東京五輪世代から日本代表へ。森保兼任監督が「アジア」で見極める本当のポテンシャル

8月21日(火)12時20分 フットボールチャンネル

東京五輪世代が味わう「アジア」の厳しさ

 東京五輪を目指すU-21日本代表は、インドネシアでアジア競技大会に臨んでいる。無事にグループリーグ突破を決めたが、3試合とも簡単な戦いではなかった。アジアの厳しい環境のもとで、A代表との兼任になった森保一監督は、若い選手たちに何を求め、どのような適性を持った選手を探しているのだろうか。(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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 インドネシアで開催されているアジア競技大会は、「アジア」を実感するのにぴったりな場かもしれない。

 ワールドカップのような予選がないこの大会には、男子サッカーであればFIFAランキング32位のイランから201位のパキスタンまで、あらゆるレベルのチームが参戦してくる。グループリーグも各組ごとにレベルはまちまちで、普段なら味わえないような戦い方との出会いもある。

 例えば日本と同じグループには、ネパールやパキスタンが入っていた。ワールドカップ予選であれば対戦する機会のない、単純に見れば実力差は明らかなチームだったが、彼らは強豪と戦うための戦術を入念に準備して大会に臨んできた。

 グループリーグ初戦、日本はネパールの「6バック」に大いに苦しめられた。行徳浩二監督は、同じ日本人である森保一監督の戦術を熟知しており、その肝である両ウィングバックにマンツーマンマークをつけ、中央にも人数を増やして守ることで失点を最小限に抑えようとした。

 とにかく守備を第一に考えた戦い方に、森保ジャパンは打開策を見いだせないまま1-0というロースコアで勝利した。内容に乏しく、「大凡戦」と言って差し支えない展開になったことで、誰もが「もう1点欲しかった」と後悔を口にし、自分たちのやり方にこだわらない柔軟さの必要性を痛感した。

 グループリーグ第2戦、パキスタンも守備的な戦いで日本に対抗しようとした。しかし、この試合ではネパール戦を踏まえて改善を試みた日本の狙いがしっかりとハマり、序盤の約10分間で3ゴール。最終的には4-0という大差をつけた。

 得点の形も手数をかけて崩しきることを狙ってばかりいたネパール戦から一転、3バックの左右のストッパーからのロングボールや、高い位置でボールを奪って守備から攻撃への切り替えで効率的にゴールを奪うことができた。

 とはいえ、相手がさらなる失点を避けようと度々痛んでピッチに倒れこむなど、頻繁にプレーの流れを切ってきた後半に集中力を切らしてしまい、5点目、6点目と続くことはなかった。岩崎悠人も「チームとして勢いがなくなったのもありますし、試合が切れる時間帯が多くて、集中力が下がった」と後半の試合運びの拙さを悔やんでいた。

言い訳はいくらでもできるが…

 両チームともグループリーグ突破を決めた状態で臨んだベトナム戦。今度は「前から来るだろう」と予想していた相手に、序盤の2分でGKからのビルドアップのミスを突かれて失点。その後も1月にAFC U-23選手権で準優勝したベトナムに再三ゴールを脅かされ、前半はシュート数1対10と圧倒的な劣勢に立たされることとなった。

 後半は2人を代えて前線に岩崎、中盤に松本泰志を投入。システムも3-4-2-1から4-4-2に変え、相手の布陣とのミスマッチを作ることで徐々に流れを取り戻していった。だがゴールを奪うに至らず、0-1で敗れた。

 森保監督は「システムを変えたからスムーズにいったところはもちろんあるかもしれないですけど、サッカーはやはりゴールを奪い合うスポーツの前に、ボールを奪い合うスポーツであるということ。球際の部分で前半は相手に上まわられたところがあった」と語ったが、まさにその通り。

 特に前半はルーズボールの競り合いをことごとくベトナムに制され、そこからシンプルなカウンターを食らう場面が多々あった。そして消極的なクリアやパスミスを再びベトナムに拾われ、カウンターの連鎖が起こっていた。

 アジア大会のグループリーグで、日本の選手たちは「本当のアジア」を知ったことだろう。多種多様なチームカラーがあり、割り切って弱者の戦いに徹するチームもあれば、真っ向から日本の組織に穴を空けようとしてくるチームもある。その中で求められるのは、緊迫した状況下でも臨機応変に頭を切り替え、チームとして1枚の画を常に持ち続けることだ。

 今大会はピッチ外にも、結果に対する言い訳を考えられるシチュエーションはいくらでもある。Jリーグの試合を終えてから移動も含めて中2日でグループリーグ初戦に臨まなければならなかったこと、過密日程と練習会場のピッチ状態の影響で戦術練習が一度もできていないことなど、要素を挙げればきりがない。

 遠藤渓太は「これがこの大会で自分たちに与えられた環境だと思いますし、その中でやれることはみんなやっていると思う。このグラウンドでもしっかり準備するまで」と、日本では考えられないほど劣悪なピッチでの練習を終えて語った。

A代表へステップアップするために。森保監督が求めること

 グループリーグ初戦の前日練習では照明の明るさが足りず、ピッチにも凹凸がある状態で対人プレーを含むメニューを取りやめなければならなかった。ある日は練習場まで壮絶な渋滞をかきわけて片道1時間半ほどかけて向かわなければならないこともあった。会場の厚意で借りたグラウンドも、お世辞にもいい環境とは言えず、戦術的な要素を確認したのはわずか15分ほどだった。

 これほどタフな環境でも、勝つためにできることはすべてやるべきだ。そして、中1日で十分な練習時間を取れずとも、積極的なコミュニケーションではっきりと改善を示したグループリーグ第2戦のパキスタン戦のような前例もある。

 決勝トーナメントでは「負けて残念だけど、次に向けて改善します」は許されない。負けたらそこで終わり。「世界で戦うために、アジアでは常にベスト4に」という森保監督の最低限の目標も達成できない。

 そして、森保監督が東京五輪を目指すU-21代表と、誰しもが憧れるA代表の「兼任監督」になったことで開けたステップアップの道も、十分な結果がなければすぐに閉じてしまう。9月の親善試合は難しいにしても、それ以降でA代表にチャレンジさせる資格のある選手を、指揮官はアジア大会の中で見極めているはずだ。

 そこで今、選手たちに求められるのは、アジアのタフな環境においても思考の柔軟性を失わず、状況に応じた判断を下し、ピッチ上で勝つためのプレーとして表現できる能力。森保監督も「(解決策を)与えられるだけではなくて、ピッチ内で修正能力、問題解決能力を養っていってもらえるように働きかけていく」と語っていたが、現状で自発的にそれらの能力を十分に示せている選手はいない。

 決勝トーナメントの最初の相手はマレーシアに決まった。グループリーグで今大会の優勝候補筆頭と言われていた韓国を下した勢いのあるチームである。メンバーを大幅に入れ替えたグループリーグ最終戦ではバーレーンに2-3で敗れ、本当の実力を測りづらい側面もあるが、そこがまさに若き日本代表が越えるべき壁になるだろう。

 ピッチに立って蓋を開けて見なければ、どんな戦いをしてくるかわからないチーム。ベトナムのように前線からハイプレスで真っ向勝負を挑んでくるか、あるいは韓国戦のようにカウンターパンチを狙って耐える戦いを選んでくるか。戦況を即座に読み取り、チーム全体が正しい判断を下していけるかどうかが、決勝トーナメントで勝ち上がり、競争を勝ち抜いていけるかどうかの鍵になる。アジアは決して甘くない。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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