鶴岡東が好投手を次々攻略。「庄内の暴れん坊」打線は多彩な打者が揃う

8月17日(土)6時57分 Sportiva

「フライアウトはダメなので、強いゴロを打とうと思っています」(山下陽生)

「甘いボールは1打席に1球あればいいほうなので、それを確実に強く仕留めることを考えています」(大井光来)

「あまり考えずにとにかく振る。来た球を打つという感じです」(丸山蓮)

 これは同一チームのクリーンアップが語った、打撃への考え方である。この言葉だけでもそれぞれのタイプの違い、幅の広さを感じてもらえるだろう。

 高校球界には強打のチームが数多く存在する。そのなかでも、鶴岡東(山形)ほど多種多彩な打者を揃えたチームは珍しいのではないか。


習志野戦で2打席連続本塁打を放った鶴岡東の丸山蓮
 今年6月、和歌山東のエース右腕・落合秀市が投げると聞いて、立正大グラウンドで行なわれた鶴岡東との練習試合を見る機会があった。

 落合は最速148キロを計測し、潜在能力の高さは超高校級の評価を受ける逸材である。

そんな落合に、鶴岡東は初回から猛打を浴びせた。無死満塁から4番・大井の鋭く振り抜いた打球はレフトスタンドへ。いきなりのグランドスラムで4点を奪うなど、落合が投げた7イニングで11安打、8得点を奪った。

 印象的だったのは1番から9番まで、とにかく強いスイングができることである。とくにクリーンアップは個性的だった。3番の山下は柔らかいバットコントロールで右へ左へ安打を量産し、4番の大井は確実性と長打力を併せ持ち、5番の丸山は粗も目立つがインパクトの爆発力は超高校級。さほど知名度はなくとも、間違いなく全国でも指折りの強打線だと確信した。私の脳内には「庄内の暴れん坊」のフレーズが躍っていた。

 そして今夏、鶴岡東は甲子園(全国高校野球選手権)で快進撃を見せている。初戦では好投手・香川卓摩を擁する高松商(香川)に6対4で勝利。さらに2回戦では春のセンバツ(選抜高校野球)で準優勝した習志野(千葉)を9対5で破った。

 習志野のエース右腕・飯塚脩人は初戦の沖縄尚学戦で6者連続三振、鶴岡東戦でも4者連続三振を奪うなど投球を見せていた。だが、鶴岡東は5番の丸山が2打席連続本塁打を放ち、飯塚を粉砕する。1本目はインコース高めの厳しいコースをレフトスタンドに運び、2本目はスライダーを叩いて風に乗ったとはいえライトスタンドに放り込んだ。丸山の「来た球を打つ」という言葉通り、研ぎ澄まされた反応が超人的な結果を生み出したとえそうだ。

 ただ、不思議な点もある。これだけの打線にもかかわらず、鶴岡東というチームからは「強打」を前面に押し出す気配がないことだ。メディアから伝わる鶴岡東の情報は「状況に応じたバッティング」や「鍛え抜かれた守備」といった要素が多い。もちろん、細部にわたり修練を積んでいることはわかるが、このチームから受ける最大の衝撃は「振りの強さ」のはずだ。

 もうひとつ特徴をあげると、打者の打ち方がバラバラだということ。強打線のチームは良くも悪くも同じような打撃フォームの選手が並ぶことが多い。だが、鶴岡東の打者はバリエーションに富んでいる。山下はまるで釣り人のように、へその前でバットを垂らしてからトップへ引き上げる変則打法だし、丸山は足を高く上げてフルスイングする。

 佐藤俊監督に聞くと、「フォームは選手のやりたいように任せています」と言う。

「基本的なことは教えますが、インパクトやタイミングの部分はそれぞれの感性が大きいですから」

 変則打法の山下はもともと7番などの下位打線を打っていたが、今年3月に佐藤監督から「打ち方が硬いから、手を柔らかく使ったら?」というアドバイスを受け、打撃が開眼した経緯がある。ただし、佐藤監督は「最初は手の動きが小さくて、だんだんエスカレートして今の『一本釣り』みたいな動きになってしまったんですけど」と笑う。

 佐藤監督が選手の感性を生かす方針を取っているせいか、丸山や山下のように感覚肌の打者がのびのびと力を発揮している傾向がある。だが、なぜ鶴岡東の打者が力強くスイングできるのか、という答えはなかなか見つからない。

 ヒントを教えてくれたのは主砲の大井だった。大井は正捕手を務めていることもあって、パワーとクレバーさを併せ持つ好素材である。

「打つべき球を打ち、ボール球を振らないように仕上げてきているからじゃないでしょうか。普段の練習から実戦を意識して、低めを捨ててゾーンを上げているので(高めのボールを)迷わず振れるのだと思います」

 練習でどんなにフルスイングを磨いても、実戦になれば相手投手は打者に強く振らせまいとさまざまな手を弄(ろう)してくる。打者がストレートをフルスイングしようと待ち構えていても、ストライクゾーンからボールゾーンに逃げる変化球を見極められなければ、腰砕けの弱いスイングになってしまう。

 鶴岡東は「低めを捨てる」という約束事が徹底されているため、ボール球を見逃し、力強くスイングできるゾーンのみ振っている。だから、強烈なスイングばかりが目立つということだろう。ただバットを振り回すだけの大味な打線ではないのだ。

 チームとして初めて甲子園2勝を挙げ、3回戦は試合巧者の関東一(東東京)との対戦になる。関東一は谷幸之助、土屋大和の二枚看板を擁するが、とくに谷との対戦は勝敗のカギを握りそうだ。140キロ台中盤に達するキレのある速球への対応と、荒れ球ゆえのボール球の見極め。鶴岡東の日頃の取り組みが問われる、格好の相手である。

 この試合が、鶴岡東打線が全国区になるための分岐点になるかもしれない。

Sportiva

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