バイエルン、1つの時代の終わり。まだ若いリベリーと、頭髪が残るロッベンに想いを馳せて【18/19シーズン総括(11)】

7月23日(火)10時10分 フットボールチャンネル

“ロベリー”の勇姿に熱狂する最後のシーズンに

2018/19シーズンは、これまでスペインが握っていた欧州の覇権がイングランドへと移る結果で幕を閉じた。タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、その戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回はバイエルン・ミュンヘンを振り返る。(文:本田千尋)
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 1つの時代が終わった。18/19シーズンのバイエルン・ミュンヘン。人々が“ロベリー”の勇姿に熱狂するのは、5月18日にアリアンツ・アレナで行われた最終節、対アイントラハト・フランクフルト戦が最後となった。

 2009年8月29日に行われた対VfLヴォルフスブルク戦で、“ロベリー”はデビューした。当時の監督はルイ・ファン・ハール。鬼才のオランダ人指揮官は、後半開始からアリエン・ロッベンを、続いて63分にフランク・リベリーをピッチに送り出す。

 すると68分、左サイドでリベリーからパスを受けたロッベンが、小刻みなドリブルから左足を振り抜いてゴールを奪う。ベンチの前でファン・ハールはガッツポーズを見せ、アリアンツ・アレナは熱狂の渦に包み込まれた。

 さらに80分、カウンターの場面。ロッベンが前方のリベリーにパスを出す。スピードに乗って突き進むフランス代表ウインガー。そしてリベリーから再びパスを受け取るロッベン。オランダ代表ウインガーは、切り返して敵のDFとGKに尻餅をつかせると、今度は右足でフィニッシュした。それから2人はハイタッチを交わし、肩を組み、喜びを噛み締めながら、右のコーナーフラッグに向かって駆けて行った——。

 この瞬間の“ロベリー”を形にしたコレオが、フランクフルト戦の試合前、ゴール裏に現れたのである。肩を組んで喜び合う2人。まだ若いリベリーと、まだ頭髪が残るロッベン。デビュー戦で息の合ったコンビネーションで2点を奪ってから、およそ10年後——。白い襟元が特徴の当時のユニフォームに身を包んだロッベンとリベリーが、“最終戦”に現れたのだ。バイエルンを愛する者たちによる粋な演出だった。

 “ロベリー”がバイエルンを去ることは周知の事実だった。18年の12月にロッベンは18/19シーズン限りでの退団を公表している。5月5日にはバイエルンが公式HPで同じくリベリーの退団を発表していた。

体はついて来ず。若手台頭で先発外に

 気付けばオランダ人ウインガーは35歳。フランス人ウインガーは36歳。12/13シーズンには3冠の原動力となった“ロベリー”とて、時の流れには抗えない。スピードが武器の攻撃的なポジションだからこそ、衰えを隠すことはできなかったとも言えるだろう。

 ミュンヘンのビッグクラブは若返りを図っている最中だ。もちろんクラブに数々のタイトルをもたらした両選手に最大限のリスペクトを払いながらも、バイエルンは、“ロベリー”との契約期間は18/19シーズンを最後とした。

 そんな“ラストラン”となったシーズンの序盤、ロッベンもリベリーもコンスタントに出場機会を得ていた。両選手とも、新たに就任したニコ・コバチ監督の構想に入っていたと言えるだろう。

 ロッベンは8月下旬の開幕戦、TSGホッフェンハイム戦で後半からの途中出場だったが、アディショナルタイムに3点目を決めて勝利に貢献。それから第3節のレバークーゼン戦、第5節のアウクスブルク戦と得点を重ねていった。リベリーもホッフェンハイムとの開幕戦で1アシストを記録。出だしは悪くなかった。

 だが、気持ちは先行しても、もう体は付いて来ようとしなかったのかもしれない。オランダ人ウインガーは、11月に筋肉硬直の問題を大腿部に抱えると、チャンピオンズリーグのベンフィカ戦を最後にピッチを離れることになる。

