ヒュンダイ所属のWRCドライバー、ヌービルがTCR初挑戦でポール・トゥ・ウィン。レコードも更新

2019年8月20日(火)14時28分 AUTOSPORT web

 ADAC TCRジャーマニー(ドイツ・シリーズ)第5戦が8月17〜18日にニュルブルクリンクで開催され、ゲスト参戦を果たしたWRC世界ラリー選手権のスター、ティエリー・ヌービルが、初のTCR挑戦ながら非凡な才能を披露。レコード更新でのポールポジション獲得から完璧な走りでデビューウインを飾ってみせた。


 TCRドイツを主戦場とする古豪リキモリ・チーム・エングストラーは、ヒュンダイ・モータースポーツとの共同施策として、2019年は1戦ごとにゲストドライバーを搭乗させる“VIPカー”を用意している。


 ここまではTCR UKや2019年はヨーロッパ・シリーズにも出場する女性ドライバー、ジェシカ・バックマン(第2戦)や、WTCR世界ツーリングカー・カップ初代チャンピオンで、そのヒュンダイi30 N TCRの開発ドライバーでもあるガブリエル・タルキーニ(第3戦)らがステアリングを握ってきた。


 そしてこのニュル大会では、ヒュンダイのワークスドライバーとしてWRCを戦い、第9戦終了時点でランキング3位につけるヌービルが初参戦した。ヌービルにとっては、これがナショナル選手権レベルのサーキットレース初挑戦となった。


「今週末はガブリエル・タルキーニも来てくれて、ドライビング指導からデータ分析などを手伝ってくれた」と、イタリア人王者のサポートを頼りにするベルギー出身のヌービル。


「おかげで金曜の朝から良いセットアップを見つけることができた。トリッキーなコーナーでいくつか異なることを試して、さらにスピードを上げてよりタイムを稼げるようにしたい。つねに成功するわけじゃないけど、少なくともどこで稼ぐべきかを理解するのに、ツーリングカー・チャンピオンの言葉はとても役立つよ」


 このイベントを前にスパ・フランコルシャンで1日、木曜のプレ走行枠で1日の、計2日間だけの走行機会で本戦に臨んだヌービルだが、好みのセットができたという発言どおり、金曜2回のプラクティスから全体トップタイムをマーク。その速さで関係者を騒然とさせると、土曜午前の予選では「(Q2進出のカットラインとなる)上位12台までに入りたい」との目標が控えめすぎるほどのスピードを披露する。


 Q1で悠々トップタイムを記録してQ2に進出したヌービルは、その最初のアタックで自らのタイムをさらに縮める1分33秒808のラップタイムを記録。ポールポジションを確実にしたばかりか、これまでのレコードホルダーであるマイク・ハルダー(FK8ホンダ・シビック・タイプR)の1分34秒263を大幅に更新する、新レコード樹立となった。

ティエリー・ヌービルのサポートに訪れたWTCR王者のガブリエル・タルキーニ(右)
「スタートが不安」との言葉もなんのその、見事にホールショットを奪ったヌービルがレースを完全に支配
R1の4周目にはパイロ・モータースポーツのFK8ホンダ・シビック・タイプRが出火。SC出動の引き金となる


「(ポールのラップには)とても満足しているけど、最後のアタックが満足にできなかったことに失望した。充分にアグレッシブとは言えず、コンマ2秒ほど失っている」と、さらなるタイム更新が可能だったとヌービル。


「実際、2度目のアタックに向かう際、僕のミスでピットレーンリミッターを切り忘れて数コーナー行ってしまったんだ(笑)。WRカーのドライビングとはまったく異なるね。当然4輪駆動でなく、タイヤのサイドウォールもずっと柔らかい。ステアリングを通じてのフィードバックは全然違っている。それにこんなに広い道を走ることも滅多にないしね」


「とくにスピードとリヤのスライド量には神経を使って、注意を払う必要がある。TCRツーリングカーは(駆動していない分)リヤの動きがすごくナーバスなんだ。だから、マシンのスライド量とアングルを適切にコントロールする必要がある。その点、ラリーの経験が役に立っているけど、要は速度の管理だけ。本当にその1点に尽きるよ」


 そのまま土曜午後に迎えたレース1は、「スタートを決められるか心配」と語っていたヌービルが絶妙なトラクションでホールショットを決めると、危なげなく首位をキープ。後方では1コーナーシケインで多重クラッシュが発生し、ハルダーや現王者のハラルド・プロチェク(ヒュンダイi30 N TCR)らが絡み、後方に下がったこともヌービルに味方した。


 さらに4周目のバックストレッチではブラッドリー・バーンズ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)のマシンから火が上がるアクシデントでセーフティカー(SC)が導入され、ヌービルのリードが帳消しとなる事態に。しかしSC明けリスタートも落ち着いた動きで堂々トップランを維持すると、そのまま19周のレースを走破してトップチェッカー。初参戦のTCR規定ツーリングカーで完璧なポール・トゥ・ウインを飾った。


「ただ、可能な限り速く走ることだけに集中した。これも良いセットアップを見つけてくれたガブリエルのおかげだ。マシンは一貫してペースがあり、最後までバランスは素晴らしかった」と、満足げな表情でデビュー戦を振り返ったヌービル。


 ゲスト参戦ステータスのため、ヌービルは選手権ポイント対象外となり、2位表彰台に上がったチームメイトのマックス・ヘッセ(ヒュンダイi30 N TCR)が最大得点を手にしている。


 続く日曜のレース2に向けては「(リバースグリッドにより)ミッドフィールドからのスタートになるし、今日とは全然違う筋書きになるだろうね。僕の背後では1コーナーで派手なクラッシュも起きていたようだし」とヌービルが予測していたとおり、波乱の展開に。


 その要因はアクシデントではなく天候で、予報どおり決勝を前に雨が落ち始めたニュルブルクリンクは、スタート後間もなくして視界が奪われるほどの豪雨となり、9周時点でやむなく赤旗中断からレース終了に。この結果、6周時点で首位に立っていたヘッセが前日に続く最多ポイントを獲得。ヌービルはグリッドからひとつポジションを上げた6位で週末を終えている。

SC明けのリスタートも決めたヌービルは「最後の5周でタイヤがタレ始めたけど、抜かれる不安はなかった」
「2位のマックス(ヘッセ)はチームメイトだし、最大ポイントを手にすることも理解していたんだろう」と、謙遜する勝者ヌービル
そのマックス・ヘッセは豪雨のR2で序盤からスルスルとポジションを上げ、週末最大ポイントを荒稼ぎした


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