予選一発で際立つニッサン陣営とMOTUL GT-Rの速さ。予選と決勝で異なる勝負の分かれ目《あと読み》

2018年8月5日(日)9時25分 AUTOSPORT web

 ランキング3位で62kgのウエイトハンデと燃料リストリクター制限を受けた23号車MOTUL AUTECH GT-Rが練習走行、そして予選Q1、予選Q2と土曜日のセッションを完全制覇する圧倒的な速さを見せることになったスーパーGT第5戦富士500マイルの予選日。ライバル陣営からは『あのハンデで速すぎる』、『なぜGT-Rのなかでもニスモだけ速い?』、『おかしい』などなど、さまざまな声が聞こえた。


 予選トップ5のなかにGT-Rが4台入り、富士におけるGT-Rの強さを見せた形となったが、そのなかでもMOTUL GT-Rの速さは、ウエイトハンデを考慮すると飛び抜けている。ニッサン以外のメーカーで唯一トップ5に食い込んだau TOM’S LC500の関口雄飛が予選を振り返る。


「クルマもセッティングも決まっていて、走りもミスなく良い形でまとめられたと思うんですけど、予選Q1、Q2とも3番手。Q2でもタイム差がトップと約コンマ3秒あって、(GT-R)速いなあという印象です。同じヨコハマタイヤの中でも24号車(フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R)が速いので、ニッサンが速いですよね」と関口。


 さらには「ニッサンがこの富士で速いし、それプラス、ミシュランタイヤが速い。コース上で見ても、ミシュランはやっぱりケリ出しがいいので、セクター3で速い印象はありますね。今日の予選であとコンマ3を縮めるのは無理ですね。いっぱいいっぱいです。逆に向こう(MOTUL GT-R)の方がミスしているかもしれないので、もっとギャップは広がるかもしれない」と、素直に23号車の速さを認める。


 その23号車MOTUL GT-Rの今回のポールポジション獲得について、監督でもあるニスモ鈴木豊氏は答える。


「富士は得意ですし、我々は積極的にトップを狙いに行っていました。シーズンも半ばに来て速いチームもクルマが重くなってきて、差がないところであれば行けるとは思っていました」


「セクター1はたしかに遅いですが、セクター3はその分を挽回できるくらい速かった。第2戦の富士でもそこそこの速さはあったのですが、我々としては完璧ではないと把握していましたので、その反省を活かしてミシュランさんと一緒に協議しながら開発を進めてきました。それが今回、しっかりと噛み合ったかなと思います。もともとトラクションの良さはミシュランさんの強さの部分ではあったんですけど、そこにさらに磨きを掛けてもらったと思っています」と鈴木監督。


 予選Q2のタイムを見比べると、MOTUL GT-Rのセクター3の速さが際立っていることがわかる。2番手の24号車フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R、3番手の36号車au TOM’S LC500、4番手の3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rのセクタータイムは以下のとおり。


カーナンバー/セクター1/セクター2/セクター3(秒)


○23号車/19.7/26.6/42.0
○24号車/19.5/26.6/42.2
○36号車/19.6/26.7/42.3
○3号車/19.5/26.6/42.6


 ご覧になってわかるとおり、予選トップ4の並びはそのまま、セクター3のタイム順となっている。3号車CRAFTSPORTS GT-Rはおそらくミスがあったものと推測されるが、セクター3が23号車並だったならば、おそらくポールポジションを獲得できていたはずだ。いずれにしても、ミシュランタイヤとGT-Rの組み合わせがいかに富士で強いかが証明される形となった。


 ライバル陣営としても、そのセクター3の速さを認めつつも、MOTUL GT-Rの直線での速さも指摘している。TRDの岡見崇弘エンジニアが話す。


「23号車は速いですね。セクター3が速いのはタイヤの影響が大きいのだと思いますけど、ストレートでも速い。同じ燃リスのサイズで比較しても、4km/hくらい速いです」と岡見氏。


 レクサス陣営は今回、全車シーズン2基目のニューエンジンを投入。「いろいろタマは入れてきました。高回転側の出力も上がっていますが、それよりも低中速域の出力が上がっているかなという形で持ち込んでいるんですけど、この富士でいうとウエイトハンデの軽いGT-Rと比べるとストレートスピードをもうちょっと伸びるように高回転側の出力を上げられる仕様が入れられれば、もうちょっと良い結果になったかなという感触はあります」と岡見氏。


 一方のGT-Rはこの富士まではシーズン1基目のエンジンを使用し、次戦SUGOで2基目を投入する予定だ。


 シーズン1基目のエンジンのままのGT-R陣営だが、逆にエンジン面に関してのメリットもあるようだ。「今回のレースまでなので、ここでエンジンを使い切るということで今まで信頼性の面で温存してきましたが、わずかですがパフォーマンスを上げられている部分はあります。それでもセクター1のあのタイムですが(苦笑)」とニスモ鈴木監督。


 少しのエンジンパフォーマンスアップ、そしてミシュランタイヤとGT-Rと富士の相性、そしてもちろん、松田次生とロニー・クインタレッリの富士での強さが噛み合ったことで、ウエイトハンデと燃リスを克服する速さを見せることができたと言えそうだ。


 ただ、予選の一発と、特に今回のレースの500マイル(800km)のロングディスタンスではそのまま比較はできなさそうだ。


「明日の決勝に向けては、ブレーキよりもタイヤが重要だと思っています。タイヤをいかにマネジメントするか。明日は今日よりもピークの温度はおそらく高くなる予報ですし、レースの始まりと終わりで気温差がかなりありますので、そこは前半、後半とトータルに考えないといけないと思っています。今日は、ブリヂストンさんがあまり合っていなかったような印象がありますので、明日は決して楽な戦いではないと思っています。前半と後半でうまくまとめられたチームが勝つのではないかと思っています」と鈴木監督。


 auの関口も「明日の路温が今日以上に上がるようだったら、向こうがタレて、もしかしたらウチにいいことがあるかもしれない。ウチは路温が高くなっても自信はあります。ですので、明日が暑くなってくれたら展開が変わるかもしれないですけど、今日と同じ気温/路温だと、今日と同じ展開で厳しいですね。明日は作戦もなにもないですね。全力で走りきって、それで優勝できなかったら仕方ないです」と決勝に向けての意気込みを語る。


 決勝は13時30分スタートで、レース終了は18時を過ぎる長丁場。路面温度で見れば、今日の予選日でも20度以上の差がある。基本的な戦略である4ストップ/5スティントの作戦のなかで、いかにその時点でのコンディションに合ったタイヤとセットアップを選ぶことができるのか。


 今回の予選はニッサン陣営、特にMOTUL GT-Rの速さが際立つ結果になったが、予選の展開とは打って変わって、明日はマシンのパフォーマンス以上に、レース運用面、チームの総合力が勝敗を分けることになるのかもしれない。


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