トヨタがWRCチャレンジプログラムの“2期生”を募集。長期的なWRC活動に強くコミットか

2021年8月20日(金)7時30分 AUTOSPORT web

 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は8月9日、WRC世界ラリー選手権で世界を相手に戦える日本人若手ドライバーの発掘と育成を目的に、『TGR WRCチャレンジプログラム』の育成ドライバーを新たに募集すると発表した。


 同プログラムは2015年にスタート。勝田貴元はその“1期生”にあたる。勝田はフィンランドやイタリアの国内選手権、WRC2などで経験を積み、セレクションを勝ち抜いて、2019年第10戦ドイツにおいてトヨタ・ヤリスWRCを初めてWRCでドライブ。


 2020年からはすべてヤリスWRCでのエントリーで、2020年は全7戦中5戦に出場。今季は全戦に出場予定で、6月下旬の第6戦サファリ(ケニア)では2位に入り、自身初の表彰台フィニッシュを果たした。また、WRカーで出場するドライバーのなかで唯一、開幕戦から第6戦まで4位以上のフィニッシュを続けるなど、安定感も着実に増してきている。


 TGRワールドラリーチームのレギュラードライバー昇格も現実味を帯びてきており、同プログラムが当初の狙いどおりに機能していると言えるだろう。そして、勝田に続く次期若手育成ドライバーを募集するということは、トヨタがWRC活動を長期的に継続していくということへの強いコミットメントの表れであると考えるのが妥当だ。


 WRCでは来季から『ラリー1規定』が導入される。この規定下で2022年から少なくとも3シーズンは参戦するという確約を現在フルエントリー中のマニュファクチャラー3社からFIAは得ていると言われる。


 恐縮ながら勝田を同プログラムのベンチマークとして考えると、現在のレベルに到達するまで約6年。もちろん次のドライバーの資質と成長次第だが、仮に同様だとすれば、2022年から6年間のコミットとなる。

勝田が初めてヤリスWRCを本番でドライブしたのは2019年フィンランド選手権のイタラリー(スノー)。続くリーヒマキラリーにもヤリスWRCで出場。リーヒマキにはヒュンダイ育成ドライバーのヤリ・フッツネンもi20 WRCで出場していたが、勝田が競り勝った。


 さまざまなシチュエーションで走るラリーというカテゴリーでは経験を積むことがとくに重要で、ドライバーの育成には時間と費用がかかるのが普通だ。そうしたこともすべてクリアしたうえでの“2期生”募集。トヨタはフィンランドに新しいファクトリーを設けた。動きは一貫してWRC活動強化の姿勢を示している。


 応募の資格や締め切り、選考プロセスなど詳しくはTGR公式ホームページで確認していただきたいが、注目すべきはスケール、クオリティとも前回の選考からさらにレベルアップしていること。


 候補生は、『オンライン書類選考』となる一次選考で約20人に、二次選考『GRヤリス ドライビングテスト・面談』で最大10人に絞られる。その最大10人を最終選考『トレーニングキャンプ』のロケーションであるフィンランドに連れていくというのだ。


 そして、フィンランド現地での指導には、WRC通算15勝のミッコ・ヒルボネン(チーフ講師)、ヤリスWRC/ラリー1開発ドライバーのユホ・ハンニネンら3人が当たる。


 ラリーでは、世界王者9度のセバスチャン・ローブ、同7度のセバスチャン・オジエを輩出したFFSA(フランス自動車スポーツ連盟)の育成プログラムがよく知られているが、トヨタはこれに比肩するようなプログラムに育て上げていくという強い意志も感じられる内容だ。


 先の東京五輪を見てもお分かりのように、世界のトップレベルで活躍できる日本人アスリートが次々と現れてきている。ラリー界においても、トヨタの長期的なコミットメントがこれに続く流れを加速させることは間違いなさそうだ。


※この記事は本誌『オートスポーツ』No.1558(2021年8月20日発売号)からの転載です。

勝田は2017年第7戦サルディニアでWRC2クラス初の表彰台フィニッシュとなる3位に入賞。2018年第2戦スウェーデンではWRC2クラス初優勝を挙げ、2019年には第6戦チリ(写真)で再びWRC2クラスを制するなど、WRC2カテゴリーでしっかり結果を残してきた。
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