【気になる一言】幼少期のヒーローを失ったハミルトン「このポールポジションをチャドウィックに捧げる」

2020年8月30日(日)18時23分 AUTOSPORT web

 2020年第7戦F1ベルギーGPで通算93回目のポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)は、インラップ中に「よくやった」というエンジニアからの無線に、天を指差し、こう答えた。


「このポールポジションをチャドウィックに捧げる。安らかにお眠りください」


 この日、マーベルの映画『ブラックパンサー』などで知られる俳優のチャドウィック・ボーズマンが8月28日に、43歳の若さで大腸がんで亡くなったことが明らかになっていた。ハミルトンのメッセージはボーズマンへ哀悼の意を込めたものだった。


 予選直後にパルクフェルメ脇で行われた会見でも、ハミルトンは喜びを爆発させることはなかった。


「今日は僕にとって、とても重要な1日だった。朝起きたら、悲しいニュースが飛び込んできたからだ。それはチャドウィックが亡くなったというニュースだ。これは僕だけでなく、多くの人たちにとっても辛いニュースだったと思う」


「だから今日はサーキットに来てから、集中するのが本当に大変だった。ずっと心ここにあらずという感じだった。でも、思ったんだ。彼(ボーズマン)が演じたスーパーヒーローは、僕も含めて、多くの子供たちに勇気と希望を与えてくれた。だから、僕は今日、完璧な走りをしなければならないと。彼は僕たちの希望の星だった。ワカンダ・フォーエバー!!」


 ワカンダ・フォーエバーとは、ボーズマンが主演を務めた映画ブラックパンサーで、ボーズマン演じるアフリカの架空の国家『ワカンダ』に戻った若き国王、ティ・チャラが、勝利後に両腕をクロスさせて叫ぶ映画の決めゼリフだ。


 ハミルトンがポールポジションを獲得し、パルクフェルメに戻ってきてコクピットを降りた後、マシンの上で両腕をクロスさせたのも、ボーズマンが演じたワカンダ・フォーエバーのポーズだった。

2020年F1第7戦ベルギーGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)


「僕はチャドウィックと個人的な交友関係はなかったけれど、昨年か一昨年にニューヨークのファッションウィーク期間中に、同じディナー会場にいたことあった。その後のガラ・パーティも一緒だった。そこで僕は彼と話す機会があった。彼はハリウッド映画で最初の黒人のヒーローで、子供のころ、スーパーマンになりたいと思っていた僕にとって彼はヒーローだった」


「いまの黒人の若者にとって、尊敬できるスーパーヒーローを持つことはとても重要で、彼のおかげでいまでは黒人の子供もスーパーヒーローになることが可能だと思うようになった。それが彼が遺した遺産だ」


 ボーズマンが主演を務めたブラックパンサーは、2018年に公開されたヒーロー映画。マーベル映画初の黒人ヒーロー作品として大きな熱狂を生んだ。マーベル映画とは、マーベルコミックスというアメリカにある漫画出版社の原作を元にした実写映像化シリーズの総称で、ブラックパンサーは、ライアン・クーグラー監督を筆頭に、キャストのほとんども黒人の作品だった。


 そのブラックパンサーがマーベル作品として初めてアカデミー賞の作品賞候補になり、作曲、美術、衣装などの部門で受賞したことで、多くの黒人の子供たちに、勇気を与えた。


 ボーズマンは『Black Lives Matter』関連の運動にも参加していたという。訃報の後、Twitterでは『ワカンダフォーエバー』がトレンド入りした。ご冥福をお祈りしたい。

2020年F1第7戦ベルギーGP予選 3番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)

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