谷川のパスに反応したことも、このゴールが生まれた理由のひとつだ。


相手DFアグネス・ムサセの視野外(背中側)からゴール前へ侵入し、藤野のクロスに反応した宮澤の一連のプレーも称賛に値する。選手個々の巧みなポジショニングと、まずは相手最終ラインの背後を狙うという、明確な攻撃プランが噛み合ったことで生まれたなでしこの先制ゴールだった。


日本女子代表 FW田中美南(左)写真:Getty Images

的確だったなでしこの守備プラン


なでしこジャパンは守備面でも隙を見せず。特に、ザンビア代表が最終ラインからパスを繋ごうとした際のプレッシングが的確だった。


最前線の田中美南がザンビア代表の2センターバックからS・バンダ(中盤の底)へのパスコースを塞ぎ、相手のパスワークをサイドへ誘導。自陣後方のタッチライン際に立っていたザンビア代表の両サイドバック(マーガレット・ベレムとマーサ・テンボの両DF)にボールが渡るやいなや、ここへ宮澤と藤野の2シャドーがプレスをかけた。


このザンビア代表の両サイドバックへの守備が前半から威力を発揮していたほか、田中がS・バンダを捕捉し続けたことで、相手の縦に速い攻撃や中央でのパスワークを阻止。苦し紛れのロングパスも誘発し、これをなでしこの面々が悠々と回収していた。




日本女子代表 池田太監督 写真:Getty Images

窺えた東京五輪からの成長


2021年の東京五輪で指揮を執った高倉麻子前監督は、明確な守備戦術を自軍に落とし込めず。ゆえに当時のなでしこは最終ライン、中盤、最前線の3列が間延びし、プレスの連動性に欠ける場面がしばしば。攻撃も高倉前監督のもとでは選手個々のスキルやアイデアに依存したものが多く、チーム全体としてのプレー原則や立ち位置の約束事が窺えなかった。


同大会準々決勝では最終ラインや中盤の隊形変化が激しいスウェーデン女子代表に歯が立たず、1-3で敗北。戦術不足のなでしこに厳しい現実が突きつけられた。


2年前の漫然とした攻守から一転、なでしこは今回のワールドカップ初戦でソリッドな戦いぶりを披露。2018年に行われたU-20女子ワールドカップで、ヤングなでしこ(U-20日本女子代表)を世界一に導いた池田太監督が高倉前監督の後を継いだことで、なでしこジャパンの戦術レベルが引き上げられた。


次戦以降も自分たちのストロングポイントの発揮と、相手の特長の封じ込めを両立できるかに注目していきたい。なでしこジャパンが今大会でサプライズを起こす可能性は、十分にあるだろう。

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