首位フェラーリに挑んだコルベット、ブレーキ無交換で勝負に出るも「トリッキーだった」/ル・マン24時間

2021年8月24日(火)13時31分 AUTOSPORT web

 8月21〜22日にフランス、ル・マンのサルト・サーキットで行われた第89回ル・マン24時間レースのLMGTEプロクラスは、今年もミスが許されない接戦となった。


 終始同一ラップで展開されたトップ争いを制したのは、AFコルセの51号車フェラーリ488 GTE Evo(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/コム・レドガー)。中盤から2番手に立っていたコルベット・レーシングの63号車シボレー・コルベットC8.R(アントニオ・ガルシア/ジョーダン・テイラー/ニッキー・キャツバーグ)は、大きく引き離される場面こそなかったものの、最後まで51号車フェラーリ攻略の決め手を欠いた。


 最終的に41秒差の2位でフィニッシュした63号車コルベットのキャツバーグによれば、レース終盤、51号車とのギャップを埋めるため、チームは「すべてにトライした」という。


「僕らは、すべての手を尽くした」とキャツバーグはレース後、Sportscar365に対し語っている。


「僕らはブレーキ交換をしなかったので、ドライビングはトリッキーだった。僕らは4本のタイヤすべてで連続3スティント走行を何回か行った。彼ら(フェラーリ)は、それはしていなかったと思う」


「彼らは通常、左側2輪だ」


「僕らはギャップを埋めるため、本当にあらゆることを試みた。ときには近づくことがあったが、イエロー(FCY/スローゾーン)が再び2台を分断した」


「21秒おくれから、50秒おくれになってしまった。でも正直、僕らが以前のポジションにいたとしても、彼らはとても速かった」


「一方、僕らも悪いペースではなかった。夜の間は本当にいいペースだった。僕らは全力を尽くしたし、僕としては長い間ドライブを担当し、彼らと戦うことは本当にクールだった」


「2位は、素晴らしい結果だよ」

LMGTEプロクラス2位の表彰台に立つ、コルベット・レーシング63号車陣営


 キャツバーグはまた、51号車フェラーリがペースの面でアドバンテージを持っていたため、コルベット・レーシングは攻撃的な戦略をとったと考えている。


「彼らは序盤に勢いがあり、どういうわけか常に正しい戦略を選んでいた。僕らはいくつかのイエローでタイムをロスしたが、彼らにはそれがなかった」とキャツバーグは説明する。


「(直接)バトルをするのに充分な距離にいることはなかった。でも、最終的にはプレッシャーを与えられたような気はする」


 63号車コルベットは攻撃的な戦略の一環として、レース中にブレーキ交換作業を行わなかった。これはテイラーを含め、レース前からGTEプロクラスにおいて議論になっていた戦略だ。


「トリプルスティントの最後のパートでは、常にポンピングしなければならなかった」とキャツバーグ。


「ブレーキからノイズがするようになり、ペダルはどんどん深くなっていった。これで、少し自信を失うことになる。ブレーキのパフォーマンスも低下していく」


「それでも、ブレーキを交換するという選択よりは良かったし、少なくともそれが正しい判断であると感じていた」


「もし、レースをリードしている状況であれば、ブレーキを交換してレースに戻れば非常に快適になり、またペースを上げることができる」


「だけど、僕らは追いかける立場だった。そこで長い時間のピット作業をする余裕はなかったし、全力でギャップを詰めていかなければならなかった」


 とはいえキャツバーグは、C8.Rにとって初めてとなったル・マンでのマシンパフォーマンスには満足しているという。


「正直、このマシンにとっては初めてのル・マンだからね。ピットからコースに飛び出してすぐに調子がいいと感じたし、それは素晴らしいことだ」


「もちろん、細かい調整やセットアップ作業を行う必要があったけど、すぐにこの位置までくることができた。クルマには特に問題がなかったし、最後までトップを争ってフィニッシュすることができた」


「コルベットは、自分たちとそのクルマをとても誇りに思っていいと思う。またここに戻ってきたときには強くなっていると思うし、個人的には彼ら(コルベット)とともに戻ってきたいと思う」


■タイヤとブレーキの交換は「40〜45秒でできた」と優勝のフェラーリ


 一方、フェラーリのテクニカルディレクターであるフェルディナンド・カニッツォは、リードを犠牲にすることはなかったものの、5時間半を残したところで51号車のブレーキを交換するという決断の大部分は、必然であったと述べている。


「ブレーキを交換せずに、レースを終えられるかどうか分からなかった」とカニッツォはSportscar365に対し語っている。


「ブレーキを交換しないことは、その時点では非常に危険であると分かっていた」


「結局、我々はその作業をすることを余儀なくされた。ブレーキ交換の時間を最小限に抑えるため、チームは多くのトレーニングを積み重ねてきている」


「タイヤも含め、40〜45秒で交換できたと思う。メカニックは素晴らしい仕事をしてくれた」


「我々はブレーキを交換し、それでもレースをリードすることができ、コンサバティブなやり方でレースをフィニッシュすることができた」

LMGTEプロクラスを制したAFコルセの51号車フェラーリ488 GTE Evo


 カニッツォはまた、コルベットに対してさらに多くのギャップを獲得するために、スローゾーン(導入時のピット作業)を活用することができたと述べている。


「苦労なく10秒を稼ぐことができたので、それは間違いなくラッキーだった」と彼は言った。


「ピット作業は素晴らしかった。我々は28〜30秒のアドバンテージでピットアウトした。スローゾーンは我々に、さらに10秒のリードを与えたんだ」


 なお、92号車ポルシェ911 RSR-19がトップ2台から1ラップおくれの3位に入ったポルシェGTチームのオペレーション責任者、アレクサンダー・ステューリッヒは、ル・マンでフェラーリとコルベットのラップペースにかなわなかったことについて、「期待外れ」であったと表現している。


「システマチックによい準備を整えてきたにもかかわらず、我々はライバルに対するラップタイムのパフォーマンス、および最高速の面で、望んでいたレベルになかった」

LMGTEプロクラス3位に入った92号車ポルシェ911 RSR-19

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