森保監督が「東京五輪世代」に求める3つの能力。A代表にも通じる日本が抱えた積年の課題

8月20日(月)12時13分 フットボールチャンネル

悔やまれる試合開始直後の失点

 森保一監督率いるU-21日本代表は19日、アジア競技大会のグループリーグ第3戦でベトナムに0-1の敗戦を喫した。スコア以上に力の差を感じる試合展開の中で、指揮官は選手たちにどのようなメッセージを伝え、期待していたのか。逆転勝利とはならなかったが、敗戦からA代表との兼任監督が日本の若手たちに求めている能力も見えてきた。(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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 試合が始まる前、スタジアムの中で警備にあたっていたインドネシアの軍人に話しかけられ、「今日の試合はベトナムと日本、どちらが勝つか」と問われた。こちらとしてはもちろん「日本」と答える。

 すると彼らも「俺たちも日本だと思う。グッドチームだな!」と笑顔で応じた。だが、現実は甘くなかった。ベトナムは前評判通りの実力を備えた、日本以上の「グッドチーム」だった。アジアでも同世代なら「ベストチーム」に近いかもしれない。

 19日に行われたアジア競技大会のグループリーグ第3戦で、U-21日本代表はU-23ベトナム代表に敗れた。開始早々の2分にゴールを奪われると、取り返すことができずに完封負け。両者ともに決勝トーナメント進出を決めた状態での試合だったが、この結果によりベトナムは首位で、日本は2位で次のステップへと進むことになった。

 ベトナムは1月のAFC U-23選手権でアジアの準優勝に輝いたチームがベースで、今大会はオーバーエイジの選手も起用している。とはいえスタメンの約半数は1997年以降生まれの、いわゆる「東京五輪世代」。日本とさほど条件が違うわけではなかった。

 序盤から積極的にプレスをかけてくることも予想していた。それでも2分、GKオビ・パウエル・オビンナからMF神谷優太へのパスを狙われ、ショートカウンターで一気にゴールを陥れられた。オビは「後ろからつないでかわしていこうとしていた。でも、あの場面はやはり大きく蹴るべきでした」と自らの判断を悔やんでいた。

森保監督が訴えた戦う姿勢の必要性

 前半だけでもベトナムに数多く決定機を作られた。日本は流れの中からシュートに持ち込める場面がほとんどなく、セットプレーが数少ない希望になっていた。前半のスタッツを見ると、ベトナムのシュートが10本なのに対し、日本はわずかに1本だった。

 日本を率いる森保一監督は「(試合の)入りのところで相手に我々のミスから得点を与えて勢いづかせ、苦しい、難しい展開になった」と振り返り、「前半は球際で優位に立てなかった」と甘さを悔やんだ。

 もちろんハーフタイムで修正を加えた。日本は神谷と三苫薫を下げ、松本泰志と岩崎悠人を投入。システムも3-4-2-1から4-4-2に変えて、3バックのベトナムに対してミスマッチを作りながら反撃に出ようとした。この采配によってベトナムのカウンターを食らう回数は減り、ボールポゼッションも安定したが、結果的にゴールまでは結びつかなかった。

「相手のディフェンスに弾かれたボールとか、相手がシンプルに攻めてくる中で、クリアしたボールを拾われてそのままカウンターをいう局面が多かったと思う。そういったところの押し上げとか、ルーズボールをどう拾っていくかの予測とポジショニングということは、ハーフタイムに伝えました」

 森保監督はボールを失った後、相手にフリーで前を向かせてしまう場面の多さを危惧して選手たちに「球際」の重要性を改めて説いた。劣勢の45分間を終えたロッカールームでは「勝負にこだわっていくところ、球際のところで気持ちを見せてやっていこうということ」を強く訴えかけたという。

日本が抱える積年の課題、それは…

 ビハインドを背負い、逆転を目指さなければならない状況下で、森保監督からの指示は具体性に欠き、甘いとも捉えられる。ただ、彼なりに「東京五輪世代」の選手たちに伸ばしてほしい能力があり、成長を促すための働きかけとして、あえて抽象的なメッセージを伝えている側面もある。

