湘南スタイルはどうなる?疑惑に揺れるなか、らしさは失われていた

8月19日(月)5時57分 Sportiva

 J1第23節、湘南ベルマーレはサガン鳥栖をホームに迎え、2−3で敗れた。

 前半に2点のリードを許した湘南は、前半のうちに1点を返すと、後半12分に一度は同点に追いついた。だが、その後のチャンスを逃すうち、徐々に勢いが失われ、アディショナルタイムの95分、痛恨の決勝ゴールを許した。

 前節終了時点で11位の湘南は、J2降格危機に瀕する16位の鳥栖を相手に勝ち点を積み上げたかったが、逆に、鳥栖のJ1残留を後押しする貴重な勝ち点3を献上する結果となった。


監督の「パワハラ疑惑」に揺れるなか、鳥栖に2−3で敗れた湘南

 と、普通の試合なら、こんなレポートで済むところだろう。

 だが、残念ながら、湘南にとってこの試合は、長いリーグ戦のなかの単なる1試合ではなかった。試合が行なわれたShonan BMWスタジアム平塚には、いつも以上に多くの報道陣が集まっていたが、最大の興味は試合結果より他にあった。

 湘南を率いる曺貴裁(チョウ・キジェ)監督の”パワハラ疑惑”、である。

 今季就任8年目となった曺監督は、「湘南スタイル」として知られる現在の湘南のサッカーを作り上げた張本人である。曺監督の熱血指導によって潜在能力を引き出され、湘南で”覚醒”する選手も少なくなかった。

 しかも、曺監督のすごいところは、目指すサッカーの軸となる部分は保ったうえで、常にマイナーチェンジを繰り返していたことだ。つまり、引き出しの少ないサッカーの繰り返しで、選手がマンネリに陥ることがなかった。それこそが8年もの長きに渡り、ひとつのチームを率いながら、大きく成績を落とすことがなかった理由である。

 しかし、その一方で、選手に劇的な変化を促す激しい指導が、人によっては苦痛に感じ、チームを去らざるをえなくなった選手(あるいは、コーチングスタッフ)もいた、ということだろう。同じ行為であっても、受け取る側がどう感じるかが違う以上、パワハラか否かに白黒つけるのは難しい。選手やサポーターの反応を見ていると、曺監督に対して好意的なものが多いようだが、だから”白”、とは判断できないのが、この手の問題の難しいところだ。

 今夏、浦和レッズからの期限付き移籍で1年半ぶりに湘南に戻ってきたMF山田直輝は、「僕ら選手たちも(事の経緯を)よくわかっていない」と言い、「調査の結果を待つしかない」と繰り返していたが、まさにそのとおりだろう。

 とはいえ、調査を待つ間も、試合は続く。その間、湘南は指揮官不在の戦いを強いられることになる。

 もちろん、何かが大きく変わるわけではない。曺監督に代わってチームの指揮を執る高橋健二コーチも、「(鳥栖戦までの1週間の準備は)今までやってきた流れでやってきた。練習の熱は落とさず、インテンシティ高くやった」。選手に対しては、「我々のサッカーは、我々にしかできない。何も変えることはない。そこを突き詰めよう」と声をかけたという。

 選手も当然、気持ちは同じだ。

「湘南のサッカーは根づいていると思うので、それを信じてやるしかない」(DF大野和成)

「勝利という結果もそうだが、今までやってきたことを表現していくのが大事」(MF齊藤未月)

「曺さんが築き上げてきたサッカーを続けるしかない。違うサッカーをやったら、勝ち点を取れないチームになってしまう」(山田)

 しかしながら、かじ取り役がいなくなったとき、同じサッカーを同じレベルで続けることは、意外なほど難しい。それは歴史が証明している。

 たとえば、イビツァ・オシム監督が率いたジェフ千葉。「考えて走る」という言葉が有名になったが、ピッチの幅をいっぱいに使ってボールを動かし、生まれたスペースへ次々に選手が飛び出していく。そんなサッカーは、実にダイナミックで見応えがあった。リーグ戦では惜しくも優勝には手が届かなかったものの、ナビスコカップを制するなど、タイトルも手にしている。

 当然、オシム監督が日本代表監督就任によって退任が決まったあとも、スタイルの継続を目指した。後任に、息子のアマル・オシム監督が就いたことも、その目論見を物語る。

 しかし、オシム監督が築いたスタイルが崩壊するまでに、さほど時間は要さなかった。その後は次々に監督が入れ替わり、迷走状態を抜け出せず、現在に至っている。

 もちろん、風間八宏監督から鬼木達監督に引き継がれた川崎フロンターレや、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督から森保一監督に引き継がれたサンフレッチェ広島のように、スタイル継続の成功例がないわけではない。だが、どちらかと言えば、少数派だ。

 実際、曺監督不在での初戦となった鳥栖戦でも、どこか湘南らしい勢いが感じられなかった。結果論を承知で言えば、指揮官不在の影響は小さくなかった。

 高橋コーチは、「選手はやろうとするあまり、硬い感じがした」という前半を経て、「2点のビハインドを追いついたことは評価したい」と、前向きに語った。

 だが、同点に追いつき、そこから気落ちした相手に一気に畳みかけるのが、本来の湘南の強さである。2−2になったあともいくつかチャンスはあったものの、80分を過ぎたあたりからは、勝ち越せそうな雰囲気が失われていった。

 前半からイージーミスが目立ち、それが修正されないまま、後半まで続いた。いつもの湘南なら、相手のミスを見逃さずに攻め込むはずが、ミスにミスで応え、逆にピンチを招くような場面も多かった。山田は「(曺監督不在の初戦である)この試合で、自分たちがどれくらいやれるのか不安な気持ちがあった。それが(2失点した)前半、みんなの足を重くした要因ではないか」と話している。

 鳥栖の金明輝(キン・ミョンヒ)監督も「湘南は柱がいないなかで、(その相手に)負けるというのは……。勝って(曺監督への)リスペクトを示したかった」と話していたが、ピッチ上に漂う、湘南らしからぬ雰囲気を敏感に悟っていたのではないだろうか。

 今回のパワハラ疑惑は、もはや湘南だけで解決できる問題ではなくなかった。繰り返しになるが、Jリーグの調査結果を待つしかない。

 だが、湘南としては、やはり、曺監督がチームを離れる事態は避けたいというのが本音だろう。指揮官抜きでの湘南スタイル継続は、おそらく簡単な作業ではない。

Sportiva

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