ニュル最速のホンダ・シビック・タイプRは一般公道でも走りの楽しさを味わえるか/市販車試乗レポート

2018年8月2日(木)6時0分 AUTOSPORT web

 ホンダが究極のFFスポーツカーとして生み出した、シビック・タイプR。このクルマのサーキットでのポテンシャルはさまざまなメディアが太鼓判を押しているし、レースでの活躍はオートスポーツwebでもお伝えしているとおりだ。


 乗ったことがある人ならご存じだろうが、シビック・タイプRは“硬い”印象がある。では、新型のFK8型の一般公道での乗り味はどうなのだろうか。編集部で各方面を徹底的に検証してみた。


 2017年の9月に満を持して登場したFK8型のシビック・タイプR。日本市場でシビックのタイプRが一般発売されるのは、台数限定で発売されたFN2型、FK2型を除くと2010年に発売が終了したFD2型以来、7年ぶりとなる。


FK8型ホンダ・シビック・タイプR

FK8型ホンダ・シビック・タイプR(サイド)

FK8型ホンダ・シビック・タイプR

 シビック・タイプRは6速マニュアル・トランスミッションのみの設定で、車両価格も450万円と、国産車としては簡単に手を出すことが難しい価格帯となっている。また、走りのパフォーマンスを向上させるための空力パーツをこれでもかと盛り込んだデザインにも、賛否が分かれるところだろう。個人的には、ひと目見たら誰もが振り向くようなアグレッシブなデザインは嫌いではない。


FK8型ホンダ・シビック・タイプR(フロント)

FK8型ホンダ・シビック・タイプR(リヤ)

“R”の名が示すとおり、シビック・タイプRはサーキットという環境下でこそ走りの楽しさを存分に味わうことができる。一方で、今までのモデルは一般公道での乗り心地は“キツい”と評価されることが多い。筆者は2008年型のFD2型を運転した経験があるが、一般の道路を長時間運転した後の疲労感はかなり応えるものがあった。また、路面からの衝撃もひとりで運転するときはあまり気にならないが、助手席や後部座席に乗る人には大きな負担となってしまう。


 新型のFK8型も一般公道での乗り心地は“キツい”のか。実際にドライブして体感してみた。


■強力なエンジンパワーが滑らかな加速をもたらす


 シビック・タイプRと対面し、いざコクピットへ。シートに座り込むと視点は低く、ドライビングポジションはスポーツカー然としていることに気づかされる。標準装備の赤いスポーティーなシートもほどよく体を支えてくれて、長距離ドライブでも疲れにくい印象を持った。


タイプR専用設計の赤いシートはかなり派手だが、走行時はしっかりと体を支えてくれる

車体が低くいが、乗り降りはスムーズにできる

シートに座り込むと視点は低く、ドライビングポジションはスポーツカー然としていることに気づかされる

シートはほどよく体を支えてくれるため長距離ドライブでも疲れにくいと感じる

 エンジンを始動すると、表示される赤いスピードメーターがやる気を掻き立てる。しかし、今回は一般公道でのインプレッションのため、スピードを出したいという気持ちを抑えつつ、ギヤをニュートラルから1速に入れ、走る出すと__。本当に驚いた。オートマチック車のように滑らかに加速することができたのだ。


 FK8型のシビック・タイプRには、最高出力320馬力、最大トルク400N・mを発揮するタイプR専用設計の2リッターVTECターボエンジンが搭載されている。前輪駆動であることを踏まえると、驚異的なパワーを発揮するエンジンだけに、慎重にアクセルを踏まなければならないのかと考えたが、まったくの杞憂だった。 むしろ、このパワーが発進や加速をスムーズにしてくれる。


FK8型ホンダ・シビック・タイプRの車内(フロント)

