巨人・高梨雄平「えっ!」と驚くドラフト秘話。楽天が評価した理由

7月25日(土)7時10分 Sportiva

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 2016年のドラフトで、JX−ENEOSの高梨雄平が楽天から9位で指名された時には「えっー!」と声が出るほど驚いた。
 ドラフトにはサプライズはつきもので、1986年にONOフーズの森山良二を西武が1位指名したことにも驚かされたし、2011年に日本ハムが早稲田大のソフトボール部に所属する大嶋匠を7位指名した時にもビックリしたが、高梨の指名もそれぐらいインパクトがあった。

トレードで楽天から巨人に移籍した高梨雄平
 それほど、当時、社会人2年目の高梨は、失礼な言い方だが平凡なピッチャーだった。そもそも早稲田大学時代も、3年春ぐらいまでは順調にきていたが、その後は肩の故障もあって調子を落としていた。だから、社会人の強豪・JX−ENEOSが高梨を獲得したこと自体、驚きだった。
 たしかに、3年春に東大戦で東京六大学史上3人目の完全試合を達成して一躍注目を集めたが、その一戦にしても高梨の野球人生にとって”一世一代のピッチング”をしたとしか思えなかった。てっきり、JX−ENEOSは打者として採用したのかなと思ったほどだ。
 じつは、高梨には打者としての才能を感じていた。川越東高では「エースで3番」を任され、センス抜群のバッティングを見せていた。
 高校通算50本を打つようなスラッガーではなかったが、チャンスで打席に入ると、ファーストストライクからきっちりタイミングを合わせてきて、右中間、左中間にきれいな弾道のライナーを放つ。バットのヘッドを長く走らせる美しいバッドスイングは”品格”と”風格”が同居していて、打者としては間違いなく”超高校級”だった。
 
 大学、社会人に進んでも高梨は打者ではなく投手として研鑽を積んだが、とくにJX−ENEOSでは実戦登板の機会は決して多くなかった。
 そんな時、学業も優秀な高梨には「野球を終えたら早めに社業に専念してもらって、そちらのほうで会社に貢献してもらおう」というつもりで採用されたのだという話を関係者から聞いた。

 そうした採用のパターンは何度か聞いたことがあり、その時も「なるほどな……」と、スッと胸に落ちたものだ。事実、高梨は2年目を終えると上がる(チームを退く)ことが決まっていたという。あるスカウトがこんな話を教えてくれた。
「高梨の社会人2年目だったと思います。関係者から、一度ピッチングを見てくれないかと言われて、グラウンドに行ったことがありました。聞くと、チーム事情により今年限りで退くことが決まっているとのことだったのですが、高梨は投手として勝負したいと。それでプロとしての可能性を教えてほしいということでした」
 ブルペンで見た高梨は、左のサイドハンドからストレートは130キロちょっとで、スライダーとシンカーを両サイドに落とすスタイルで、あまり目立つ要素はなかったという。
「今は140キロが出ない投手を強く推すことはできません。よほどすばらしい変化球があれば別ですが……140キロ台中盤は当たり前で、150キロでも驚かない時代ですからね」
 そんななか、楽天の後関昌彦スカウト(現・スカウト部長)だけは、高梨に対して違う見方をしていた。
「以前はスリークォーターで投げていたのが、サイドよりもまだ低い位置から投げていた。それがすごく新鮮でしたね」
 都市対抗や日本選手権など、大きな大会ではほとんど投げておらず、後関スカウトも高梨の実戦でのピッチングを見たことがなかったという。
「大学の時しか見ていなかったので、ずいぶんと(腕を)下げたなぁ……と。年齢的にも23、24歳ですよね。この歳でこれだけ大胆にフォームを変えるって、よほどの”決心”がないとできないんですよ。体もできあがって、関節の可動域も決まってきますから。ひとつ間違えたら故障しておしまいです」
 なにより、後関スカウトは高梨の覚悟を感じたという。
「JX−ENEOSのような大きな企業を捨てて、プロに挑戦するって……『ホントにいいの?』って。相当な決意だったんだろうなと、逆に感心しました」

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 左のサイドハンドとしても、ある程度、見通しは感じたという。
「キャッチャーのうしろから見ると、テイクバックがすごく小さくて、いったん腕が体に完全に隠れるんです。『こりゃ、右打者でも打ちにくいぞ』と思いましたね」
“数字”だけなら、たしかに足切りされるタイプだ。
「見づらいというのは、ものすごい武器なんです。スピードは物足りないですが、それを補うだけの武器が高梨にはありました」
 昨年までの3年間で164試合に登板し、44ホールドを挙げて防御率1.90。プロ2年目の2018年には70試合に登板するなど、チームにとって欠かせない戦力となった。
「後関さんには完全にやられました……」
 球速130キロちょっとだった高梨を推せなかったスカウトが悔しがる。そしてこんな”お節介アドバイス”をくれた。
「高梨の場合は、ブンブン振ってくるパ・リーグの野球も追い風になったような気がします。セ・リーグも以前に比べたらガンガンいくようになりましたけど、基本はボールを見極める野球です。高梨独特のホームベースをかすめるようなボールを見極められ、カウントが苦しくなったときにどれだけ粘れるか……。プロって、球数の多いピッチャーは嫌われるんです。だから、少ない球数でどうバッターを料理できるかでしょうね。
 それに球筋が見にくいってことは、審判も見づらいわけで、高梨がいちばんストライクをとってほしいはずの際どいコースを『ボール』と判定されることも考えられる。乗り越えなきゃいけないことは、いくつもあると思うんですよ。でも、プロでたしかな実績を残しているわけですし、そこは自信を持って挑んでほしいですね。セ・リーグにはなかなかいないタイプの投手ですから、楽しみのほうが大きいです」
 変幻自在のサイドハンド左腕・高梨が初めてのセ・リーグでどんな活躍を見せてくれるのか。社会人時代の「絶対プロの世界で投げるんだ」というあの決意があれば、きっと大丈夫だ。

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