山田哲人の失敗ゼロの盗塁術。今永昇太は「まるで幽霊」とお手上げ

9月2日(月)6時57分 Sportiva

「一塁走者としての山田哲人選手について取材しています」

 8月29日、DeNA対ヤクルト(横浜スタジアム)の試合前。両チームの選手や関係者に質問して回ると、誰もが「スピードがすばらしいですよね」と口を揃えた。


昨年から続く連続盗塁成功の日本記録も37に伸ばしているヤクルト・山田哲人

 前日の試合で、山田は今季29個目の盗塁を決め、昨年から続く連続盗塁成功記録を34に伸ばしていた。ヤクルトの河田雄祐・外野守備走塁コーチは「走るという気持ちが強いことが一番だよね」と言って、こう続けた。

「構えてからスタートを切って、トップに入るまでの速さは日本一だと思います。なおかつ、今年は成功を重ねていくなかでバッテリーの配球を読んで、変化球のタイミングでうまく走ることもあった。ここ試合はいつもよりスタートは遅かったんですけど、それを塁間のスピードで補った。だから、最後のスライディングも生きてくる。ポテンシャルはもちろんだけど、そのあたりの技術もすばらしい」

 その河田コーチのコメントを裏づけるように、前田真吾トレーナーは山田のポテンシャルの高さについてこう語る。

30メートル走のタイムは、チームトップの塩見泰隆に匹敵するか、それ以上のものはあると思います。なによりゼロからトップにいくまでのスピードがすごい。それは、体は細身ですけど、パワーを秘めているからスタートの時にグッと力を出せるので、トップのスピードが速くなるんです。

 あとは、アウトかセーフかという時の集中力ですよね。メリハリというか、ここぞという時のスタートや足の回転の速さ。アップの時はわりと省エネモードなんですが、『このダッシュは本気でやってみよう』と言うと、スタートから全然違います(笑)」

 観察眼に長けている雄平に話を聞くと、「僕に盗塁のことを聞きますか」と苦笑いしながら答えてくれた。

「僕は警戒されていないなかで走る勇気というんですかね……そこが欠けているのでなかなかスタートが切れない。でも哲人は警戒されているなかで走って、しかも失敗しない。すごいですよね。盗塁に関しては、ナンバーワンでしょう」

 そう言うと、横にいた上田剛史に「どう思う?」と声をかけた。

「ピッチャーとの駆け引きですよね。警戒されている時は無理をせず、相手がスキを見せたら迷わずいく」(上田)

 一方、投手にとって走者・山田哲人はどんな存在なのか。DeNA3投手に聞くと、表現は違えど、それぞれが同じ印象を持っていた。

「本当にうまいなぁと思います。山田選手はリードも大きくないですし、『この感じだと走ってこないだろうな』というタイミングで走ってくる。データにあるように、初球から走ってきたり、ピッチャーが変化球を投げたくなるカウントを狙って仕掛けてくることもあります。正直、いつ走ってくるのか、本当にわからないんですよ。打者としても投げづらいのに、ランナーとしてもめちゃくちゃ厄介な存在です」(上茶谷大河)

「リードは大きいというより、普通だと思うんですけど……いつ走ってくるのかわからない走塁をしますよね。ランナーによって違いはあるんですけど、走ってくる時にリードが小さくなったり、目が合うと表情が変わったり、だいたい雰囲気でわかるんですよ。でも山田選手は、動き構え、表情がまったく変わらない。

 僕としては、常に『走ってくる』と警戒しながら投げているんです。首の動かし方だったり、間を変えたりするんですけど、山田選手はピッチャー動いた瞬間にスタートを切るのがイチなので、なかなか難しいですね。スタートもいいですし、スライディングも強いし、無駄がないですよね。塁上にいるだけで嫌な選手ですよね」(石田健大

「盗塁してくる選手というのは走りそうな雰囲気があったりするんですけど、山田選手は本当に走る雰囲気がゼロなんです。塁上ではフワーっとした感じで、リードも特別大きくないですし、表情もオーラもすべてゼロ。なので、本当につかみどころがないというか……僕からすれば、それこそ幽霊です(笑)」(今永昇太

 さらに今永は、これまでの一塁走者に山田を迎えての局面についてこう話す。

「けん制やウエストのサインも出ますし、真っすぐのサインも多くなるなど、警戒レベルは最高に達しています。そのなかで、僕は最短のクイックで投げ、キャッチャーも捕球してからベストの送球をする。『これは間一髪アウトかな』とこれまでの経験でわかるものなんですが、振り返ってみると、もうセカンドに滑り込んでいて、悠々セーフなんですよ。バッテリーで最善を尽くしたのに、あれだけ余裕でセーフということは……トップスピードに乗るのも速いですし、スタートも抜群だと思いますし、僕にクセがあるのかもしれないですけど、どうすればいいんだっていう感じです(笑)」

 そしてこうも続けた。

「山田選手に対しては、まず出塁させないことが大前提です。でも、塁に出してしまった時は、もちろん盗塁は防ぎたいですけど、もう二塁にいるものと仮定して投げます。相手にそこまで最悪のことを想定させてしまうのが、山田選手です」

 山田は29日の試合で、プロ野球史上初となる4度目の「シーズン30本塁打、30盗塁」を達成した。

「まだシーズン途中ですが、30本、30盗塁というのはシーズン前から目標としていたので素直にうれしいです」

 試合後の囲み取材で、山田はそう答えた。口調はいつもと変わらず、穏やかでやさしい。その姿を見ていると、2014年に聞いた山田の言葉を思い出すのだった。

「将来は相手に嫌がられる選手になりたいです」

 あれから5年、山田は十分すぎるほど相手に嫌がられる選手になった。

 そして8月30日の試合で山田は今季32個目の盗塁を決め、シーズン連続盗塁成功のプロ野球記録を更新。史上初の成功率100%の盗塁王も現実味を帯びてきた。

Sportiva

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