FK8型ホンダ・シビック・タイプRのハンドル回り

カーボン調のパネルはコクピットをスポーティに演出

FK8型ホンダ・シビック・タイプRのセンターコンソール

2リッターVTECターボエンジンの強力なパワーが滑らかな加速をもたらしてくれる

 ギヤチェンジする際のシフトの感触も良好。マニュアル車にあまり慣れていない筆者でも、シフトダウンする際は、標準で備わっているレブマッチシステムがエンジン回転数を自動でシンクロさせてくれるおかげで、自ら完璧なヒール&トゥを決めたような錯覚に陥ることもできる。


■普段使いも充分可能なFFスポーツカー


 もっとも懸念していた乗り心地も驚くほど快適で、うねりや段差が多い路面を走行してもガタンっとくる大きな衝撃は感じなかった。また、コーナーを曲がる際もロールが少なく、非常に安定してる。このとき筆者に加えて2名が同乗していたが、そのふたりも、予想していたよりも振動や衝撃も感じず、後部座席でも乗り心地は悪くなかったという。


 FK8型のシビック・タイプRには、『COMFORT』、『SPORT』、『+R』と3種類のドライブモードが選択でき、デフォルトでは『SPORT』が設定されている。このドライブモードを『COMFORT』にして走行してみると、路面からの衝撃はさらに軽減され、ステアリングも軽くなり、より快適に運転することができた。


後部座席も広めで、走行中の乗り心地も悪くない

 特に大きな変化をもたらすのが『+R』で、このモードに設定すると、今までの乗り味から大きく変化する。路面からのインフォメーションは増し、ステアリングも重くなってタイヤの挙動がより把握できるようになるのだ。アクセルレスポンスもシャープで、アクセルを少し踏んだだけですぐに法定速度に達してしまう。一般公道でこのモードを使うときはいろいろな面で注意が必要になるだろう。


ドライブモード『COMFORT』時のメーターパネル

ドライブモード『SPORT』時のメーターパネル

ドライブモード『+R』時のメーターパネル

 マニュアル車でたまにやってしまう“エンスト(エンジンストップ)”時の再始動手順も少し不安があったが、これも杞憂だった。エンストしてしまった際は、クラッチを奥まで踏み込めば自動でエンジンを再始動してくれる。この機能は初心者やマニュアル車をひさしぶりに運転するドライバーには嬉しい機能だろう。


エンスト時は左のクラッチを踏み込めば自動でエンジンを再始動してくれる

 一般公道を中心にFK8型のシビック・タイプRを試乗したが、このクルマは、サーキットだけでなく、一般公道でも走りの楽しさを存分に味わうことができることは間違いないと感じた。また、乗り心地も快適で普段使いも充分対応することができる。“タイプR”で乗り心地に不安がある人や、家庭を持つクルマ好きも買って後悔することはないはずだ。


 しかし、450万円はすぐに手が出せる価格ではないのも事実だ。過去を知る人にとってはシビックで450万と聞くと驚くユーザーも多いはず。ただし、空力パーツや最新の電子制御、インテリア、タイヤ、ホイール、ブレーキなどの装備面を考えれば、価格にも納得できるだろう。


 しかも、3種類のドライブモードのおかげで普段使いとサーキット走行もこなしてくれるため、シビック・タイプRだけで1台2役を実現してくれる。そう考えると普段使い用、サーキット走行用と2台のクルマを所持するよりかは購入費、維持費を考えるとシビック・タイプRを1台だけ所有するほうが断然安いだろう。また、家庭をお持ちでシビック・タイプRの購入を考えている方は、まず乗り心地の面を前面に押し出して、購入の交渉してみてはいかがだろうか。


トランクの開閉は手動

シビック・ハッチバックをベースとしているため積載スペースも広く、買い物も楽にこなせる

大径化・低扁平化した20インチタイヤが装備。ホイールは軽量・高剛性のアルミホイールが採用されている

トリプルエキゾーストシステムは気持ちの良いエンジンサウンドを奏でてくれる

CFD(流体解析)や風洞実験を繰り返してデザインされた最新のエアロダイナミクスがふんだんに盛り込まれている

フロントのエアロパーツ

リヤのエアロパーツ

大型のリヤスポイラーは強力なダウンフォースを発生させるという

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