宇佐美貴史とパトリック、ガンバ史上最強のホットライン。国内三冠の再現へ、復活した剛と柔のコンビネーション

8月7日(水)10時10分 フットボールチャンネル

「いま現在がマックスじゃない」

今夏、宇佐美貴史が3年ぶりに、パトリックが2年ぶりに再びガンバ大阪でプレーすることとなった。2014年、国内三冠を独占したシーズンで2トップのコンビを組んだ両者は、2日のヴィッセル神戸戦で復帰後初めて共演を果たした。優勝争いから大きく遠ざかった状況は5年前と似ている。かつての最強コンビは、ガンバの反攻を牽引できるのだろうか。(取材・文:藤江直人)

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 以心伝心と言うべきか。あるいは、黄金の輝きを放った残像をお互いに鮮明に覚えているからか。敵地ノエビアスタジアム神戸内の取材エリアで、3年あまりの空白期間を超えて共演を果たしたガンバ大阪の宇佐美貴史とパトリックは、図らずも同じニュアンスの言葉を残した。

「要所、要所では(コンビネーションが)合いましたけど、まだまだというか、もっともっと合っていくはずだし、パト(パトリック)もそうだと思うけど、僕もどんどん状態が上がっていく。というよりも、状態を上げていかなければいけない。そういう意識でいます」

 ブンデスリーガ1部のFCアウグスブルクから完全移籍の形で、愛してやまないガンバへ約3年ぶりに復帰した宇佐美が、毅然とした表情を浮かべながら前を見すえた。そして、サンフレッチェ広島から期限付き移籍の形で、約2年ぶりにガンバの一員となったパトリックも続いた。

「ウサミは以前に一緒にプレーしていたときよりも経験を積んで、さらに円熟味が増したんじゃないかな。ただ、僕もそうだけど、もちろんいま現在がマックスじゃない。自分たちが状態をもっと上げていけば、さらにお互いのパフォーマンスも上げられると思っている」

 フライデーナイトJリーグとして、2日に行われた明治安田生命J1リーグ第21節。2014年7月から最前線でそろい踏みし、お互いを生かし合いながら爆発的な得点力をガンバにもたらし、史上2チーム目の国内三大タイトル独占へ導いた最強コンビが1133日ぶりに復活した。

宇佐美の海外挑戦は「2度目もダメだった」

 先に復帰したのは宇佐美だった。2016年夏に移籍したアウグスブルクで結果を出せず、翌年夏に2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフへ期限付き移籍。後半戦に入って調子をあげ、最終的に8ゴールをあげて優勝に貢献するも、期限付き移籍を延長して再び臨んだ1部の舞台ではね返された。

 アウグスブルクとの契約が2年残っている状況で、中学生時代から心技体を磨いてきたガンバからオファーが届いた。強豪バイエルン・ミュンヘン、そしてホッフェンハイムへ期限付き移籍しながら壁にはね返されて復帰した、2013年の夏とは状況がまったく違う。

 すでに27歳。中堅の域に差しかかっているからこそ、背負うものも果てしなく大きくなる。復帰が発表された6月25日。本拠地パナソニックスタジアム吹田で記者会見に臨んだ宇佐美は、ルーキーイヤーに背負った「33番」のユニフォームを手にしながら「2度目(の挑戦)もダメだった、という気持ちがすがすがしいくらい自分のなかにある」と、自虐的な言葉のなかに闘志をのぞかせた。

 1か月後の7月25日にはパトリックの加入も決まった。昨季は得点ランキング2位の20ゴールをあげながら、今季はコンディション不良もあって新加入のドウグラス・ヴィエイラ(前東京ヴェルディ)にポジションを奪われ、出場13試合のうち先発は4度にとどまっていた。

 それでも、限られた時間のなかで3ゴールをあげるなど、能力は衰えていないことを示していた31歳のパトリックのもとへは、浦和レッズからもオファーが届いていた。最終的にガンバを選んだのは、来季から完全移籍に切り替えられることを前提とするオファーだっただけではなかった。

