チェルシーが抱える最急務課題。「ポスト・アザール」は見つかったか

7月24日(水)15時57分 Sportiva

 川崎フロンターレとのプレシーズンマッチから中3日。フランク・ランパード新監督率いる新生チェルシーは埼玉スタジアムでバルセロナと対戦し、タミー・エイブラハムとロス・バークリーのゴールによって、2−1で勝利を収めた。


バルセロナ戦に出場した20歳のクリスチャン・プリシッチ

「トレーニングを含め、これまで積み重ねてきた成果という点で、とてもいい試合ができた。とくに今日の試合では改善した部分が見られた」とは、試合後に満足げに振り返った新指揮官のコメント。たしかにチャンピオンズリーグで対戦するかもしれない相手に対して、チェルシーがこの試合で見せたパフォーマンスは及第点の出来だった。指揮官も、それなりの手応えを感じたに違いない。

 とはいえ、試合2日前に来日したばかりのバルサとのコンディション差を考慮すれば、この日の試合内容を額面どおりに受け止めてはいないはず。8月12日に開幕戦を迎えるチェルシーと、翌週16日に開幕戦を戦うバルサとでは、調整スケジュールの違いがあって当然のこと。そんななかでリオネル・メッシルイス・スアレス不在という「飛車角落ち」のバルサに、プレシーズンマッチで勝利したからといって、それを手放しで喜ぶはずもない。

 4日前の川崎戦同様、「まだテストの段階」と繰り返し口にしたランパード監督にとって、プレシーズンにおける最大の目的は、誰をどのポジションに配置して新シーズンを迎えるか——という点にある。

 とりわけ、今シーズンのチェルシーにとっての最大の注目は、レアル・マドリードに移籍した大黒柱エデン・アザールの抜けた穴をどのようにして埋めるのかという点と、プレミアリーグ3位とヨーロッパリーグ優勝に導いた戦術家マウリツィオ・サッリ(現ユベントス監督)が植えつけたサッカーを、監督経験の浅いランパードがどのように変化させるのか、という2点に絞られる。

 その意味においては、日本で戦ったこの2試合で、新生チェルシーが描く青写真がおぼろげながら見えてきたと言えるだろう。

 まずこのバルサ戦で、ランパード監督は川崎戦から4枚を変更。中3日で行なわれたプレシーズンマッチであることを考えれば、もっと多くの変更があっても不思議ではなかった。しかし、そうしなかったことを考えると、すでにランパード監督の頭のなかに今シーズンの主軸が固まりつつあると受け止めることもできる。

 たとえば、GKケパ・アリサバラガ、右SBセサル・アスピリクエタ、CBダヴィド・ルイス、ダブルボランチのジョルジーニョとマテオ・コヴァチッチ、右ウイングのペドロの6人は、2試合連続でスタメン出場を果たした。彼らはいずれも、サッリ前監督が率いた昨シーズンのチームでも主軸を担った面々である。

 彼らに加え、現在故障中のCBアントニオ・リュディガー、コパ・アメリカ出場の影響で合流が遅れているウイングのウィリアン、そしてリハビリのために離日したMFエンゴロ・カンテが復帰すれば、今シーズンのおおよその陣容は見えてくる。

 もっとも、絶対的存在のカンテが4−2−3−1のダブルボランチの一角に加われば、コヴァチッチが一列前でプレーする可能性もあるだろう。むしろ、サッリ前監督が貫いた布陣で、ランパード監督が昨シーズンのダービー・カウンティでも4−2−3−1と併用した布陣でもある4−3−3を採用し、中盤をジョルジーニョ、カンテ、コヴァチッチのトリオで構成する可能性のほうが高いと思われる。

 いずれにしても、最終ラインと中盤は昨シーズンを踏襲する形で構成すると見られるだけに、残る問題は、ランパード監督が頭を悩ませる前線の構成になる。つまり、アザールの抜けた穴をいかに埋めるかだ。

 そこで浮上してくるのが、このバルサ戦でスタメン出場を果たしたクリスチャン・プリシッチの存在である。

 補強禁止処分中(※)により、それほど多くの選択肢を持たないチェルシーにとって、今年の冬にドルトムントから獲得し、シーズン後半戦はローンという格好でそのままドイツに残ってプレーしたプリシッチは、新シーズンに向けた唯一の新戦力。20歳という若さにもかかわらず、これまで17歳でデビューしたブンデスリーガ、そして31キャップを数えるアメリカ代表で豊富な実戦経験を持つだけに、「ポスト・アザール」の第一候補と目されるのも当然だろう。

※18歳未満の選手の国際移籍に関する規定に違反したとして、今年2月にFIFAの規律委員会がチェルシーに補強禁止の処分を言い渡した。2019年夏と2020年冬の移籍市場で新規の選手登録が禁じられ、チェルシーが次に新たな選手を獲得できるのは2020年夏となる。

 実際、60分間プレーしたこの試合でも存在感を発揮。持ち味でもあるスピード豊かなドリブルからチャンスを作ったり、自らシュートを狙ったりと、新生チェルシーの攻撃の核となりうるだけの実力を証明して見せた。少なくとも、ウィリアン、ペドロを脅かす逸材であることは間違いない。

 残る不安材料はフィニッシャーの駒だ。オリヴィエ・ジルー、ミシー・バチュアイでシーズンを乗り切れるとは到底思えず、若手の底上げを含めて1トップの出来不出来が今シーズンのチェルシーの行方を大きく左右することになるはずだ。

 そして、最大のカギを握るのが、クラブのレジェンドであるランパード監督の手腕になる。ここまでのチーム作りを見るかぎり、独自の戦術を貫くサッリ前監督、あるいはその前に指揮を執ったアントニオ・コンテ(現インテル監督)と違い、まだ確固たるコンセプトが確立されていない。

 来日前のプレシーズンマッチでは中盤をひし形にした4−3−1−2を採用したこともあったが、基本的には4−2−3−1と4−3−3の併用が濃厚。現役時代にランパードが多くの影響を受けたジョゼ・モウリーニョのサッカーをイメージするとわかりやすい。サッリやコンテのようにひとつのやり方を貫くのではなく、状況に応じてシステムを使い分け、相手のよさを消しながら勝利を追求するサッカーになりそうだ。

 果たして、ランパード新監督は長期政権を実現できるのか、それとも短命で終わるのか。日本でのプレシーズンマッチ2試合を終えたチェルシーは、帰国してから3試合をこなし、いよいよ8月12日に予定されるマンチェスター・ユナイテッドとのプレミアリーグ開幕戦に挑む。

Sportiva

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