【コラム】夏のスーパーGT、暑すぎるのでトワイライトレースにしませんか。

2021年7月25日(日)18時0分 AUTOSPORT web

 7月18〜19日、栃木県のツインリンクもてぎで開催されたスーパーGT第4戦。GT500クラスはSTANLEY NSX-GTとWedsSport ADVAN GR Supraの熾烈なトップ争い、GT300クラスは作戦的中のmuta Racing Lotus MCとGAINER TANAX GT-R、埼玉トヨペットGB GR Supra GTと異なる成り立ちをもつ三つ巴のトップ争いと、レース展開は盛り上がりをみせたが、この週末、来場した関係者、ファンが週末絶対に口にした言葉がある。それは「暑い!」だ。地球温暖化の影響か、近年の7月〜9月の日本でのレースは走る側も走らせる側も、そして観る側もつらいレースが続く。


「暑いですね〜」「ヤバいでしょこれ」。


 この週末、午前から気温が30度を超えたツインリンクもてぎ。パドックやグリッドで言葉を交わす度に、ドライバーもメカニックも、マネージャーもオフィシャルも、もちろん我々メディアも、もてぎでの“合い言葉”はだいたいこれだった。セッションが始まるたびにオフィシャルアナウンサーのピエール北川さんが、場内のファンに向けて熱中症予防を呼びかける。取材で訪れるたびチームの皆さんに「飲み物どうぞ」と言われるのが本当にありがたい。


 近年、地球温暖化の影響なのか日本の夏は本当に暑い。スーパーGTではマレーシアやタイでのレースもあるが、暑さのレベルでは近年はあまり変わらないように感じる。以前はマレーシアの湿気たっぷりの暑さと、キンキンに冷えたエアコンのメディアセンターとの往復はかなり堪えたが、いまや日本でも同様だ。我々メディアはエアコンがあるメディアセンターがあるからまだ全然マシだが、炎天下のもとスタンドでセッション開始を待つファンの皆さん、耐火スーツで作業にあたるメカニック、さらに言えば直射日光を浴びタイトで通気性が少ないコスチュームを着こなさなければならないレースクイーンの皆さんの苦労には本当に頭が下がる思いだ。


 今回のツインリンクもてぎでのスーパーGTは5月の第2戦以来のレースで、他カテゴリーのレースからも少し間が空いていたことから、余計に暑さが堪えた。「こんないちばん気温が上がる昼間にやるスポーツ、他にないですよ」と言うのはあるチーム監督。近年、夏の甲子園が炎天下での試合で賛否両論が出ているが、そんな最中に暑いレーシングカーのコクピットでレーシングスーツを着て、高い心拍数のままレースを戦うドライバーがいれば、耐火スーツで作業をするメカニックがいる。ちなみにスーパーGT第4戦もてぎでは複数のドライバーが決勝レース後に熱中症、あるいは近い状態でメディカルルームに運ばれたほか、メカニックでも熱中症になったり、気分が悪くなったレースクイーンがいた。ファンの皆さんのSNSでの書き込みにも、熱中症になったというものがあった。

Yogibo NSX GT3の道上龍。GT500は全車シートとヘルメット内を冷やすエアコン装備だが、GT300はエアコン、もしくはクールスーツを使用する。
WedsSport Racing Galsの宮本りおさん。レースクイーンも炎天下のグリッドなど、非常に過酷。薄着だから涼しいわけではない。


■金〜土の夕刻に開催してみては……?


 これ、どうにかならないのか……? という疑問がここ数年あった。もちろん年間のスケジュールを考えれば夏の時季にレースをやらないわけにはいかないし、今季はオリンピックによるスケジュールの難しさもあった。昨年も新型コロナウイルス感染拡大のによりスケジュールがずれ込んだ。ただ、昨年も開幕が夏にずれ込んだスーパーフォーミュラ第1戦で、SFではないが熱中症で倒れたドライバーがいる。もちろんスーパーGTでもエアコンやクールスーツの義務づけ等、さまざまな対応を行っており、ドライバーについてはすべて大事には至っていないが、やはりこの時季のレースは少し考えなければならない頃に来ているのではないだろうか。何より、観戦するファンの皆さんにとって、この暑さは厳しすぎる状況にきているだろう。


 この週末、「暑いですね〜」の言葉に続いて、さまざまな立場のレース関係者と雑談レベルでどうしたら良いかという話をしてみたところ、出てきた結論はやはり夕刻から夜にかけて開催するのが良いのでは……? ということだ。F1シンガポールGPのように夜開催するという手段もあるが、スーパーGTマシンはヘッドライトがあるとは言え、やはり騒音やナイトランへの対応、照明の設置等を考えても、やはり夕刻が良いのではないだろうか。夏は日が長く、19時近くまでならばまだ明るい。照明がなくとも良いだろう。それでいて、サーキットがある山あいは夕刻ならばかなり気温が下がり過ごしやすくなる。16時スタート〜18時フィニッシュ、もしくはもう少し遅い時間でも良いかもしれない。


 もちろん夕刻開催には問題もたくさんある。コストダウンが求められるなか、例えば日曜夕刻に開催すると、場所によっては関係者は後泊も必要となりコストが上がる。そこで、こちらも雑談のなかで出てきたアイデアは、インディカーのような“金〜土開催”だ。現在スーパーGTは金曜に搬入作業を行うが、金曜午前から搬入し、夕刻に公式練習を実施。土曜午前に予選、日中は走行は止め、夕刻に決勝レースを行うというもの。撤収は日曜に行えばゆとりもある。もちろんファンにとってもメリットがあり、例えばもてぎであれば、土曜夕刻にレースを行い、そのまま夜は花火などのイベントを行いキャンプで楽しみ、日曜に渋滞が起きないうちに帰宅……というプランも提案できるだろう。


 オフィシャルの皆さんの時間の調整や、イベントの開催時間をいつにするか、またスーパーGTならJ SPORTSの生放送枠確保など、懸案はもちろんたくさんある。ただ、日中に健康を害しながらやるレースはそろそろちょっと考えるときが来ているのではないだろうか。ちなみに、8月の第3戦鈴鹿は15時ごろにスタートという話も聞こえてきている。いくぶん涼しい中でのレースになるだろう。


 スーパーGTでは、本来2020年にマレーシアで初のナイトレースも予定されていた。そのための車両の準備もされており、GT500クラスに参戦するホンダNSX-GTは、プレシーズンテストでの意見を参考にステアリング上のスイッチが光るようになっているという(オートスポーツ本誌で近日掲載予定だ)。準備はできているはず。涼しい時間帯のレース、日本でもそろそろ検討するときが来ているのではないだろうか。先述したとおり、夏はプロ野球もサッカーも試合は夜。日中に行うのは甲子園とモータースポーツくらいではないだろうか。あくまでただの一案だが、どうだろうか……?

給油があるスーパーGT、スーパー耐久ではピットレーンでの作業時は耐火スーツが義務づけられる。
メカニックも耐火スーツ着用で作業を行わなければならない。真夏のレースは過酷だ。

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