ダルビッシュは「ジャズ・ピアニスト」。かつての大物投手とも共通点

9月1日(日)7時57分 Sportiva

 前半戦は不振に喘いだダルビッシュ有だったが、オールスター以降は防御率2.93と復調。7月30日のカージナルス戦以降は5戦連続で8奪三振&無四球と、ここまでの5勝6敗という成績が示す以上に印象はいい。

 現地時間8月27日に、ニューヨークで披露した投球はあまりにも見事だった。

 プレーオフを争うメッツとの敵地での対戦で、8回を5安打1失点に抑えて今季5勝目(6敗)。多彩な変化球と抜群の制球力を武器に、若手好打者を数多く揃えたメッツ打線を手玉に取った。


後半戦で調子を上げてきたダルビッシュ

 試合後、ダルビッシュの変幻自在なピッチングはメッツの選手、関係者の間でも話題にのぼっていた。とくに地元放送局『SNY』で解説者を務めた元メジャー136勝投手、ロン・ダーリングのこんな形容は印象深い。

「ダルビッシュはメジャーでも屈指のユニークなピッチャー。オリジナルの投球術を駆使するから、見ていて楽しい投手だ。たとえるなら、ジャズ・ピアニストのよう。多くの球種を操り、試合の中でさまざまなことを試し、新しい方向性を発掘しようとしているように見える」

“ジャズ・ピアニスト”とは言い得て妙かもしれない。メジャーでも先発投手は複数の球種を使い分けるものだが、ダルビッシュのように、カーブ、スライダー、チェンジアップ、スプリット、カットボール、ツーシーム、フォーシームと、文字どおり”7色の球種”を駆使する投手は珍しい。それらのすべてを、70マイルから90マイル台後半の速度で投げ分けてくる。

 さらに、カーブ、カットボールは数種類あるとのことで、記者席から目を凝らしても何を投げているのか判別できないことも多い。アメリカ広しといえど、こんなピッチャーはなかなかいるものではない。

“メジャーでも屈指のユニークな投手”というダーリングの言葉どおり、似たタイプの投手を探すのも簡単ではなさそうだ。それでも、ダルビッシュの現在地を探るため、実際に対戦したメッツの主力打者に「これまで対戦した中で、似ていると感じた投手はいるか」と尋ねてみた。すると、2人のビッグネームの名前が返ってきた。

 8月27日の対戦で、ダルビッシュからメッツの1シーズン最多記録となる42号本塁打を放った主砲ピート・アロンゾは、今季15勝をマークしているナショナルズのエースの名を挙げた。

「スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)に似ている。カーブ、カットボール、チェンジアップ、いい真っ直ぐを持っていて、制球がいいからどの球種でもストライクが投げられる。ダルビッシュにしろ、ストラスバーグにしろ、エースと呼べる実績を残してきた投手。もちろん同じタイプのピッチャーなんていないけど、似ている投手を挙げるとすればストラスバーグだ」
 
 一方、打率.330前後を維持する好打者ジェフ・マクニールは、過去ナ・リーグの最多勝に2度も輝いたカージナルスの大黒柱と相似点があると見ているようだ。

「アダム・ウェインライトと似ているね。ウェインライトもスローカーブとカットボールをよく使うし、チェンジアップも上質。それらの球種をうまく混ぜてくる。球種の数ではダルビッシュが上だが、動かない速球が少ない点ではウェインライトも同じだ」

 ストラスバーグとウェインライトは、共に多くの球種を操るベテラン投手ということで、たしかにダルビッシュとの共通点がある。とくにダルビッシュと同じく大きなカーブの使い手で、多くの三振を奪うことができ、打たせて取ることもできるウェインライトのほうが相似点が多いと言えるかもしれない。

 アロンゾ、マクニールは今季オールスターに選ばれた強打者だが、まだ20代前半の若手だけに、比較対象とする投手が少ない。一方、これまで数多くのピッチャーを見てきた59歳のダーリングは、さらに説得力のある名前を挙げてくれた。

「ストラスバーグ、ウェインライトは基本的には常に力を入れて投げる力投型だが、ダルビッシュはその気になれば95、96マイルの速球が投げられるのにも関わらず、あえてそれをせずに独自のやり方で投球する。そんなダルビッシュにもっとも似ていると思うのは、”エル・デューケ(公爵)”ことオーランド・ヘルナンデス(元ヤンキースなど)だ。スローカーブを含むさまざまな球種をオリジナルな形で使い分けた”エル・デューケ”も、まるでジャズ・ピアニストのような投手だった」

 キューバリーグで通算126勝を挙げたヘルナンデスは、1998年に亡命し、メジャーでも9年間で90勝を挙げた。とくに1998年から2000年のヤンキースの3連覇に大きく貢献。ダーリングの言葉どおり、変幻自在の投球が売り物の技巧派で、マウンド上での存在感が抜群なピッチャーだった。

 より深く見ていくと、投球スタイル以外にもダルビッシュとヘルナンデスには共通点が多い。共に野球が盛んな母国の実力派投手として、メジャーデビュー前後から注目を集め、実際にエース格の投手として活躍。ケガに苦しみながらも、メジャーで長いキャリアを築いた点も似ている。

 右肘の故障から復帰した今季のダルビッシュは、お世辞にも順風満帆とは言えない厳しいシーズンを過ごしてきた。ただ、後半戦は確実に復調している。今季の投球内容も評価されているからこそ、ストラスバーグ、ウェインライト、そして、ヘルナンデスといった大物の名前が出てきたのだろう。

 現役時代の”エル・デューケ”は、プレーオフ通算9勝、防御率2.55と大舞台での強さで知られた”ビッグゲーム・ピッチャー”でもあった。ダルビッシュも同じように今秋のプレーオフで活躍できれば……。その時にはシーズン前半の不調は半ば忘れられ、現代の”ジャズ・ピアニスト”の力量があらためて評価されるはずである。

Sportiva

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