38番手から挽回し5位入賞の勝田貴元、ラリージャパンも見据えたアプローチで「自分自身の改善ができた」

2022年8月26日(金)12時12分 AUTOSPORT web

 2021年はマシンが大破するクラッシュを喫しリタイアとなったイープル・ラリー・ベルギーで、今年は車両トラブルに見舞われ一時は総合38番手まで順位を下げながらも、最終的に総合5位入賞を果たした勝田貴元。開幕戦からここまでの全ラウンドでトップ10フィニッシュを達成している彼がラリー後、オンラインで行われた合同取材に応じ、8月19〜21日にベルギーで行われたWRC世界ラリー選手権第9戦を振りかえった。


 TOYOTA GAZOO Racing WRTネクストジェネレーションからWRCにフル参戦し、アーロン・ジョンストンとのペアで『トヨタGRヤリス・ラリー1』をドライブしている勝田は、今シーズン2度目のターマック(舗装路)戦に対し、シェイクダウンの段階では「ラリーに対する自信という意味で、うまく合わせきれていない」状態だったという。ゆえにその部分の克服、ラリージャパンや次回のターマック戦であるスペインでの戦いを視野に入れ、ターマックでのパフォーマンスを上げていくことを今戦の目標に設定していた。


 不安があるなかで迎えた競技初日の金曜、勝田はオープニングステージのジャンクションでオーバーシュートしてしまいタイムを失った。また、SS2もリズムに乗り切れず上位陣とのタイム差が大きくなってしまう。そこに追い打ちをかけるようにミッショントラブルが勝田/ジョンストン組を襲った。


■初めてのミッショントラブルにも冷静に対応「焦りはなかった」


 SS3の終盤に起きた問題によってマシンは一度ストップ。勝田は残り約200mをEVモードで走行してこのステージをフィニッシュしたが、1分30秒ほどのタイムロスとなった。その後のSS4はギアが3速でスタックした状態での走行となったため、同ステージでは2分以上おくれ順位は総合38番手まで下がってしまった。


 駆動系トラブルに見舞われながらもリタイアにならなかったのは、「不幸中の幸いだったかなと思っています」と勝田。彼はこのときの心境を次のように語った。


「序盤の1本目、2本目から自分の方があまり乗れていないというか、行き過ぎたり行き過ぎなかったりとそんな状況で、四苦八苦しながらいろいろとトライして合わせこんでいる最中に、なんとなくSS3で『こんな感じかな』とフィーリングが掴めてきたという段階でのトラブルでした」


「悔しいというよりはまず、何が起きているかわからない状況でしたね。今年一年を通してもギアボックスのトラブルはなかったですし、突然起きたようなかたちだったので、すごくびっくりしたという感じでした。ただ、そこでも冷静に対応できたので焦りはなかったです」


 SS4とSS5の間に設定された日中のサービスで問題を解決した勝田/ジョンソン組は、雨の予報が出ていた午後に向けて、レインタイヤ4本とソフト・スリックを2本用意して残る4本のSSに向かった。


 しかし肝心の雨は落ちてこず、このタイヤ戦略は裏目に。レインコンディションでタイムを稼ぐはずが、反対にロスしてしまう結果となった。最終的に勝田組はデイ1を総合18番手で終えている。


「(1日の間に)いろいろとありながらも、今回(のラリー)に対するアプローチだったり、そのあたりをしっかりと自分の頭にも叩き込み、『自分がなんのためにイープルを走るか』『どういった目的を持ってやるか』という、そういった目的意識をしっかりと持ってラリー自体に入ってこられました。なので、そこでいろいろなことが起きてもとくに焦りはなく、自分の仕事に集中して何が起きてもスムーズに対応できていたと思っています」と波乱の立ち上がりとなった初日について述べた勝田。


「トラブルがなかったというか、ラリー・フィンランドなど自分がプッシュしたいところで思うようにいかないときのほうが、どちらかというとストレスが溜まります。『なにをどういう風に持っていこう』という悩みがあったので」


「ですが、今回はどちらかというと自分の走りを改善するというところ、クルマもそうでしたけど、とにかく(最初の段階から)向上させていくしかない状況だったので、そういったアプローチがうまく活きたのかなと思っています」

勝田貴元(左)、豊田章男社長(中央)、アーロン・ジョンストン(右) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー


■2日目以降はハイブリッドが正常に作動しないトラブルが発生


 初日に順位を失っていることから、引き続きクルマの理解を深め自信を高めることにフォーカスを置いて臨んだ競技2日目では、ところどころでハイブリッドシステムが作動しない問題に見舞われた。


 それはデイ2の午後に向けて交換したユニットでも発生。正常にブーストが効く場合は好ペースで走れていたが、高速ストレート同士を直角のジャンクションでつなぐイープルのステージ特性上ハイブリッドの効果は大きく、ブーストを失った状態でのタイムロスは決して少なくなかったと勝田は見ている。


「今年のクルマのハイブリッドの特性でいうと、(イープルは)しっかりとブレーキによる回生ができて、立ち上がりでブーストを使える区間が他のラリーに比べて多かったと思うので、(ハイブリッドが)使えないとなるとロスは非常に大きかったと思います」


「例えで言うと、パワーステージ(最終SS20)でも1回使えなかった部分があるのですが、おそらくトラブルかなにかで使えるはずの場所でブーストを使うことができず、その1区間だけで軽く1秒ロスしています」


「ひとつのストレートだけでそれだけロスするということは、(SSの全区間で使えなければ)基本的に多くの場所でロスしているはずです。“何kmのステージでどのくらい”と言うのはステージのコーナーの数などで違ってくるため、なんとも言えないですが、間違いなくグラベルラリーとかスウェーデンのようなラリーと比べると大きなロスがあったと思っています」


 そんな状態にありながらも、勝田は2日目午前のSS10までにトップ10圏内の総合9番手に復帰。続くSS11で7番手にポジションを上げると、1日の最後にはライバルの離脱によって6番手となった。


 最終日のデイ3にも順位をひとつ上げ最終的に総合5位に。前述のとおり1度ブーストが使えなかったパワーステージではステージ5番手タイムを記録し、ボーナスの1ポイントも獲得してみせた勝田は今戦について次のように総括している。


「本当に金曜はどうなることかと思ったのですけど、最終的には総合5位でポイントをしっかりと取れて、ターマックのフィーリングもいい感じでつかむことができました」


「次戦のグリース(アクロポリス・ラリー・ギリシャ)はグラベル(未舗装路)ラリーですけど、その後に控えているスペインに向けていいテストというか、自分自身の改善ができたんじゃないかなと感じています」

勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー
総合5位でWRC第9戦イープル・ラリー・ベルギーを終えた勝田貴元。WRCの最高峰クラスで開幕から全戦でトップ10フィニッシュを果たしているのは彼のみとなった

AUTOSPORT web

「ベルギー」をもっと詳しく

「ベルギー」のニュース

「ベルギー」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