【新車のツボ158】トヨタ・スープラ。賛否両論クセ感ありのスポーツカー

8月4日(日)6時57分 Sportiva

 トヨタの新型スープラは今年(2019年)1月にベールを脱いで以来、とにかく注目度がすさまじい。「とりあえずスープラを出しておけばアクセスが稼げる」という関連記事の鉄板っぷりは、昨年のスズキ・ジムニー/ジムニーシエラ第150回参照以上かもしれない。ただ、だれもに総じて好意的に受け入れられたジムニー/ジムニーシエラに対して、新型スープラでは賛否両論が激しくうずまくところが、良くも悪くもトヨタらしい。アンチ派の意見も多種多様だが、たとえば「トヨタはスポーツカーを他社(=BMW)につくらせるのか!?」とか「兄弟車のZ4に対してスープラのデザインが嫌い」といった意見が目立つ。

 BMW Z4156回参照)の回でも書いたが、新型スープラはトヨタとBMWの共同開発車であり、そのハードウェアは早い話がZ4のクーペ版である。考えてみれば、スープラの弟分たるトヨタ86(第31回参照)もスバルと共同開発であり、しかも、どちらも実際の設計開発や生産は相手企業が担当した。とくにスポーツカーのようなロマンチックな情緒商品では「純自家製であるべし」と信じて疑わないのがマニアの性(さが)である。その意味では、偏狭なマニアは新型スープラにどうしても「また他人のフンドシで……」とツッコミを入れたくなってしまうのだ。




 しかし、新型スープラはBMWがつくったスポーツカーにトヨタのバッジを貼りつけただけ……のクルマではない。企画のスタートからトヨタとBMWは対等で、BMWもトヨタがいなければこのクラスのスポーツカーから撤退していた可能性が高い。設計の実作業はBMWによるものだが、ホイールベースやトレッド、重心高、ボディ剛性、エンジンスペックの策定といった”クルマ設計の一丁目一番地”の段階からトヨタとBMWは激しい議論を展開。聞くところでは「トヨタ側の思想や主張のほうが、より本格的でトンがったものだった」らしい。新型スープラより先に発売されたBMWのZ4もこれまで以上の硬派でマニアックな走りがツボだが、そこにはスープラと共用する基本設計がトヨタ側の強力プッシュによってレベルアップした恩恵もあるようだ。

 そんな新型スープラだが、内外装のデザインや細部の味つけは、おたがいの不可侵領域として、トヨタはトヨタで独自で仕上げた。ときには好き嫌いが分かれる「クセがすごい」スタイリングも、あえて賛否両論を呼ぶための確信犯的なワザだろう。その古典的なロングノーズスタイルや、ランプ類をボディ中央に寄せる特徴的な配置は、歴代スープラの伝統を受け継ぐデザインのツボなんだとか。

 また、ボディのあちこちに冷却口(風のディテール)が散りばめられていながら、それらがダミー部品で埋められているところも、アンチトヨタ派は「ただの飾りかよ!?」と早合点してしまいがちだが、そうではない。




 これらはノーマルではまったく不要な冷却口で、空力の悪影響を及ぼさないためにピタリとふさいである……のだが、チューニングやカスタマイズでより高い冷却性能が必要となったときに、部品をはずすだけで通気口となることを想定している。「スポーツカーなんだから、どうせイジりたくなるでしょ!?」というトヨタからの隠れたサービスというわけだ。

 新型スープラに乗ってみれば、運動性能の本質というか、クルマの芯の部分にZ4との共通点が色濃く感じられる。しかし、いっぽうでエンジンの排気音はトヨタのほうがいい意味で下品だし、Z4より軽い操作力でクルクル曲がりたがる味つけは、弟分のトヨタ86(第31回参照)にも共通するトヨタっぽさがにじみ出ている。

 ちなみに、トヨタ純正の歴代スープラはずっと直列6気筒エンジンを積んでいることから、新型スープラでも6気筒を積むトップグレードが”歴史的には正統な新型”という位置づけになる。しかし、新型スープラの味つけを直接担当したトヨタのトップテスターたちはほぼ例外なく、4気筒エンジンを積んだSZ-Rグレード(写真のクルマ)が「ハンドリングだけで選ぶなら」と注釈をつけつつもイチオシする。なるほど、BMWよりクルクル曲がることが信条の新型スープラでは、フロントがより軽くなる4気筒のほうが、コーナリングもより軽快で”らしい”という意味だろう。




 さらには、まるで岩のようなボディ剛性感や、これほどの速い後輪駆動車をこんなに短いホイールベースで安定して走らせる技術に「やっぱBMWはすごいな」と思わされる本音である。で、デザインの好き嫌いやブランドの”格”はひとまず横に置いて、クルマの内容を冷静に判断すると、新型スープラは兄弟車のZ4より60〜135万円は割安な計算になる。新型スープラは厳密にはZ4と同じ輸入車だが、日本でのトヨタはさすがにBMWほど強気な価格設定はできないのだろう。そう考えると、実質BMW製のスポーツカーがこの価格で買えるという爆発的な買い得感も、新型スープラの強力なツボである。

 それはともかく、スポーツカーのような趣味的商品を新規開発するのは、今の時代では困難をきわめるのが現実だ。そのなかでトヨタがこうして次々と新しい量販スポーツカーを仕かけられるのは、”共同開発”という手法を見つけたからでもある。この手法はアンチがこぞってツッコミを入れるツボではあるが、これが新しいビジネスモデルとして定着してスポーツカー業界が再び活況を呈するようなことになれば、それはクルマ史に残るトヨタの大きな功績になるかもしれない。




【スペック】
トヨタ・スープラSZ-R
全長×全幅×全高:4380×1865×1295mm
ホイールベース:2470mm
車両重量:1450kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1998cc
最高出力:258ps/5000rpm
最大トルク:400Nm/1550-4400rpm
変速機:8AT
WLTCモード燃費:12.7km/L
乗車定員:2名
車両本体価格:590万円

Sportiva

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