不安だらけな日本代表の将来。マレーシアに辛勝も…アジア大会組のA代表昇格は困難

8月25日(土)11時13分 フットボールチャンネル

目標には一歩近づいたが…

 U-21日本代表は24日、アジア競技大会の決勝トーナメント1回戦でU-23マレーシア代表に1-0で勝利して準々決勝進出を果たした。終盤のPK弾でなんとか逃げ切ったが、マレーシアにいつゴールを奪われてもおかしくない状況が続いていた。森保一監督がA代表とU-21代表の兼任になったことで、“昇格”も現実的になる中、実際にその資格を得るのにふさわしい人材は現れているのだろうか。(取材・文:元川悦子【インドネシア】)

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「(0-1で敗れた20日の)ベトナム戦は入りのところで球際で相手に上回られて難しくなった。しかし今日の選手たちは最初から球際で激しくいき、タフにハードワークして、粘り強く戦って勝利したと思う」

 7月末からA代表の指揮官も兼務し始めたU-21日本代表の森保一監督が努めて前向きに語ったように、24日のアジア競技大会決勝トーナメント1回戦、マレーシア戦(1-0で勝利)に挑んだ若き日本は前戦の反省を踏まえ、序盤から積極的な入りを見せた。

 前田大然と岩崎悠人、旗手怜央の前線トリオが武器のスピードを前面に押し出し、背後を突く動きを披露。流れは悪くなかった。ただ、肝心の決定力を欠く。ボール保持率でもマレーシアを圧倒したものの、全体に各駅停車のパス回しが目立ち、攻めあぐねた印象も否めなかった。

 前半を0-0で折り返すと、グループリーグで韓国を撃破したマレーシアが底力を発揮。鋭いカウンターを仕掛けてきた。相手のシュートがクロスバーやゴールポストに阻まれる幸運も重なって何とか無失点で踏みとどまったが、75分から85分にかけての日本の混乱ぶりは明らか。いつマレーシアに飲み込まれてもおかしくなかった。試合終了間際に松本泰志のスルーパスを受けた途中出場のFW上田綺世がPKを奪うと、それを自ら決め、辛くもベスと8入りの道をこじ開けたが、内容的にはとても満足できるものではなかった。

 これで森保監督が大会前に掲げた「ベスト4以上」という目標に一歩近づいたのは確かだが、「A代表に昇格させられる選手を探す」というもう1つのテーマを考えると、収穫は乏しかったと言わざるを得ない。

 各ポジション毎に見ていくと、まずGKの小島亨介と、原輝綺、立田悠悟、板倉滉の3バックは最後のところで体を張り、相手を無得点に抑えたものの、安定感に欠ける場面が見て取れた。前線3人の速さを生かすようなフィードも少なく、「もう少しパス回しのテンポを上げたら相手も苦しくなったと思う」とA代表に最も近いところにいると言われる板倉も反省の弁を口にしていた。彼ら長身DF陣が「自分たちはやれるんだ」という気概と迫力を見せてくれれば、他のポジションよりA代表への昇格は早いはずだが、このマレーシア戦を見る限りではまだまだ物足りなく映った。

東京五輪世代のA代表への“昇格”が困難な現実

 長沼洋一と杉岡大暉の両アウトサイドも高い位置を取れたのは前半だけ。後半はマレーシア相手に5バック気味になる時間帯が長かった。ハードワークは間違いなくしていたが、攻守両面で有効な仕事ができていたかというと疑問が残る。

 渡辺晧太と松本の両ボランチにしても、前半こそタテへの意識が強かったものの、相手に押し込まれた後半は防戦一方。ラストの決勝点につながる松本のパス出しは救いとなったが、中盤を十分コントロールできたとは言い難い。このチームは以前から「ボランチの人材に難がある」という指摘もあったが、この日の彼らはその評価を覆す仕事はできていない。そこはやはり残念だった。

 そして前線3人も決定力という日本サッカー界の根深い問題を解決し切れなかった。先発した3人のうち、岩崎は前線からのアグレッシブなプレスと献身的な走りでチームを活性化し、勝負しようという姿勢を強く押し出すなど今後への希望を感じさせたが、ゴールを決めきれなかったのは事実。他の選手たちも工夫が足りなかった。「点を取れていないので、選手たちは高みを目指してやってほしい」と森保監督も注文をつけるしかなかったはずだ。

 ご存知の通り、今回のU-21日本代表はベストメンバーを招集できているわけではない。5月末のトゥーロン国際大会に招集した欧州組の冨安健洋や伊藤達哉(その後負傷により辞退)、オランダで実績をあげている堂安律はもちろんのこと、国内組の中山雄太や小川航基も参加していない。

 今年10月にAFC U-19選手権を控える安部裕葵や郷家友太らJリーグで試合に出ているU-19世代のメンバーも不在。「この世代でコアなグループに入ってきそうな選手はまだ他にいる」と森保監督も戦力不足を認めていた。

 加えて、インドネシアの劣悪なピッチ環境や大会の過密日程、アジア諸国の急激なレベルアップなど、苦戦の材料を挙げればいくつもある。それを差し引いても、今回チャンスを与えられた面々はもっと自分の強みや長所を泥臭く出さなければいけない。

 仮にチームとしてベスト4入りという結果を残せたとしても、今のままでは「近い将来のA代表昇格組はゼロ」ということになりかねない。「自分たちがロシアワールドカップ組を追い落としてやるんだ」という強いメンタリティを見せるような人間が出てこないと先行きは本当に厳しいのだ。

次なる相手はサウジ。これまで以上にタフな戦いに

 フィリップ・トルシエ監督が率いていたシドニー五輪世代の頃は「アジアの五輪出場3枠を日本が全て取れる」と言われるほど選手層が厚かった。中盤を例に挙げても、中田英寿中村俊輔小野伸二がいなくても、小笠原満男遠藤保仁がいて十分に戦える状況だった。だからこそ、世代交代は順調に進んだのだ。

 森保監督がコーチを務めていた2007年のU-20ワールドカップ組の「調子乗り世代」を見ても、香川真司や森重真人が控えに回るほど個性豊かな人材が揃っていた。槙野智章、柏木陽介らを含め、彼らは「自分を出す」という意識が鮮明だった。

 森保監督も「槙野たちの世代はチームのために戦うんだけど、より自分のプレーやキャラクターを出す姿勢があった。今の選手の方が少し大人しいのかなというのはある」と神妙な面持ちで語っていた。そのうえで指揮官は「今は技術的にはみんな高いからこそ、タフに粘り強くっていうところはもっと培っていかないといけない」と今回のメンバーに要求を出した。そういう選手が次々と出てきて初めて、アジア大会で勝ち進む意味があるのだ。

 中2日で迎える27日の準々決勝サウジアラビア戦では違った印象を残してほしいもの。「サウジもU-21代表だと聞いている。2年前のAFC U-19選手権決勝でやっている相手なので、負けたくないし、相手もリベンジしたいという気持ちで来ると思う。入りや勢いで劣らないように、自分たちが戦う姿勢をしっかりと持ってやっていきたい」とユース年代でアジア制覇を経験している岩崎も闘争心を新たにしていたが、ここでインパクトを残す人間が何人か現れれば、今回の日本の評価も劇的に変わるかもしれない。

 アジアでのベスト4入り、そしてA代表昇格という2つの目標をクリアすべく、選手たちにはこれまでにないほど奮起してもらいたい。

(取材・文:元川悦子【インドネシア】)

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