F1第13戦会見:「一番の強みは自分の道を進んだこと」引退発表のライコネン、キャリアに後悔なし

2021年9月3日(金)18時0分 AUTOSPORT web

 2021年F1第13戦オランダGP開催直前に、キミ・ライコネン(アルファロメオ)の現役引退が発表された。必然的に木曜日のドライバー会見では、この話題が中心となった。


 まずはライコネン本人の、引退の弁を聞いてみよう。


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──簡単な決断ではなかったのでは?


ライコネン:いや、そうでもないよ。昨日今日、突然決めたことじゃなかったしね。F1を引退したのも、これが初めてじゃない(注:2010年から2シーズン、WRCに参戦)。もうずいぶんこの世界に長くいる。何より幸いだと思うのは、僕の人生においてF1がすべてじゃなかったということだ。かなり多くの時間を費やしてきたけれどね。それ以外に重要なことがいつもあったし、今もある。だから(F1引退は)問題ないよ。




──引退後、何をするのですか?


ライコネン:何も決めてないね。とにかくスケジュールに縛られたくないんだ。F1にいる19年、20年間、ずっと次は何をして、それからこれをして、何日にはこんな予定があって、みたいな生活をずっと続けてきた。そうじゃない暮らしをしたい。日々の生活を、レースの都合で決められたくない。レースやテストや、フライト時間で家族との時間に制約を受けるのはこれ以上望んでいない。(今後何をするかを決めるのも)急いでいないし、急ぐ必要もない。興味もない。誰とも、何も話してないよ。


──F1ドライバーとして一番の強みはなんだったと、自分で思っていますか。


ライコネン:なんだろう。勝ちたいと思ってレースをしてきて、それを成し遂げられたことかな。世界チャンピオンにもなりたくて、何度も寸前まで行って実現できなかった。でもフェラーリのみんなと、ようやくその夢を果たすことができた。その間も自分がいいと思ったことは譲らなかったし、妥協しなかった。最悪の状況でもね。自分の道を進んだこと。それが一番の強みかな。だから何も、後悔はないよ。

2007年F1第17戦ブラジルGP キミ・ライコネン(フェラーリ)


──あなたが一番幸せを感じるのは、いつ、どこにいる時ですか。


ライコネン:家族と家にいる時だね。


──サーキットでは、そんなに幸せではない?


ライコネン:場合によるよ。コース上ならともかく、マシンから降りてこうしてメディア対応してる時はちょっとね。サーキットにはレースをしに来てるわけで、それ以外のことはいまだに何でやらないといけないのかと思う。


──F1を去って、寂しく思うことは?


ライコネン:何だろう。まだ10戦以上残っているからねえ。長いF1生活のなかで、たくさんの人たちと出会った。寂しいというか懐かしく思うとしたら、そんな人たちのことかな。僕を応援してくれた多くのファンも含めてね。


──これまで21勝のなかで、もっとも達成感のあった勝利は?


ライコネン:ひとつひとつの勝利がまったく違うものだし、比較的簡単に勝てたのもあれば、ものすごく難しいのもあった。2007年最終戦の勝利は、あれでタイトルが決まったという意味で最も重要な1勝だっただろうね。でも達成感という意味では、たとえばスパとか鈴鹿の勝利も忘れがたい。特に(2005年の)鈴鹿は劇的な勝利だった(注:雨の予選で16番グリッドに沈んだが、レースでは猛然と追い上げ、最終周で勝利をもぎ取った)。もちろん(2003年マレーシアでの)初優勝も、すごく大事な1勝だよ。

2005年F1第18戦日本GP キミ・ライコネン(マクラーレン)

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 フェラーリからアルファロメオに移籍してからのライコネンは、以前のようなとんがった感じはすっかり抜けた。この会見での受け答えも実にリラックスした感じで、マスク越しでも柔らかな笑顔を浮かべてる様子がわかった。


■「10年くらいキミと一緒にレースをしているけど、彼のことはいまだによくわからない」


 その後は多くの同僚ドライバーが、ライコネンについてコメントした。フェラーリ時代にチームメイトだったセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)と、「10年もいっしょにいるのに、いまだにキミのことがよくわからない」というダニエル・リカルド(マクラーレン)の言葉を紹介しよう。


──ドライバーとしてのライコネンの一番の強みは?


ベッテル:マシン限界を見極めるのがとにかく早かった。そしてコンディション変化に対応する能力も、群を抜いてたよ。あれだけ長い間第一線で戦えたのは、まさにそれゆえだったと思う。


リカルド:キミに限らず誰かが現役引退するというニュースを聞くと、僕はいつも「本当によかったね」と言ってあげたくなる。どんな状況にせよ、F1キャリアを無事に過ごし、次のステップに進もうと自分自身で決断したわけだからね。僕が最初にキミを知ったのは、まだ僕がレースを始めて間もない頃だった。若かったキミは、とにかく速かった。マシンに乗り込んで、1周目からとんでもない速さを発揮するドライバーだった。2年間ラリーに行って、そこからカムバックして再び優勝争いに絡んできたのも凄いことだ。

2021年F1第13戦オランダGP木曜会見 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)&ダニエル・リカルド(マクラーレン)


──キミがいなくなって、寂しくなるであろうことは?


ベッテル:沈黙、かな(笑)。


リカルド:本当にそう思う(笑)。あれだけ口数が少なくて、なのにその沈黙のなかで多くのことを雄弁に語っていた。そして長い間ずっと、最も人気のあるF1ドライバーのひとりだった。もう10年くらい、キミと一緒にレースをしているけど、でも彼のことはいまだによくわかってない。本当に不思議な人だよ。



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