大橋悠依が失意のどん底から銅獲得。心にストンと落ちた助言があった

7月30日(火)7時37分 Sportiva

 大橋悠依(イトマン東進)にとって、2度目となる世界水泳選手権大会は、涙の失格から始まった。

 7月21日の女子200m個人メドレー準決勝は、全体6位の成績で決勝進出を決めた大橋。「おそらくメダルラインは2分7秒台になると思うので、前半はしっかり1分を切って入りたい」と、決勝に向けて意気込んでいた。しかし、翌日の決勝では思い描いていた記録を出せず、加えて背泳ぎから平泳ぎに入るターン後のドルフィンキックが泳法より1回多かったという理由で失格になった。レース後、大橋は次のように語った。


今季自己ベストを出して、400m個人メドレーで銅メダルを獲得した大橋悠依

「準決勝も決勝も体は動いていましたが、どうしても銀メダルを獲った2年前と比べると違うものがあって……。そこを比べると不安なものが残ると思ったり、ライバルの選手たちが速いのを見て『勝てないんじゃないかな』と思ったりしていました。頭が迷うと体も迷うと言うけど、そういうのがあったと思います」

 また、平井伯昌コーチはこの結果を受けて、こう話していた。

「メダルを獲るのが当たり前と期待されて、自分でも自分に期待するようになっていた。自分も世界王者に勝つと口にしていたことで、責任感を感じながらやっていた。そのあたりに(不安との)ギャップがあったと思う」

 大会前の大橋の準備に関しても、平井コーチは十分にできていたと振り返る。だが、そんな環境のなかで、日々気持ちが揺れて、最近ではメンタルの浮き沈みも激しくなっていた。

「ずっと前向きにならなければ変われないと思ってはいましたが、なかなかできなかった。それを、できない自分がダメだなと思うことを繰り返していたので、すごく自分を卑下していたし、普通に生活するのもしんどくなっていたんです」(大橋)

 200m個人メドレーが終わったあとも、結果を引きずってしまい、「2分9秒36というタイムだったわりに余力はなく、様々な映像を見直してみても、今の自分にはこの泳ぎはできない」というネガティブな思いしか浮かんでこなかった。

 それが吹っ切れたのが、400m個人メドレーの前日だった。

「27日の朝練習に来た時に、スタッフのひとりが『別に泣いてもいいんじゃない? 自分の頑張りに対しては失礼のないようにしないと。頑張りを無駄にしないようにしないともったいない』と話してくれて。それがストンと心の中に落ちてきて、結果が悪くても自分のために頑張ろうと思えました」

 不安はあったが、これまでも試合の中で急激に動きがよくなることがあり、それと同じものを感じながら400mでも決勝進出を決めた。

 決勝では、前半は女王カティンカ・ホッスー(ハンガリー)と互角に競り合ったが、後ろから迫ってきていた2012年ロンドン五輪金メダリストの葉詩文(中国)に最後の最後で抜かれ、4分32秒33で3位になった。

「前半はホッスー選手と競り合うレースができました。後半では突き放されて最後も抜かれたけれど、素直にメダルが獲れてうれしい気持ちがあります。最後の自由形で、葉選手が追い上げてきたのは見えたので、とにかく抜かれないようにしたいと思っていたし、瀬戸大也さんから『最後は脚がもげてもいいからキックを打て』と言われていたので、その言葉どおりにしたら、ゴール後も全然動けなかったです。自由形が、これからの強化ポイントだとわかったのも収穫でした」(大橋)

 前回大会の銀メダルは、プレッシャーもなく挑んで獲れたメダルで、自分の成長を確認できるうれしいメダルだった。それに対して、今回の銅メダルはこの2年間、プレッシャーを感じながら過ごしてきて、200mで失敗した後に獲れたメダルだった。大橋はこのメダルの価値をこう話す。

「来年へ向けてすごく意味のあるものだし、今までやってきた試合の中でも意味のあるメダル。記憶にも残るものになると思う」

 平井コーチも高く評価している。

「200mで失格があった割には気後れすることもなかったから、僕はああいうレースをしたことを褒めてあげたいと思うし、来年の東京五輪へ向けて金メダルをもう一回考えられるレースになったのではないかと思います」

 平井コーチは、チーム全体としての評価を、自己新を出すことより世界選手権の選考会だった、日本選手権やジャパンオープンから記録を今回上げられたかどうかで、判断したいと話していた。

 その点で大橋の400mの記録は、17年の日本選手権で出した自身の日本記録には届かなかったものの、今年の日本選手権で出した4分33秒02を上回るシーズンベストだった。

 本人も「400mは日本選手権で2年連続(17年と18年)日本記録を出しましたが、夏の世界大会ではタイムを上げることができていなかった。その点で、今回はすごく収穫になった」と素直に喜ぶ。

 前回は最初の200mで銀メダルを獲りながらも、400mでは失速して涙にくれた大橋。今回は涙から始まったものの、笑顔で大会を締めくくった。

Sportiva

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