GS全勝無失点なでしこにも綻びあり。スペイン戦で見えた課題【女子W杯】

2023年8月1日(火)18時30分 FOOTBALL TRIBE

日本女子代表 写真:Getty Images

なでしこジャパンことサッカー日本女子代表は7月31日、2023FIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージーランド大会グループC第3節でスペイン代表と対戦。最終スコア4-0で勝利した。


グループステージ3戦全勝、加えて全試合無失点と完璧な結果を出したなでしこジャパン。今節は強豪スペインにボールを保持されたが、池田太監督のもとで磨き上げた堅守速攻が威力を発揮。同代表が前半に放った3本のシュートが全てゴールに結びつき、試合の趨勢が早々に決した。


盤石に見えるなでしこジャパンだが、ノックアウトステージ(決勝トーナメント)に向けて不安材料がないわけではない。ここではスペイン代表戦を振り返るとともに、同代表が修正すべき綻びについて解説していく。




日本女子代表vsスペイン女子代表、先発メンバー

日本女子代表vsスペイン女子代表:試合展開


[4-1-2-3]の初期配置を軸にボールを保持したスペイン代表に対し、なでしこジャパンは[5-4-1]の守備隊形で応戦。自陣ペナルティエリア手前や中盤のスペースを徹底的に埋め、ボールを奪ってからの速攻に勝機を見出した。


迎えた前半12分、DF熊谷紗希からのロングパスを左サイドで受けたMF遠藤純が、相手最終ラインの背後へスルーパスを送る。このボールに反応したMF宮澤ひなたが相手GKミサ・ロドリゲスとの1対1を制し、先制ゴールを挙げた。


その後もなでしこジャパンの堅守速攻が冴え渡り、前半29分にも宮澤とFW植木理子がスペイン代表のゴールを脅かす。宮澤のラストパスを受けた植木がペナルティエリア左隅から右足でシュートを放ち、なでしこジャパンに追加点をもたらした。


同40分にも、MF長野風花のパスカットから始まった速攻を宮澤が結実させ、なでしこジャパンのリードは3点に。このゴールで同代表の勝利が決定的となった。


試合全体を通じてのボール支配率は23%と、相手を大きく下回ったものの、なでしこジャパンは後半も[5-4-1]の堅固な守備ブロックを維持。スペイン代表に反撃の機会を与えなかった(スペイン代表のボール支配率は77%、数値はデータサイト『SofaScore』より)。


後半37分にはDF守屋都弥のスローインを受けたFW田中美南が、右サイドからのドリブルで敵陣ペナルティエリア右隅へ侵入。そのまま左足でシュートを放つと、ボールはゴール左上に突き刺さった。途中出場したINAC神戸レオネッサ所属のコンビが、ノックアウトステージに向けて弾みがつくゴールをもたらしている。


テレサ・アベレイラ(左)植木理子(右)写真:Getty Images

やや甘かった前線からの守備


ノックアウトステージに向けてなでしこジャパンが修正すべき点のひとつは、前線からの守備だ。


スペイン代表の2センターバックがボールを保持した際、ここからMFテレサ・アベレイラ(中盤の底)へのパスコースを、なでしこジャパンの1トップ植木が塞ぎきれていない場面がちらほら。MF林穂之香と長野の2ボランチが飛び出してアベレイラに寄せていたが、これによりなでしこジャパンの中盤とセンターバックの間が開く場面も散見された。


相手の2センターバックがアベレイラへの縦パスを多用しなかったため、大事には至らなかったものの、ここを起点になでしこジャパンの守備ブロックが崩されてもおかしくなかっただろう。ノックアウトステージでは、この僅かな綻びが命取りとなりかねない。守備時の1トップの選手の立ち位置や役割を改めて確認したいところだ。




マリオナ・カルデンティ(左)宮澤ひなた(右)写真:Getty Images

より磨き上げたい自陣での守備


5人の最終ラインと、4人の中盤によるなでしこジャパンの自陣撤退守備はほとんどの時間帯で安定していたが、5バックの背後をスペイン代表に突かれる場面もあった。


最たる例は、前半5分のスペイン代表の攻撃シーン。なでしこジャパンの自陣右サイドでスペイン代表のパス回しが始まると、MFアレクシア・プテジャスがFWマリオナ・カルデンティにバックパスを送る。このパスを受けたカルデンティがすかさずゴール前へクロスを送ると、このボールがなでしこジャパンの最終ラインの背後を突いたMFアイタナ・ボンマティのもとへ。ボンマティは僅かにボールに届かなかったが、この場面においてはスペイン代表の攻撃がなでしこの守備を凌駕していた。


5バックは4バックと比べて最終ラインの人数が多く、ゆえにラインを揃えるのが難しい。そのうえ相手チームに一旦自陣の深い位置を使われ、そこからバックパスをされてすぐさまゴール前にクロスボールを送り込まれると、最終ラインが乱れてオフサイドをとりにくい。この攻撃は5バックのチームを攻略するためのセオリーだが、スペイン代表が前半5分に仕掛けたのはまさにこれであり、なでしこジャパンは危うく失点するところだった。


この場面では、クロスの出し手となったカルデンティに対する宮澤や林のプレスが遅れており、なでしこジャパンにとって危険なパスがゴール前に送り込まれている。クロスの出し手へのアプローチをより徹底したいところだ。


また、同じ場面でDF南萌華が自身の背後(死角)をボンマティに突かれており、左ウイングバックの遠藤も同選手を捕捉できていない。センターバックとウイングバックの間から侵入してくる相手のマークを、誰が担うのか。この点も明確にする必要があるだろう。大勝した試合のなかで垣間見えた守備の課題を、なでしこジャパンの面々が改善できるかに注目したい。

FOOTBALL TRIBE

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