レクサスのちょっと微妙な世界を垣間見る熟成クーペ。レクサスRC350【ベース車両一刀両断!!】
2020年7月27日(月)17時31分 AUTOSPORT web
モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第19回目レクサスRC350編をお届けする。2014年の登場以来、レクサスのイメージリーダー的な存在であるRC。エレガントなスタイルと磨き込んだ走行性能を武器にサーキットでも活躍を見せるRCの世界に迫る。
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リヤドアを廃し、あえて2ドアにする意味は何なのか。レクサスRCに乗ると、そんな疑問を抱く。普通のセダンに高出力エンジンをブチ込んだだけのエボモデルじゃあるまいし、クーペであるRCに広々としたコックピットは必要なのか。
クーペというのはパーソナルなクルマのスタイルだ。リヤシートはオマケに過ぎず、そこはバッグの指定席になるはず。さらに言えば、屋根すらなくて構わない。ところが、RCはそうではない。このクルマはクーペではなく、2ドアセダンなのだ。
その理由の最たるものは、分厚いルーフだ。これは2ドアボディのルーフラインと後席のヘッドスペースを両立させるためだろうが、重さを連想させるし、スタイリングとして美しくない。
RCシリーズとしては、2.0リッター4気筒ターボの『RC300』、2.5リッター4気筒+ハイブリッドの『RC300h』、そして3.5リッターV6の『RC350』が展開されている。
2.0リッターターボは他のトヨタ製ダウンサイジングターボと同様に、スペックほどトルク感がない。また、ハイブリッドもやはりレスポンスが悪い。そのため、乗り比べると3.5リッターを選ばざるを得なくなる。
この大排気量エンジンは、IS350とともに登場した旧型こそ初期のアクセルレスポンスだけが強烈な“子供騙し”なセッティングだったが、それから10年以上を経た現行型はマトモになった。
面白い点は、各タイプ間の車両重量がほぼ変わらないことだ。そういう意味でもRC350しか選択肢はない。
3.5リッターV6エンジンのフィーリングはパワフルかつシャープだが、刺激的、官能的というようなことはない。これにスムーズな8速ATが組み合わされるため、クルマとしては高性能サルーン的な性格だ。
強烈なキャラクターを求めるならば、5.0リッターV8を搭載したスペシャルモデルの『RC F』を選ぶのもありかもしれない。
■直近のMCで乗り心地が向上。18インチタイヤ装着のノーマルグレードがベスト
RCシリーズは2018年のマイナーチェンジで大幅に改良された。プラットフォームまで手が入ったようで、決定的に不足していたフロア剛性が引き上げられている。
それでも充分とは言えないが、乗り心地もハンドリングもそれなりのレベルに仕上がった。
ステアリングやブレーキの感触は相変わらず悪く、「ハイペースで走って気持ちいい」というような状況にはならないものの、改良前のように不快感を覚える場面が減ったことは間違いない。
ハンドリングはフロントの重さを感じさせるもので、一般的な言い方をすればアンダーステアが強めだ。
ターンインしようとステアリングを切ると、前方から「よっこらしょ」という声が聞こえてきそうだ。
ボディがより大きく重いLCのほうが、ハンドリングの面でははるかに小さなクルマだと勘違いできるほどである。
この傾向はよりフロントが重いRC Fでは一層、顕著になる。だが、このあたりは低剛性な古いプラットフォームにワイドな大径タイヤを組み合わせているので仕方がない部分か。
いいバランスを求めるなら上級グレードの『Fスポーツ』よりも、18インチタイヤ+ノーマルサスの組み合わせのほうがベターで、RCの性格にはマッチしている。
とは言うものの、もっと軽量でコンパクトなIS350を選択したほうが“パーソナルクーペ”的な空気を味わえる。セダンとしてはタイトで、リヤシートの実用性が高くないのがポイントだ。
クーペをクーペたらしめるのは、2ドアであることではなく、“個人的な空間”であることだ。さらに言えば、作り手には「どのようなパーソナルスペースを提供するのか」が試される。
上質さや性能、機能の追求はセダンでやればいい。クーペとしてのアピール力は、RCだけでなく、LCも不足している。とどのつまり、それは「高級さを欠く」ということなのだが。
■レクサスRC350 主要諸元
車体 | |
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車名・型式 | DBA-GSC10-RCZLH |
全長×全幅×全高 | 4700×1840×1395mm |
ホイールベース | 2730mm |
トレッド 前/後 | 1580/1600mm |
最低地上高 | 125mm |
車両重量 | 1690kg |
乗車定員 | 4名 |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 8速AT |
ステアリング | 電動パワーステアリング |
サスペンション 前/後 | ダブルウイッシュボーン(スタビライザー付き)/マルチリンク(スタビライザー付き) |
ブレーキ 前/後 | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク |
タイヤサイズ | 235/45R18 |
エンジン形式 | V型6気筒 |
総排気量 | 3456cc |
最高出力 | 234kW(318ps)/6600rpm |
最大トルク | 380Nm(38.7kgm)/4800rpm |
使用燃料/タンク容量 | プレミアムガソリン/66L |
車両本体価格 | 649万4000円 |
auto sport 2019年12月13日号 No.1520より転載