【今週の名車】F1最強マシン、マクラーレン・ホンダMP4/4。セナ初戴冠、80年代ターボ終焉の閃光

8月12日(日)18時0分 日本版Autoblog



今から30年前の1988年、マクラーレンF1チームは前年まで使い続けてきたTAGポルシェエンジンの契約を終了し、新たに獲得したホンダエンジンのために、まったくのニューマシンとなるMP4/4 を開発しました。

F1は1989年から3500cc自然吸気(NA)エンジンに規定変更することが決まっており、1500ccターボエンジンはこの年限り。したがって多くのチームは1987年仕様をモディファイしたマシンを走らせるか、ウィリアムズのように先行してNAエンジンに移行して1988年の開幕戦に臨みました。 

1987年のマシンMP4/3は全体的なバランスこそ優れたマシンだったものの、絶対的なスピードにおいてはホンダエンジンを搭載するウィリアムズ勢に劣り、プロフェッサーの異名をとるアラン・プロストをもってしても年間3勝をあげるのがやっとでした。

また、1988年に向けたホンダとの契約締結時期が遅くなったことから、MP4/4の開発は6か月という短期間で行われました。チーフデザイナーのスティーブ・ニコルズは、1986年にチームに加わったゴードン・マレーのアイデアを大幅に取り入れる格好でマシンデザインを進め、その結果MP4/4は1986年にマレーが開発したブラバムBT55を想起させる、非常に低重心・低ドラッグ志向のマシンに生まれ変わりました。

また1988年から導入された「ペダル位置をフロント車軸よりも後方にしなければならない」規定によってMP4/3までの前時代的なくさび形フロントノーズは、より時代に即したシャープなデザインに変更されています。

MP4/4の低重心化に合わせて、ホンダはエンジンのクランクシャフト位置を前年より28mm下げ、これにマクラーレンが用意した3軸ギアボックスを組み合わせています。低くなったマシン後半部分はそのままカウルデザインに現れ、非常に低くスッキリしたコークボトルラインとやはり低いサイドポンツーンがリアウィングへのエアの流入を増やしました。その気流はシャシー下面のディフューザーの効果も高めており、ダウンフォースを増大させています。

ただ、MP4/4の完成は遅れに遅れました。ようやくサーキットでのシェイクダウンが実現したのは、シーズン開幕直前のイモラテスト最終日のこと。それでも、インスタレーションを終えてピットに戻ってきたアラン・プロストは、チームプリンシパルのロン・デニスに「今年はチャンピオンが取れるよ」と言ったとされます。

この年、マクラーレンには当時の若手ドライバーのなかで一番のチャンピオン候補と言われたアイルトン・セナが、チーム・ロータスから移籍して来ました。1987年、ロータスは、セナのたっての希望もあってホンダエンジンを導入したものの、シャシー性能の面でウィリアムズやマクラーレンには及ばずじまい。チーム力の限界を感じたセナは、チャンピオンを獲得するための新天地を求めてホンダと共にマクラーレンへ移籍することを選択しました。
Ayrton Senna test Mclaren Mp4/3B 1987 @HondaRacingF1#F1pic.twitter.com/tZA8mIkcT4
- Andrea Ettori (@AndreaEttori) 2015年9月14日
セナも当然、イモラテストに参加していたわけですが、MP4/4が到着するまでの間はMP4/3にホンダエンジンを搭載したMP4/3Bでテストを重ねていました。しかしセナは実戦に使わないマシンで走っても意味がないとして終始不機嫌な様子。ところがセナもまた、ようやく到着した新車に乗ったときすぐにそのポテンシャルに気づき、そこからは陽が沈むまで走行を続けたと言われています。

1988年のF1シーズンが開幕すると、その初戦ブラジルGPからMP4/4は圧倒的な強さを発揮し始めます。予選ではセナとプロストが、ジャッドCVエンジンを搭載したウィリアムズ F12を駆るナイジェル・マンセルを挟んで1、3位を獲得。決勝ではスタート直前にシフトリンケージトラブルが出たセナがマシン交換をしてピットスタートとなるものの、プロストがホールショットを決めて首位を独走し、そのままMP4/4初優勝を飾ります。一方セナは、ホームグランプリで最後尾から2位まで駆け上がる奮闘をみせたものの、結局はスタート直前のマシン交換にレギュレーション違反の裁定が下り、黒旗提示による失格となりました。
30 years ago today, a win in Brazil for @Prost_official and the MP4/4 kicked off the most successful season in McLaren history. #Celebrate88pic.twitter.com/BcIVD9bk46
- McLaren (@McLarenF1) 2018年4月3日
しかし第2戦はセナが勝ち、以後もマクラーレンはとにかく速さで押すセナと、クレバーな走りで最終的に上位に立つプロストというニ枚看板でシーズンを席巻してゆきます。第8戦イギリスGP終了時点までは、セナとプロストは共に4勝ずつを分けあっていました。そして、ここからの3戦は走りが安定してきたセナが3連勝で一気にリード拡大を開始します。しかし対するプロストも3連続2位で食い下がっていました。

