平野早矢香が語った卓球女子団体、金メダルへの展望。「今大会は中国のほうに嫌な感じがあるはず」

8月1日(日)6時40分 Sportiva

日本女子卓球初の五輪メダリスト
平野早矢香インタビュー 後編 
前編:ロンドン五輪銀メダルの裏話>>
鷲見玲奈水谷隼が語った丹羽孝希との異色ダブルス「まったく違う競技を見ている感覚になる」
 東京五輪での日本卓球は2つの「初」のメダルを手にした。混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠ペアが金メダル、伊藤は女子シングルスで銅メダルを獲得。惜しくも目標に届かなかった選手たちもいるが、8月1日からの団体戦で有終の美を飾るために死力を尽くす。
 ロンドン五輪の女子団体で卓球界初の銀メダルを獲得した平野早矢香は、2016年に現役を引退後、卓球を「する」側から「伝える」側にまわった。東京五輪でもテレビ中継に出演し、卓球競技を中心に選手たちの活躍を視聴者に届けている。インタビュー後編では、卓球女子の団体戦について話を聞いた。

大会前に練習を行なった(左から)伊藤美誠、石川佳純、平野美宇、早田ひな photo by Kyodo News
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——いよいよ卓球女子団体戦が始まります。日本のメンバーは石川佳純選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手の3人。最大のライバルは中国ですが、それ以外で気になる国はありますか?
「ちょっと嫌だなぁと感じていたのは韓国でしたが、トーナメントの組み合わせで反対の山になりましたから、日本と当たるなら決勝になります。ただ、韓国は勝ち進んでも準決勝で中国と対戦することになるので、決勝に進める可能性は低くなったと思います。
 レベル的には断然アジア勢が強いのですが、一方でヨーロッパ選手のボールは少し癖があって、やりづらさがあるんです。アジアの女子選手たちが台に近いところで打つのに対し、ヨーロッパの女子選手は男子選手に近いというか、台から少し距離を取ってプレーします。それでボールが綺麗じゃないと言いますか、ちょっと変化がある。アジアの選手の球質とは違うので、ヨーロッパの国も注意が必要です」


卓球女子団体戦について語った平野さん photo by Tatematsu Naozumi
——よく言われる、プロ野球とメジャーリーグでの球質の違いのような感じですね。ダブルスの話が出ましたが、石川選手とペアを組んだことがある平野さんから見て、石川選手と平野選手のダブルスはどう見ていますか?
「私が石川選手と組んだ時は、石川選手がやりやすいようにゲームメイクをしたり、コースを突いていきました。私自身、そういうプレーのほうが好きでしたし、チームとしてもいい形でしたね。一方、石川選手と平野選手とのペアだと、平野選手がバックドライブ一発で決められるボールを持っているので、もしかすると石川選手は、以前の私のようにゲームメイクやコース取り、全体的な指示をする役割を担っているかもしれません。平野選手のやりやすい形に持っていく、という戦術も準備しているでしょう。
 でも、平野選手の状態が上がらなかったり、相手によって石川選手が積極的に攻めたほうがいいとなれば、逆の戦い方もできるはず。2人とも、それができる技術の幅があるので、『全部この形でいくんだ』とこだわるのではなく、相手や場面に応じて変えていっていいと思います」
——臨機応変に対応していくということですね。五輪まで大会は少なかったですが、本番を迎えるまでの2人の状態をどう見ていましたか?
「大胆に行くところは思い切って打つ、逆に丁寧に行くところは少しコントロールして攻める、といったようにメリハリがついていると思って見ていました。どちらかに振り切るのではなく、それらのバランスが取れた時が一番いい内容になっているので、団体戦もその感覚で臨んでほしいですね」
——ファンとしては、決勝で中国と戦い、勝つところが見たいと思っている人も多いと思います。中国と戦うことになったら、どんな展開になるでしょうか。
「中国も日本のことを今までにないぐらい警戒していますし、警戒せざるを得ないチームになっているんじゃないかと思います。特に今大会シングルス2試合の"エース使い"になるだろう伊藤選手は、2018年以降は中国選手とほぼ互角と、かなりいい勝負をしています。初戦のダブルス(東京五輪はダブルスのあとにシングルスが4試合行なわれる)で相手にプレッシャーをかけることができれば、かなり面白い展開になるでしょう。リードして伊藤選手に回すのか、リードされて回すのかによって、対戦相手の心理的な部分が違ってきます」

