山本尚貴インタビュー(1):レッドブルでF1シミュレーターを初体験。「自分が思っていたF1よりも、さらに奥深さを感じた」

2019年7月28日(日)8時0分 AUTOSPORT web

 2019年F1第11戦ドイツGPに、全日本スーパーフォーミュラ選手権およびスーパーGTのディフェンディングチャンピオンである山本尚貴が訪れている。現在ホンダとともにF1にチャレンジするための準備をしているという山本尚貴だが、7月23日にはレッドブルで初めてF1シミュレーターにも搭乗している。


 その時の状況とシミュレーターの手応えを聞いた。


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——昨年のアブダビGP以来のF1の現場ですが、山本尚貴選手としては、F1への思いは、あのときから変わりありませんか。
山本尚貴:正直、F1に乗りたいという気持ちはずっと持っていて、いまも変わらず持っています。


——ドイツGPに来る前、レッドブルのシミュレーターにも乗ったということですが、いかがでしたか。
山本尚貴:これまでもシミュレーターには乗ったことがありますが(編注/栃木県の本田技術研究所 HRD SakuraにあるスーパーGT用のシミュレーター)、F1のシミュレーターには乗ったことがなかった。


 僕だけでなく、ほかの日本人も同じで、近年のパワーユニット(PU/エンジン)になってからのF1マシンやシミュレーターを操作したことがあるのは松下(信治)選手しかいない。


 そんな中、このような経験を得る機会が持てた。漠然と『F1って操作が複雑なんだろうな』と思っていましたが、実際どうなんだろうという感じで乗ってみたら……めちゃくちゃ面白かったです。


 もちろん、『面白い』という表現をいまの僕の立場で使うことが正しいのかどうかは疑問ですが、純粋に自分の知らなかった世界を経験できて、面白かったと。


 いまの現役のF1ドライバーが速くクルマを走らせるために、これだけの仕事量があって、これだけの操作をしているということを知っただけでも僕にとってすごくプラスになりました。


——シミュレーターではどんなことをやったのですか。
山本尚貴:時間が限られていたし、今回が初めてということで、まずはレッドブルのシミュレーターを体験しました。初歩的なところ、F1の操作の大本となるところをやっただけで、レース本番を想定したような使い方は今回はしていません。


■エンジニアとミーティングを行いながらおよそ80周を走行



——実際に乗ってみて、モチベーションが高まりましたか。
山本尚貴:自分が思っていたF1よりも、さらに奥深さを感じました。それを実感し、『F1は簡単ではない』と思う一方で、この世界にチャレンジしてみたいという思いは、レーシングドライバーとして、純粋により強くもなりました。


 個人的に良い経験を積んだというだけでなく、この経験を後輩たちにF1の素晴らしさを伝えるのも僕の仕事だと思っています。こういう経験をいま僕がしておかなければ、僕と松下選手以外の日本人はだれもいまのF1を知らないことになります。


 その経験を伝えることで、F1が若いドライバーたちからあこがれる世界になってほしい。自分が乗りたいというだけでなく、伝えたいというやりがいも強く感じています。

2019年F1第11戦ドイツGP 山本尚貴、山本雅史F1マネージングディレクターの会見


——シミュレーションにはいつ乗ったのですか。
山本尚貴:7月23日の火曜日です。


——どれくらいの時間乗ったのですか。
山本尚貴;丸一日です。もちろん、一日中、ずっとダラダラ乗っていたわけではなく、ランごとにエンジニアとミーティングしながら、走らせました。


 一日のランプランが決められていて、トータルでだいたい80周ぐらい走りました。おそらく、レッドブル側としてはきちんとしたステップを踏むにはこれくらいの周回が適当だというのが思惑があったのだと思うし、逆にこれくらいの周回できちんとクルマを走らせなればダメだという意味合いもあったのだと思います。


■レッドブルはシミュレーターで山本尚貴をテスト?


——ランごとの確認とはどのようなことをやるのですか。
山本尚貴:最初の1ランを終えたとき、一旦クルマを降りて、エンジニアとデータロガーを見て、エンジニアから『こういうふうにしたらしたらいいんじゃないか』というアドバイスを受けました。


 その後、シミュレーターにすぐに慣れたので、レッドブル側から『ちょっとセッティングの方向性でテストしてもらいたいことがある』ということで、ちょっとセッティングを変えて走りました。


 たぶん、僕を評価するためのテストだったと思います。セッティングを変えて、フィードバックがどれくらいできるのか、と。すべてを終えて、レッドブル側がどのような評価をしているのかは僕はまだ把握していません。


——シミレーションの現場で、一緒にやっていたエンジニアからはどんなことを言われましたか。
山本尚貴:逆に、エンジニアからは『どこをどういう風に変えたから』とかというインフォメーションはありませんでした。だから、試されているなとわかりました。


『今回はどっちに(セッティングを)振っているんだろうな』とか考えたりもしましたが、考えすぎると自分のセンサーがおかしくなるので、自分が感じたことを素直にフィードバックしようと集中しました。そして、正直に感じたことを言ったら、『正解!!』と言われ、ホッとしました。


——どのコースを走ったのですか。
山本尚貴:グランプリコースでは鈴鹿しか走ったことがないので、F1のシミュレーションに慣れることと、F1の操作に早く慣れるために、まず鈴鹿を走りました。


 そのあと、お昼を挟んで、午後からはホッケンハイムを走りました。シミュレーションに乗ったあと、ドイツGPに行くことになっていたので、エンジニアから『実際に乗ってから、そのグランプリに行くと見方が変わっていい経験になるから』と説明を受けました。


 実際、金曜日のフリー走行で無線のやり取りを聞いていても、走っていたから理解できることもあったので、シミュレーターで走っていて良かったと思いました。


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