続く第11戦イタリアGPもまた、セナが2位を走るフェラーリ F187/88Cのゲルハルト・ベルガーに5秒のリードを保って首位を維持し、残り2周となったホームストレートをクルージングしていました。前方にはマンセルの欠場で助っ人参戦したジャン=ルイ・シュレッサーのウィリアムズ。セナはストレートエンドのシケインでこのマシンを捉えます。

ところがその時、シュレッサーは走行ラインを誤ってコースアウトしそうになり、戻ってきたところへセナが接触〜スピンする事態に。MP4/4は縁石をまたぐ格好で停止したためタイヤは空回りするばかり。再スタートもままならず、セナはここでレースを諦めることになり、プロストもすでにリタイアしていたため、これがこの年のマクラーレン唯一の敗戦となりました。

#OnThisDay in '88 McLaren didn't win at Monza. Ferrari did. But we won ALL the other GPs that year! #BelieveInMcLarenpic.twitter.com/7Gzo2Y2aV7
- McLaren (@McLarenF1) 2014年9月11日
この結果はティフォシと呼ばれるイタリアの熱狂的ファンだけでなく、世界中のF1ファンが1988年シーズンに感じ始めていた眠気を少しだけ吹き飛ばす出来事でした。そしてセナのリタイアはチームメイトの覚醒も促したのか、残る欧州ラウンド2戦はプロストが優勝を飾ります。

第15戦日本GPは、ポールポジションのセナが決勝のスタートでエンジンストールを喫してしまい、同じくエンジンが止まったロータス100T・ホンダの中嶋悟と共にスタートで後方に飲み込まれた格好で始まりました。しかしセナはひとり別のレースを走っているかのごとくハイペースで、ラップごとに順位を上げてゆきます。そして最終的にプロストさえも抜き去って真っ先にチェッカーフラッグを受けました。「鈴鹿の空に神を見た」との名言も生まれたこの勝利は、セナにシーズン8勝目と、初のワールドチャンピオンをもたらしました。
#OnThisDay in '88 Ayrton won the #JapaneseGP from pole, with FL... oh & his 1st world title too. #RememberSennapic.twitter.com/DBHFgr1saT
- McLaren (@McLarenF1) 2014年10月30日
最終戦オーストラリアGPはプロストが制して年間7勝。マクラーレンMP4/4は16戦中15勝とまさに勝利の山を築き上げ、2018年の現在に至るまで、その勝率(93.75%)は破られていません。

MP4/4の強さは、やはりホンダRA168Eエンジンの性能の高さが大きく貢献したのが大きな要素になっています。1988年はNAエンジン化への移行期とされていたため、ターボエンジンの過給圧は1986年までの無制限から1987年には4バール、そしてターボ最後の年1988年は2.5バールにまで引き下げられていました。またターボマシンの燃料搭載量も1987年の195リッターに対して1988年は150リッターに制限されました。したがって、一時は予選ブーストで1500馬力とも言われたF1の1500ccターボエンジンは、1988年には良くても700馬力前後にまで低下していました。

F1は、これによってターボエンジン搭載マシンとNAエンジン搭載マシンの速さを均衡化させるつもりだったのですが、ホンダは他のターボエンジンメーカーよりも高効率なエンジンを用意してきたこと、そしてMP4/4の低ドラッグな空力特性が、その圧倒的な速さを形成したといえるでしょう。

空力といえば、マクラーレン MP4/4の影に隠れがちではあるものの、1988年はエイドリアン・ニューウェイが初めて設計したマーチ 881や、ロリー・バーン設計のベネトン B188といったNAエンジン搭載車がときおりターボ車を凌ぐ切れ味鋭い走りを見せた年でもありました。これらはいずれもエアロダイナミクスを重視したデザインを採用しており、1988年はF1におけるエアロダイナミクスの進歩が加速し始めた年だったと言えるかもしれません。

McLaren MP4/4 主要諸元
チーフデザイナー スティーブ・ニコルズ/ゴードン・マレー

シャシー カーボン/ハニカムコンポジット複合モノコック

ホイールベース 2875mm

トレッド前/後 1824mm/1670mm

サスペンション前/後 プルロッド/プッシュロッド

トランスミッション マクラーレン製6速マニュアル

車体重量 540kg

エンジン ホンダ製 RA168E 1494cc 80度V型6気筒エンジン+IHI製 ツインターボ

エンジン出力 685馬力

最高回転数 12300rpm

重量 

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