新加入の中島翔哉が躍動。功を奏した浦和指揮官の配置【ACL現地取材】

2023年8月23日(水)14時0分 FOOTBALL TRIBE

浦和レッズ MF中島翔哉 写真:Getty Images

2023/24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフステージが、8月22日に行われた。前回大会覇者の浦和レッズは、本拠地埼玉スタジアム2002で理文(ホンコン・チャイナ)と対戦。最終スコア3-0で勝利し、本大会グループステージ進出を決めている。


今夏に浦和に加入したMF中島翔哉が、[4-2-3-1]の布陣のトップ下として存在感を発揮。得点にも絡み、チームの勝利に大きく貢献した。


ここでは中島のプレーぶりを中心に理文戦を振り返るとともに、浦和のマチェイ・スコルジャ監督やMF小泉佳穂の会見コメントも紹介する。




浦和レッズvs理文、先発メンバー

ゴールを生んだ中島の守備


浦和の選手として初の先発出場を果たした中島は、守備時にFW興梠慎三と横並びに。[4-4-2]の守備隊形のファーストラインに配置された。


前半3分の浦和の先制ゴールは、中島の献身的な守備から生まれたもの。理文のDFホセ・アンヘル(センターバック)が自陣でボールを受けると、ここに中島がプレスをかける。アンヘルからMFイェン・ラフォンへのパスコースを中島が塞いだため、相手のパスをサイドへ誘導できた。


アンヘルからDF立花稜也(理文の左ウイングバック)へのパスを浦和MF大久保智明がカットし、ここからホームチームの速攻が始まる。中島と大久保のパス交換で敵陣右サイドを攻略すると、後者のペナルティエリア右隅からのクロスにMF小泉が反応。ゴールを挙げた。


前半5分にも中島が相手DFフェルナンド・レシオ(センターバック)にプレスをかけ、苦し紛れのロングパスを誘発。このボールを小泉が敵陣左サイドで回収したことで、浦和の波状攻撃が始まった。


この約1分後に中島とDF酒井宏樹が右サイドでパス交換を行い、後者がゴール前へクロスを送る。このボールに興梠がヘディングで合わせ、浦和に追加点をもたらした。




浦和レッズ マチェイ・スコルジャ監督 写真:Getty Images

辣腕を振るったスコルジャ監督


小泉、中島、MF安居海渡と、トップ下でプレー可能な選手が複数先発に名を連ねたなかで、スコルジャ監督は同ポジションに中島を選択。密集地帯でのボールキープを厭わない中島の守備の負担を減らし、極力攻め残りさせる戦法が功を奏した。


守備時の出足が鋭く、帰陣も素早い小泉を左サイドハーフに置いたこともプラスに作用。[4-4-2]の守備隊形が崩れなかった。


スコルジャ監督は試合後の質疑応答で、攻守両面において躍動した中島を称賛。小泉との好連係にも満足感を示している。


中島選手や小泉選手をはじめとするアタッカーの流動的なポジショニングが、前半の2得点に繋がったと思います。まずはアタッカー陣への評価をお訊きしたいです。また、中島選手を守備時にどこに置くかも、興味深く拝見していました。彼に与えた守備の役割と、これに関する監督の評価をお願いします。


「今日の中島のパフォーマンスを見て、うれしく感じました。今までより長い時間、チームに貢献できることが分かりました。特に(小泉)佳穂との連係が興味深かったです。得点の可能性がいろいろと生まれていたと思います。(中島)翔哉は我々の攻撃にパワーをもたらしてくれます。また、ボールをより高い位置でキープすることにも秀でている選手だと思います。守備面では前半と後半とでハイプレスのシステムを変えましたが、いずれにしても彼はセンターFWと2人でファーストラインをつくってプレスをかけていく役割を担いました」


浦和レッズ MF小泉佳穂 写真:Getty Images

際立った中島と小泉の好連係


5バックを敷いた理文の右センターバックと右ウイングバックの間に中島が立ち、両者を引きつける。これにより空く大外のレーンを小泉が突こうとする場面が度々見られ、この攻撃が理文の脅威に。当初[5-3-2]や[5-2-3]の布陣でのプレッシングを狙っていたアウェイチームは、[5-4-1]による撤退守備へ移行せざるを得なかった。


「中島翔哉選手は、味方と近い距離にいるほうがやりやすいタイプだと思っています。できるだけ近い距離感でプレーすることを心掛けました。そして、彼にどれだけいい状態でボールを渡せるかを意識しました」


試合後の会見に出席した小泉のコメントからも、中島への配慮が窺える。中島のトップ下、及び小泉の左サイドハーフ起用が機能したことは、スコルジャ監督にとって収穫と言えるだろう。




浦和レッズ FWブライアン・リンセン 写真:Getty Images

理文の布陣変更にも動じず


後半途中から[4-1-2-3]に布陣を変えた理文に攻め込まれる場面があったものの、スコルジャ監督のもとで磨き上げた撤退守備で追撃のゴールを許さず。時折繰り出すカウンターや、敵陣での落ち着いたボール保持で試合をコントロールした。


後半アディショナルタイムには、敵陣ペナルティエリア右隅を突いたFWブライアン・リンセンのクロスに、MF関根貴大が反応。途中出場の両選手も役割を果たし、試合の決着をつけた。


スコルジャ監督は試合後の会見で、後半の自軍の戦いぶりについて説明。過密日程や高温多湿のピッチコンディションを、より念頭に置いたうえでのスローダウンであったことを明かしている。


「2点目を取った後の状況で、(試合を)スローダウンさせることは悪いアイデアではなかったと思います。今、シーズンのどの時期に自分たちがいるのかを選手たちは分かっています。夏のブレイク後である自分たちのフィジカル的な状況も選手たちが把握しながら、このような展開になったと考えています。後半に入るとき、私はボールを長く保持するよう選手たちに指示を出しました。ボールをキープしながら相手を引き出し、走らせることによってスペースを増やすとともに、(相手を)疲れさせることを目指しました。その中でもチャンスを作ることはできていたと思います。ただ、立ち上がりにかなり高い量の(強度の高い)ハイプレスをかけましたので、それによる疲労を感じている選手もいました。ハーフタイムで2人交代させた理由もそこにあります」


豊富な手駒を最大限に活用できる手腕と、自軍の状況を的確に把握したうえでの戦略立案は、現在レアル・マドリードを率いているカルロ・アンチェロッティ監督を彷彿とさせる。今年5月に浦和をアジアの頂点に導いたポーランド人指揮官が、同クラブをさらなる高みへと導こうとしている。

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