じゃんけんも負けられない日本戦…韓国が得た最高の宝物。兵役免除とはどれほどの価値か?

9月2日(日)11時27分 フットボールチャンネル

「兵役」を口にはしなかったが…

 アジア競技大会の男子サッカー決勝が1日に行われ、U-23韓国代表がU-21日本代表を2-1で破って2大会連続の優勝を果たした。この金メダル獲得によって、韓国の選手たちは「兵役免除」という特権も手にすることになる。オーバーエイジとして参戦した大エース、ソン・フンミンらにとっても悲願達成となった。(文:キム・ドンヒョン)

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 韓国代表はアジア競技大会に「どうしても勝ちたい」という気持ちで挑んでいた。この大会を通して、どのチームと比べても勝利への意志は韓国が圧倒的に上回っていたと言っても過言ではない。

 ある意味、当然なことかもしれない。兵役免除。この単語の価値が日本の読者の皆様にどれほど伝わるか、少し心配だが、この特恵は紛れもなくたくさんのモノを選手たちに与える最高の宝物だった。兵役に費やさなければならない2年間が、サッカー選手として成長できる時間になる。一般人には考えられないご褒美だ。

 もちろんこの単語を選手たちは露骨的に口にはしていない。国民の義務ということを知っているからだ。ちょっとした失言で国民の怒りを買う大きな災いに遭う可能性もある。

 そして、兵役に行かなければならない2年間が大事、というのは選手本人たちも肝に銘じているはずだ。先輩たちが歩んできた道がどれほど厳しく、そして険しかったのか。

 特にソン・フンミンやファン・ウィジョなど「入隊」が近づいてきた26歳の選手たちに漂っていた緊張感および危機感は並大抵のものではなかったはずだ。キャプテンマークを巻いたソン・フンミンはこの試合の結果でトッテナムでの立場や給与などを失うかもしれない。

 こう言っても日本のファンには実感がわかないかもしれない。簡単に年俸で比べてみよう。徴兵制の韓国で、軍人に与えられる賃金は月2万円程度。ソン・フンミンがトッテナムで受け取る年俸が8億円以上だとすると、その価値の差がどれほど大きいかは、あえて言わなずともわかるはずだ。だからこそここで結果を残さなければならない。その大いなるプレッシャーを振り切った。グラウンドで人一倍の力を注ぎ、決勝まで上り詰めた彼らだ。なら、ゴールドメダルを首に飾るしかない。

「じゃんけんすら負けられない」日韓戦の激闘

 決勝の相手が日本だったことは、このドラマにより劇的な演出を加えてくれた。日本はアジア大会にいつものように21歳以下の選手を送り出した。A代表と兼任の森保一監督が指揮を執るとはいえ、韓国とはタレント力に差が出てもおかしくない。しかも準決勝から決勝の間に前田大然を怪我で欠く事態も起きた。紛れもなく日本の戦力はベストではなかった。

 だとしても日韓戦は日韓戦。韓国では「日韓戦ではじゃんけんですら負けてはならない」というほどの尋常ではない日本に対する敵対心がある。日本がベストでなくとも、韓国としては勝って花道を飾りたい気持ちが強かった。

 だが蓋を開けて見ると試合は思うようにはいかない。韓国は前半、幾度となくチャンスをモノにできず苦戦した。日本が堅守で韓国をうまく封じる場面が続いた。ソン・フンミンやファン・ウィジョが積極的に仕掛けるも、ゴールをこじ開けることができない。

 後半になってもこのムードは変わらない。日本はしっかりと引いて、そこから韓国守備陣の裏のスペースを狙ってきた。三好康児のゲームコントロールも中盤で輝いた。韓国のFWが牙をむき出すにするもゴールには繋がらず、結局延長戦へと進んだ。

 間違いなく韓国にとっては危機だった。だが、ここで主人公が登場した。時間を少し巻き戻して、2014年9月14日。場所はタイのバンコク。4年前のAFCU-16選手権準々決勝で行われた日韓戦。バルサ仕込みのイ・スンウが2ゴールを叩き込み、日本を破った。あの冨安健洋を置き去りにし、60mの果敢なドリブルの末、GKをかわしてのゴールが出たあの試合だ。

 そのイ・スンウが4年後のアジア大会決勝で魅せた。延長前半3分、鮮やかなシュートで小島亨介が守るゴールを破った。そして過激なゴールセレブレーションを披露する。その8分後には大会期間、不誠実な態度が指摘されていたファン・ヒチャンが頭で2ゴール目を獲得した。日本が追撃のゴールを決めるも届かない。結局、韓国が念願の金メダルを手にした。

韓国人選手の欧州移籍ラッシュも?

 選手たちの顔には笑みが浮かんだ。金メダル獲得、兵役免除の喜びが混じる。キム・ハクボム監督やキャプテンのソン・フンミン、大会得点王のファン・ウィジョは選手たちに胴上げされた。一部の選手は感激の涙を流していた。笑っても、泣いても、どちらもありうる当たり前の試合だった。

 最も注目を集めていたソン・フンミンはどうだったのだろうか。彼の第一声は「言葉にできないほど嬉しい」という一言だった。金メダルにかけていた想いは人一倍のはずだ。ワールドカップを2度も経験し、今回はキャプテンとしてチームを引っ張った。言葉が詰まるほどの喜びが体を駆け巡ったとしても無理ではない。

 それでも彼は謙遜する。「キャプテンとして僕は本当に物足りなかった。若手がみんな努力をして勝ち取った結果だ」と、共に戦った後輩たちを称えた。選手としても、人間としてもこの大会がソン・フンミンに与えたものは想像以上に大きかったのかもしれない。

 ファン・ウィジョも喜びを隠さない。「チーム一丸となって作った結果だ。1つのゴールを突破することができた。本当に嬉しい」とコメントを残した。決勝ゴールのイ・スンウも「この経験を土台により成長していきたい」と意気込む。

 本大会に参加した20人の選手全員は兵役免除となる。厳密にいうと「サッカーで社会に貢献する」という前提の免除だ。今までと同様、サッカー選手としての活動を元気に続けていけばいいのである。韓国体育会、そして韓国サッカー協会からの奨励金も待っている。金メダルに、兵役免除そしてお金など、これ以上ない甘い1週間が彼らを待っているのだ。

 そして彼らはこの兵役免除で人生の新たな扉を開くことになる。韓国人選手にとって常にネックになっている問題をクリアしたことで、欧州への進出も自由になる。サッカー選手として、人間として発展できるチャンス、そしてチャレンジできる機会が与えれたのだ。

 大先輩のソン・フンミンも「このチームのみんながヨーロッパに行ける実力を持っている。もっとチャレンジしてほしい。ここで満足せずに、韓国のためにサッカーをやっていってほしい」と激励する。後を追うかのように、欧州移籍ラッシュが始まるかもしれない。いずれにせよ、韓国産若武者の晴れ舞台が今ここから始まる。

(文:キム・ドンヒョン)

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