大坂なおみは勇気をもって混戦を制す。「速いサーブよりコース」

8月16日(金)18時37分 Sportiva

 彼女との対戦は今季すでに3度を数え、過去の戦績は2勝1敗。ハードコートに限れば、1勝1敗と星を分け合う。しかもそのいずれもが、剣ヶ峰からの逆転や、激しい主導権の奪い合いを含む大激闘——。

「彼女の一番やっかいな点は”予測不能性”」と、大坂なおみはシェイ・スーウェイ(台湾)を評するが、それはふたりの試合そのものを端的に言い表している。


難敵を倒してベスト8進出を果たした大坂なおみ

「マジックハンド」と称される巧みなラケットさばきから変幻自在なショットを繰り出すシェイと、スーパーショットありイージーミスもありの大坂。それら、ただでさえ予測不能な要素を抱える両者のつば迫り合いに、今回は「ホークアイ(ビデオ判定)なしの10番コート」という、さらなる不確定要素まで加わった。

「世界1位vs女子テニス随一の業師」の試合が小規模コートに押し込められるスケジュールには、多くの関係者が首を捻る。だが、いずれにしても、シンシナティ大会で実現した予測不能な対戦で唯一”予測可能”なことは、ひと筋縄ではいかないということだ。

 真夏の太陽がいくぶん西に傾き始めた午後4時に、すり鉢状の穴の底に設置したような10番コートで、注目の一戦は静かに……しかし、混戦を予感させる形で幕を開けた。

 エースを1本決めるものの、打ち合いになるとミスが目立つ大坂が、いきなりサービスゲームを落とす。ところが、その3ゲーム後にシェイは2本のダブルフォルトを重ねて、ブレークを献上。セット終盤では再びシェイがブレークするも、直後のゲームでミスを重ねて、またもブレークを許した。

 安定感には定評があるシェイに、いつも以上に見える揺らぎ。一方の大坂は、判定に納得がいかず講義する場面がありながらも、むしろ怒りを集中力に変えてみせる。

 流れが二転三転するシーソーゲームの末に、第1セットは大坂がタイブレークでもぎ取った。

 第2セットに入ると、他コートから多くの人が流れ込み、客席から溢れたファンが立ち見でぐるりと最上段を取り囲む。西日とともに熱を増すファンの声援が降り注ぐそのコートで、主導権を握ったのはシェイだった。第2セットは細身な業師が大坂のパワーをいなし、奪い返した。

 4度目の対戦でも、やはりもつれこんだファイナルセットで先にチャンスを得たのは、またもシェイ。スライスや無回転ショットで大坂のリズムを崩すシェイが、第2ゲームで2連続ブレークポイントを掴んでいた。

 あとがないなかで危機に直面したその時、大坂が考えたのは、「サーブのスピードやコースを工夫しよう」ということである。

 自分が速いサーブを打ち込んでも……いや、むしろ速いサーブほど、シェイはカウンターでとらえ、鋭いリターンを返してくる。ならばスピードを緩め、今まで打っていないコースを狙うほうが有効だという仮説を立て、そして勇気をもって実戦した。結果、エースにはならなくとも、機先を制し、ラリー戦で優勢に立つ。

 さらには、4度のデュースの末にこのゲームをキープした時、大坂の目にはもうひとつ、はっきり見えていたものがあった。それは、頻度を増したトリッキーショットの背後にある、シェイの色濃い疲労である。

 相手の疲れを見て取り、「私はまだまだ走れる」との思いを強くした大坂は、危機を切り抜けた直後のゲームで勝負をかけた。フォアのリターンウィナーで引き寄せたチャンスを、打ち合いの末に掴み取る。最後は、ていねいにセンターに打ち込むサーブで相手のラケットを弾き、2時間29分の混戦にピリオドを打ち込んだ。

 ファンが溢れるすり鉢状のコート、疑問符とフラストレーションを伴ういくつかの判定、そしてトリッキーなシェイのプレー……。多くの不確定要素が絡む混戦を制したその要因を、大坂は「体力と精神力」と断言した。

 欧州の芝シーズンでは苦しい時期を過ごした大坂だが、北米ハードコートに戻ってからは、これで2週連続のベスト8入り。

 そんな彼女を、周囲は「得意のコートに戻り、再び好調時のフォームを取り戻した」とみなしがちだが、本人は「私は以前に戻りたいとは思わない。常に成長して、いい選手になりたいから」と、あくまで視線を前に向けた。

 世界1位として、誰からも標的にされる今の立場で得る勝利は、たしかに相手が同じでも、異なる意味や価値を帯びるだろう。

 シンシナティ大会初のベスト4を目指す大坂は、過去の戦績1勝1敗、今季すでに2大会で優勝している急成長中のソフィア・ケニン(アメリカ)と対戦する。

Sportiva

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