——コロナ禍以降は国際試合での対戦が少なかったため、対策という面では難しさもあるでしょうか。
「お互いにフタを開けてみないとわからない部分はありますね。それでも私の見解としては、中国のほうに"嫌な感じ"があると思っています。中国は金メダル獲得が至上命令ですから、本番前には他の国のチームと試合を多くこなして、『今の差はどれぐらいなのか』を確認しておきたかったはずです。
 加えて、日本の選手たちのプレースタイルは、中国選手とは違う技術、そしてスピード感があるので、より脅威に感じていると思います。実際に対戦することになった時に、相手をハッとさせるようなプレーができれば、日本に流れがくるんじゃないかと考えています」
——団体戦の最年長は石川選手ですが、ロンドン五輪で同じ立場を経験した平野さんから見て、その役割をどう感じていますか?
「今回はキャプテンを担っていますが、これまでに世界選手権でも経験してはいますし、いつも通り、自然なままの彼女でいいと思います。『キャプテンだから』と肩に力を入れることなく。大会前のインタビューなどでも、吹っ切れた感じがあるというか、すごく前向きでしたね。
 東京五輪が1年延期になった時に、石川選手はベテランと言われる年齢ですから、『メンタル的に大丈夫かな』と心配していたんです。でも逆に、延期になったのをすごくプラスに捉えていて、いろんな技にトライしていました。2019年は五輪の代表レースで疲労もあったと思うので、そのまま2020年に開催されたよりも、時間をおいて、少しずつ調整できたことは彼女にとってよかったんじゃないでしょうか。シングルスでは準々決勝で敗退して悔しい思いもあるでしょうが、団体戦では彼女らしくのびのびとやってくれたらいいなと思います」

——代表選考レースや五輪の延期を経て、3大会連続の団体戦メダルをかけて戦う彼女たちにエールをお願いします。
「きっと、現在のコロナ禍において、『自分たちのプレーで、見ている方たちに何かを感じ取ってもらいたい』という気持ちは共通で持っていると思います。でも、私個人としては、この五輪の切符は自分たちで勝ち取った権利なので、自分たちが納得する試合をしてほしい。この舞台を存分に味わってもらって、楽しんでもらいたいです。結果はともかく自分たちが納得する形で終われたら、それが結果として、見ている人たちに勇気を与えることにつながると思っています。それぐらいのレベルに達している選手たちですから、『とにかく出し切る』ということに専念してほしいです」
——ありがとうございます。最後に、平野さんの今後の展望をお聞かせください。
「みんながすごく活躍してくれるので、私としてもコメンテーターや解説、そして普及活動と、卓球に関わるお仕事をたくさんやらせていただいています。その中で、『自分の経験を多くの方に伝えていくことが重要だな』と考えています。それはトップアスリートに対してもそうなんですが、スポーツから学んだことは日常生活にも通ずるところが多々あると思うんです。だからスポーツは、すべての人たちの人生にとって大切な存在であることを、いろんな形で伝えていきたいですね。
 特に卓球は、トップを目指して練習するのも面白いですが、"生涯スポーツ"の一面もあります。老若男女、台とラケットがあればずっと楽しめるのが魅力です。卓球をやったことがある人は多いと思いますが、そこからさらに面白さを伝えていって、長い間、この競技を好きでいてほしい。私も今までは教わる立場だったので、それを受け継ぎ、卓球というスポーツの楽しさを伝え続けていけたらと思います」

(前編:ロンドン五輪銀メダルの裏話>>)
■平野早矢香(ひらの・さやか)
1985年3月24日生まれ。栃木県出身。全日本選手権のシングルスを2007年度から3連覇するなど、通算5度の優勝を達成。2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪に出場し、ロンドン五輪の団体戦で日本卓球史上初の銀メダル獲得に貢献した。2016年4月に現役を引退後は、後輩の指導をはじめ、講習会や解説など卓球の普及活動にも取り組んでいる。


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