三浦龍司、19歳で2度の日本記録も“未完の大器”。箱根と両立目指し…3000m障害で世界と戦う2つの武器

7月29日(木)11時24分 REAL SPORTS

東京五輪に出場するオリンピアンであり、昨年は大学駅伝でも大きな注目を集めた、底知れぬ可能性を秘めた19歳・三浦龍司。今年に入って3000m障害で2度の日本記録更新を果たすなど、今、最注目の大学生ランナーだ。日本記録保持者でありながらなお“未完の大器”とも称される、その衆望を一身に担う魅力の理由とは?

(文=守本和宏、写真=KyodoNews)

三浦龍司が陸上界で期待される2つの理由

箱根駅伝が批判される要因の一つに、「世界につながらないから」というものがある。つまり、駅伝はオリンピック種目に採用されておらず、オリンピックにつながらなければ将来性がないというわけだ。

大学生ランナーからすれば、オリンピック競技の中距離でいうと5000m、10000mあたりを狙いやすい。だが、そこはトラックとロードの違いもある。マラソンを目指すには、距離が違い過ぎて、駅伝との両立は困難だ。その中で、歴代の箱根ランナーが世界を狙ってきた競技が3000m障害である。

障害物を飛び越えていく足腰は、トラック外レースの強さにつながるため、箱根に出る選手も取り入れやすい。つまり、大学生ランナーが駅伝に取り組みながら、将来的な価値を示しやすい、希少な種目といえるだろう。

ちなみに「3000m障害」は近年、「3000mSC」と呼ばれることが多くなった。「SC」は「スティープルチェイス(Steeplechase)」の略。ただし東京五輪公式では「3000m障害」と表記されていることから、本稿でも同様に表記する。

その3000m障害でひときわ、注目を集める選手がいる。
島根県出身の順天堂大学2年生。三浦龍司だ。

5月9日の東京五輪テストイベント「READY STEADY TOKYO」で8分17秒46を記録。18年ぶりに日本記録を更新し、一気にメディアの注目を集めた。さらにそれから1カ月半後、6月26日の日本陸上競技選手権大会で8分15秒99で優勝、自らの日本記録を再度更新した。特に水濠(すいごう)で転びながら、その後スピードを上げて先頭を抜き返す、その勝負強さが話題となった選手だ。

三浦龍司が、陸上界で期待される理由を挙げるなら、「19歳ながら2度の日本記録更新」「ハードリング(ハードルを跳び越す)技術の高さとラストスプリントの速さ」となるだろう。

転んでも日本記録、に至るまで

島根県の地元クラブで陸上を始めた三浦。小学校時代から週3日ほど通ったクラブは、「陸上を楽しむ」視点で、80mハードル含む複数競技に取り組んだ。小中学校時代からハードル練習を積んだのは、彼のその後の成長を助けることになる。

京都・洛南高に進学し、ハードリング技術の高さを見込まれて取り組み始めたのが3000m障害。脚力に加え、戦略性も必要な種目に魅力を見いだしてからは記録ラッシュを見せる。2019年に高校3年生で日本選手権に出場。8分39秒37をマークし、高校記録、U18日本記録を塗り替えた。

そして三浦は、世界クラスのトップアスリートへの階段を一足飛びに駆け上がっていく。

3000m障害で大学生ながらリオデジャネイロ五輪に出場した塩尻和也。彼を自分に重ね、「自分も同じようになっていきたい」と進学先に選んだのは順天堂大学。

すると入学からわずか3カ月後、2020年7月のレースで8分19秒37をマーク。自己ベストを一気に20秒も縮め、日本学生記録を41年ぶり、U20日本記録を37年ぶりに更新してみせたのである。

さらに今年に入り、東京五輪テストイベント「READY STEADY TOKYO」では海外選手と競り合いながら、日本記録更新で優勝。日本選手権では、転倒しながらも自身の記録を更新と、立て続けに2度の日本記録更新を成功させた。大学2年生、19歳ながら出し続ける日本記録。実は3000m障害では、大学入学以来日本人相手に負けていない。いまだに底の見えない可能性が、彼自身を楽しみな存在にしている。

ハードリング技術の高さと世界に通じるラストスプリント

もう一つ、三浦の大きな魅力は、ハードリング技術の高さとラストスプリントの速さにある。

3000m障害は、1周ごとに設置された4つのハードルと、1台の水濠を跳び越えて走る。合計35回、障害物をクリアして3000mを走り切る。見ていると、選手たちは簡単そうに跳んでいくが、試しに80mに一回、90㎝の障害物を跳んで着地して、3000m走ってみてもらいたい。個人差はあるが、普通なら終盤は満足に跳べず、着地時に“つんのめる”こともあるだろう。

さらに、110mハードルなどが前に倒れるのに対して、3000m障害の障害物は倒れない。たまに終盤で障害のクリアの仕方をミスして、トップの選手が順位を大きく落とすこともある。3000m障害だと1000mと2000mと足に疲労がたまり、終盤で踏切が合わずに転倒するといったこともレース展開上は多い。よって、いかに障害物をうまくクリアするか(ハードリング)が重要になる。

三浦のハードリングのうまさは、手前でちょっと加速し、障害物を跳び越えていく点だ。水濠に関してもハードルを飛び越し気味に、後ろ足で押し出すように力を加え、遠くに跳んで、よりダメージが少ない姿勢で跳んでいく。確かな脚力がなければ、できない技術だ。

そして、何よりオンリーワンの選手として扱われているのが、ラストスプリントの速さだ。

特筆したいのは、徐々に終盤にいくにしたがって助走を加え、最後はスピードを上げて障害物を飛び越える形でフィニッシュに持っていくラストスパート。東京五輪テストイベント「READY STEADY TOKYO」では、最初の1000mは2分46秒だったが、最後の1000mを2分40秒で走破。このラストスパートが世界と戦うために必要な要素といわれており、その資質は十分。そして何より、見ていて爽快、かつワクワクする。

もちろん戦略次第で、変えてくる可能性はあるが、「ラスト1000mで切り替え、ハードリングの跳び方のチェンジとか、ギアの切り替えも、ラスト2周からの切り替えが自分のなかではすごく良かった」と本人も語っているため、その最後の追い込みに期待して見てほしい。

それでも、決勝にいくのは簡単ではないだろう(陸上は予選での成績上位者が決勝へ進む)。オリンピックは各国選手にとってのショーケース。記録も普段より上がる。ただ、最後の終盤で切り替えができるのは、世界トップ選手の条件。ポテンシャルとしては、8分10秒を切る力もあるといわれる未完の大器は、東京五輪の決勝に向けスピードに磨きをかけて、自身の価値を証明しにかかる。

<了>


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