 フランス人ウインガーは、アヤックス、ベンフィカ、AEKアテネと同居したCLのグループリーグでは先発出場を続けたが、後半からの途中出場が増えていった。

 結局ロッベンが復帰したのは、シーズンも終わる5月に入ってからのことである。リベリーも、若手のドイツ代表FWセルジュ・ニャブリが台頭し、負傷離脱していた同胞のキングスリー・コマンも12月に戦列に戻ってきたことで、先発の座を確保することはなかなか難しくなっていた。

それでも苦しんだ“脱ロベリー”

 もし“ロベリー”が往年の、例えば3冠を達成した頃のように、攻守に惜しみなくハードワークを注げる状態であったなら、バイエルンはシーズンの前半戦であれ程苦戦することはなかったかもしれない。ちょうどニコ・コバチが新たに監督に就任したばかりで、チームが移り変わる途中だったドイツの常勝軍団は、ブンデスリーガ6連覇中の強さを維持できず、崩してしまう。

 9月25日にホームでFCアウクスブルクに引き分けると、3日後のヘルタBSC戦を0-2で落とし、さらに10月に入ってホームでボルシアMGに0-3で敗れ、順位を7位にまで落とす。とりわけホームのアリアンツ・アレナで勝ち星を逃し続けたことは、近年にない出来事だった。

 11月に入っても、10日にアウェイでボルシア・ドルトムントに2-3で競り負けると、続くホームで昇格組のデュッセルドルフに3-3のドローに持ち込まれてしまう。CLのグループEはアヤックスを抑えて首位で通過したが、リーグ戦ではドルトムントの後塵を拝し、2位で前半戦を折り返すことになった。

 この頃のバイエルンが、拠り所となる“軸”を見失っていたことは明らかだった。例えば選手であればフィリップ・ラーム、監督であればユップ・ハインケスといったような存在。もし“ロベリー”という両輪がフル稼働できる状態だったなら、多少チームの状態が悪くとも、まさに09年8月のヴォルフスブルク戦で魅せたような、2人の個の力を“軸”に強引にでもゴールを奪っていくことで、チームの根幹がぐらつくことを防げたかもしれない。

 ニャブリもコマンも、バイエルンの次代を担うポテンシャルを秘めているのは間違いないだろう。だが、“ロベリー”が持ち合わせていたような、味方が苦しい時にボールを預けたくなる“安心感”を獲得するには至っていないのではないか。

来たる新シーズンへ、ウイング補強なるか

 そういった意味では、後に欧州王者となるリバプールと戦ったCLの決勝トーナメント1回戦で、往年の“ロベリー”がいたら、結果は違ったかもしれない。ホームで行われたセカンドレグでリベリーは先発した。だが、61分にコマンと交代となった。バイエルンは2戦合計1-3で敗れ、18/19シーズンのCLはラウンド16で早々に姿を消すことになった。

 このように18/19シーズンのバイエルンでは、“ロベリー”不在による影響が浮き彫りになったと言えるだろう。バイエルンを離れることになる最後のシーズンで、オランダ人とフランス人の両ウインガーの偉大さが、改めて確認されたのだ。

 マンチェスター・シティ所属のレロイ・ザネの獲得が噂になり、チェルシー所属のカラム・ハドソン=オドイの獲得を狙ったように、“ロベリー”を失ったバイエルンは、19/20シーズンを前にウインガーの補強を模索している。

 フランクフルトとの最終戦で2人のコレオを掲げたバイエルンのファンたちは、“ロベリー”のデビュー戦を思い起こした違いない。

 09年8月に行われたヴォルフスブルク戦の当時と順番は違ったが、リベリーは61分から、ロッベンは67分から、それぞれ途中出場した。

 そして72分にリベリーが左サイドをドリブルで突破して4点目を決めると、ロッベンも負けじと78分にアラバからの折り返しを左足で押し込んで5点目を決める。まるであらかじめシナリオが用意されていたかのように、“最終戦”で“ロベリー”が揃ってゴールを決め、5-1でフランクフルトを下すと、バイエルンはブンデスリーガ7連覇を達成。

 決勝でRBライプツィヒを退けて優勝したDFBポカールと合わせて、2冠で18/19シーズンを終えた。

(文:本田千尋)

【了】

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