宇佐美とパトリックのコンビネーション

 母国ブラジルのサルゲイロから期限付き移籍していたパトリックは2016年の秋に、右ひざの前十字じん帯と外側半月板を損傷する全治8か月の大けがを負った。ガンバは「負傷したままサルゲイロへ返せない」という理由で、満了が目前に迫っていた期限付き移籍を半年間延長した。

 2015シーズンの天皇杯を含めて、ガンバへ4つのタイトルをもたらした功労者への誠意と言っていい。完治後に今度はサンフレッチェへ期限付き移籍し、今季からは完全移籍に切り替えても、パトリックはガンバへの恩を忘れていなかった。復帰したときにはこんなコメントを残している。

「僕のハートの一部はガンバの色に染まっているし、いまでも強い思い入れがある。またガンバに戻れることを嬉しく思うし、強いガンバにできるように頑張りたい」

 パトリックが振り返ったように、2人がコンビを組んでいたガンバは無類の強さを誇った。その象徴が2014シーズンのJ1制覇となる。ブラジルワールドカップによる中断期間が明けた時点でガンバは16位に低迷し、1年でJ2へUターンしかねない泥沼にあえいでいた。

 しかし、シーズン開幕前に負い、長期離脱を強いられる原因になった左腓骨筋腱脱臼から完全復活した宇佐美と、中断期間中に加わったパトリックがガンバをV字回復させる。再開後の20試合で2人だけで18ゴールをマーク。奇跡の逆転優勝、そして三冠独占の立役者になった。

 身長189cm体重82kgのパトリックが、強靱なフィジカルと縦への推進力で相手の守備網を強引に押し下げる。生じたスペースに侵入した宇佐美が、身長178cm体重69kgの体に搭載された攻撃のオールラウンダーぶりを変幻自在に解き放ち、剛と柔のコンビネーションで相手を蹂躙した。

宮本監督が思い描く宇佐美の起用法

 ならば、令和の時代に復活したコンビは再び最強の輝きを放ったのか。システムを[3−5−2]で組んだヴィッセル戦でパトリックはアデミウソンと2トップを、宇佐美はその後方で倉田秋とインサイドハーフを組んでいる。

 ひと足早く復帰した宇佐美は7月20日の名古屋グランパス戦で、2トップの一角として先発フル出場。試合終了間際に起死回生となる同点ゴールを頭で叩き込んでいる。試合ごと、相手ごとに前線のなかでポジションを変えて起用していく構想を、ガンバを率いる宮本恒靖監督は思い描いている。

「宇佐美がボールをもったときに見せる、相手に対する危険なプレーを、どの高さで発揮させるのかという点がキーになってくる。ヴィッセル戦はパトリックとアデミウソンを前線で起用しましたが、2人へのパスやコンビネーションでよさも見られるので、2人の後ろで使っているところもある。本人のコンディションや相手のシステムによって、宇佐美を使う場所は変化していくと思う」

 倉田を介して2人のホットラインが開通したのは、1点リードで迎えた53分だった。自陣の中央でこぼれ球を拾った宇佐美がドリブルを開始。センターサークル内でパスを受けた倉田がさらにドリブルで敵陣へ侵入し、右サイドをフリーで駆けあがってきたパトリックへスルーパスを通した。

 飛び出してきたヴィッセルのGK飯倉大樹をぎりぎりで交わしたパトリックが、無人と化したゴールへ強烈な一撃を叩き込む。ともに復帰戦で存在感を示すゴールを決めた2人のストライカーの姿が、アンカーの位置で攻撃を組み立てるリオ五輪代表の矢島慎也の目にはどのように映ったのか。

「押し込んだときにそのまま(最後まで)行けちゃったので、ウチの攻撃が終わるのがけっこう早かった。なので、相手の陣内でサイドを変える、といったプレーも時には必要だったのかな、と」