 それはA代表でも積年の課題になっている、ピッチ上での臨機応変な状況判断、課題解決能力だ。監督から与えられた指示を忠実に実行する力には長けているが、想定外のアクシデントが起きた時に適切な対応をとれない傾向にある日本の選手たちを変えようと、森保監督は若い選手たちにあえてトライさせている。もちろん彼らが将来的にA代表に上がっていく力があるかを見極める上での、判断材料にもなるだろう。

「チームのコンセプトはもちろんありますけど、サッカーはピッチに立っている選手が、相手と駆け引きをしながら戦っていく、上回っていくスポーツだと思います。そういう意味では選手が持っている発想やイメージなどを生かしてあげたいと思いますし、(指示を)与えられるだけではなくて、ピッチ内で修正能力、問題解決能力を養っていってもらえるように働きかけていかなければいけない」

 特に前半はベトナムが前線からプレッシャーをかけてくる中で、無理に短いパスをつなぐリスクを冒してしまったことが失点に繋がった。その後も、度々カウンターを受けたが、その起点をどう潰すか、相手にどうやってボールを渡さないようにするかといった問題を解決することができなかった。

 結果的には森保監督が与えた「4-4-2へのシステム変更」という策によって、ベトナムに再三突かれていたウィングバックの背後のスペースを埋めてカウンターを防ぎながら、システムのミスマッチを利用したポゼッションを確立することができた。

次なる相手は韓国を倒したマレーシア

 ただ、結果が伴わなかった。いくつもの判断ミスに起因する失点と、長時間の劣勢が響いたか、ゴールを奪うまでには至らず。森保監督も、ベトナム戦で選手たちが見せたパフォーマンスには満足していないだろう。

「システム的に変えたから、スムーズにいったところはもちろんあるかもしれないですけど、サッカーはやはりゴールを奪い合うスポーツの前に、ボールを奪い合うスポーツであるということ。球際の部分で前半は相手に上回られたところがあった。後半は球際の部分でも選手の勇気や、絶対に球際に勝つんだという気迫というところ、ルーズボールに対しての予測のギアが上がったかなと思っています。

(日本にも)技術的には持っている選手達が多いと思うので、もう一度ベースの部分のボールを奪い合うというところ、球際の部分があって、技術が活きてくるということは、選手たちが次に向けて今日の試合から学んでいく部分だと思います」

 ピッチ上で選手たちが自発的にコミュニケーションを取って問題を解決する判断力、ボールを相手にいい形で渡さないよう球際で戦う勇気、そしてもう1つ、森保監督が今だからこそ選手たちに求める能力がある。

「(失点は直接関わった)彼らだけの責任ではないですし、チームの責任だと思います。今日の試合は彼ら2人(神谷と三苫)を変えたかもしれないですけど、今後も全ての選手がずっと競争の中にいる。うまくいかなかった後とか、悔しい、歯がゆい思いをした後に、どういうリバウンドメンタリティを見せてくれるかが、ある意味今の若い選手にとって、まだまだ伸びしろがあると思いますし、成長しなければいけないところで。もうひと踏ん張り、メンタルを切り替えていって欲しいです。そこは指導者としても必要な働きかけをしていきたいと思います」

 次は決勝トーナメント1回戦のマレーシア戦。グループリーグで優勝候補筆頭の韓国を破った、勢いのある強敵だ。ベトナム戦とは違い、勝ち進むために負けは許されない。これまで以上に厳しい戦いが予想される中、東京五輪世代の日本の選手たちはどのように敗戦から立ち直り、どんなコミュニケーションを取って試合に臨み、ピッチ内での予測不可能な状況に対応していくのか。

 森保監督は「アジアなら常にベスト4に入らなければ世界とは戦えない」と常々口にしている。A代表にも繋がる課題を解決するためにも、マレーシア戦は日本の現在地を測る重要な一戦となる。そして、アジアの舞台でで突きつけられた課題を解決できなければ、選手たちにとってもA代表へのステップアップの道は開けてこない。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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