夏の移籍市場で大きな動きを見せるガンバ大阪

 十八番の馬力を前面に押し出したパトリックが、前へ進んでも単発に終わることが多かった点を矢島は反省する。高温多湿の夏場の消耗戦が続くことを考えればボールを保持し、自分たちの攻撃をできるだけ長くする必要性もある。

 パトリックの無骨ぶりを新たな武器と認めながらも修正点を見出した矢島は、宇佐美のストロングポイントを生かす術にも思いを巡らせる。

「逆に宇佐美君は足元に入れれば何とかしてくれるところがあるし、キックの質を見てもゴール前でよさが出ると思うので。(インサイドハーフから)一度落ちてきて、それから前へというプレーもそうですけど、やっぱりゴール前にいてほしいですね。守備の部分は僕とシュウ君(倉田)のところで上手くできれば、というのが実際にプレーしてみて思うところですね」

 今夏の移籍市場が開くとともに、ガンバからは選手が続々と旅立った。昨季のチーム得点王で韓国代表のFWファン・ウィジョがボルドー(フランス)へ、左アウトサイドに定着しかけていた加入2年目の19歳・FW中村敬斗がFCトゥエンテ(オランダ)へ移籍。三冠メンバーのMF今野泰幸がジュビロ磐田、DF米倉恒貴がジェフユナイテッド千葉へ新天地を求めた。

 緊急事態に見舞われかけたからこそ、復帰の形で新たに加わった宇佐美とパトリックに注がれる期待は必然的に大きくなる。5日には元日本代表MF井手口陽介が、イングランドのリーズ・ユナイテッドFCから完全移籍の形で約1年半ぶりに復帰することも決まった。

「攻撃の面でもっと、もっとよさをだしていかないといけない。個人的にもまだまだ課題が残っているし、逆に言えば自分がやるべきことをしっかりと自覚できた。ポジティブに取り組んでいけば個人的にもよくなるし、個人がよくなればチームはもっとよくなると思う」

最適解を見出せるか

 劇的なドローで勝ち点1をもぎ取ったグランパス戦から一転して、ヴィッセル戦は79分と84分に喫した連続失点で勝ち点1にとどまった。試合に必要な勘や体力が、まだ十分ではないと感じたのか。87分にベンチへ下がった宇佐美が表情を引き締めれば、ゴールを決めた後の64分に交代を告げられたパトリックも「ホッとしているが、心からは喜べない」とこう続ける。

「僕とウサミだけじゃない。アデミウソンやクラタもそうだし、他にもタレントがたくさんそろっている。なので、ガンバはもっともっといいサッカーができると思っている」

 長谷川健太監督(現FC東京監督)に率いられた5年前の三冠獲得時は、宇佐美とパトリックの最強コンビを、左右のサイドハーフに配置された阿部浩之(現川崎フロンターレ)と大森晃太郎(現FC東京)がハードワークでフォロー。中盤の守備を今野が一手に担い、ダブルボランチを組む遠藤保仁が自在にゲームメイクする戦い方が夏場以降に定着した。

 翻って選手が大幅に入れ替わった今季の後半戦は、どのような組み合わせが最適解となるのか。たとえば中盤は「10番」を背負って3年目になる倉田、ゲームメイク面で潜在能力を開放しつある矢島、ヴィッセル戦で前人未踏の公式戦1000試合出場を達成した遠藤に井手口が加わった。

 前線にはシュートの質の高さで群を抜く宇佐美と迫力満点の重戦車パトリック、チーム得点王のアデミウソンに勝負強さを武器とする21歳の食野亮太郎がいる。試合から遠ざかっていた宇佐美とパトリックがさらにコンディションをあげ、システムの変更を含めて宮本監督が嬉しい悲鳴をあげる状況が訪れたときに、13位と不本意な位置に甘んじるガンバの反撃が本格的に幕を開ける。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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