東京五輪世代から日本代表へ。森保Jならではの激しい競争、A代表に生き残れる選手とは?

9月3日(月)11時49分 フットボールチャンネル

東京五輪世代からA代表へ。先頭を走る3人

 森保一監督率いるU-21日本代表は、インドネシアで開催されたアジア競技大会を銀メダルで終えた。そしてすぐに、今度はA代表の活動が始まる。2つの代表チームを掛け持ちすることになった指揮官は、どのように組織を成長させていくのだろうか。そして東京五輪世代の生き残りをかけた戦いは、今後どのように展開していくのだろうか。(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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 森保一監督がA代表とU-21代表の兼任になってから、初めての国際大会だったアジア競技大会が終わった。U-21日本代表は決勝でU-23韓国代表に敗れて銀メダルを獲得した。

 この大会の期間中、常に「森保さんが兼任監督になって…」という言葉が、選手たちとの取材の中で幾度となく聞かれた。中には「またか…」と思っている選手もいただろう。だが、「世代間の融合」を掲げる森保監督が若い選手たちをどのように日本代表に引き上げていくか、そして世代別代表とA代表の間の壁がどれほどの高さになるかはアジア大会で注目すべきポイントに違いなかった。

 結論から言えば、アジア大会に参加したU-21代表からすぐにA代表への“昇格”となる選手はいないだろう。森保監督は「(U-21代表の)選手が頑張っているところを見ているので、全員(A代表に)選んであげたいという気持ちは、監督として、親心としてあります」とアジア大会決勝前日に話していたが、日本代表という場への挑戦権を与えるかどうかに関しては非常にシビアに見極めているように感じる。もちろん将来の可能性がなくなったわけでは決してない。

 今回、7日のチリ戦と11日のコスタリカ戦に向けて、東京五輪世代からはDF冨安健洋、MF堂安律、MF伊藤達哉の3人が日本代表に初招集された。他のU-21代表の選手たちから一歩リードと言える状況だが、彼らがA代表入りを果たせたのにはハッキリとした理由がある。同時に森保監督は若い選手を積極的に招集する意向が言葉通りであることも示した。

 冨安はベルギー1部のシント=トロイデンで今季から不動のレギュラーになった。堂安はオランダ1部挑戦2年目で、フローニンゲンの攻撃における絶対的な柱に成長し、リーグ内でも注目を浴びる若手選手の1人になった。伊藤もドイツ2部のハンブルガーSVで背番号11を与えられて、今季開幕から主力としてプレーしている。

 これまでA代表の中心選手たちがそうだったように、競争の激しい欧州のトップクラスで、各クラブの主力として継続的に試合に絡むことはA代表入りの1つの基準になる。そして冨安や堂安、伊藤はU-21代表でも中心を担っていくことになるはずだ。

Jリーグでの活躍が大きなチャンスに

 欧州の競争に身を置くことが重要とはいえ、森保監督がJリーグ勢を軽視しているわけではない。それは今回の日本代表の招集メンバーや、追加招集された選手を見るとよくわかる。

 例えばサンフレッチェ広島の佐々木翔は、まさに今季の活躍が評価されて日本代表初招集となった。森保監督は「国内組に関しては結果を出している、いいパフォーマンスを出している選手を招集している。翔に関してはリーグ首位を走る広島で、ディフェンスの部分、攻撃の部分を含めて、継続していいパフォーマンスを出している」と、広島時代の教え子の招集理由を説明していた。

 今回は欧州組のシーズンが始まったばかりでロシアワールドカップ組の多くや、移籍したばかりの選手などを招集できていないが、多くの国内組にチャンスが与えられた。佐々木の他にはJ1で現在アシストランキング首位(『transfermarkt』調べ)のFW伊東純也や、FC東京で好調のDF室屋成、ベガルタ仙台でレギュラーを獲得した長身GKシュミット・ダニエルなど、これまで招集されながらチャンスに乏しかった選手たちにも、今季の活躍を見定めたうえで声がかかっている。

 さらに負傷したMF山口蛍とMF大島僚太の代表招集自体にともなう、MF守田英正とMF天野純の追加招集も東京五輪世代の選手たちへのメッセージになるだろう。川崎フロンターレの守田は大卒1年目で、J1でも通算21試合にしか出場していない。横浜F・マリノスの天野も世代別代表歴は一切なく、27歳ながらJ1でレギュラーに定着して1年半ほどしか経っていない。

 それでも追加招集の2人に共通しているのは、今季のJリーグで抜群の存在感を放っているということだ。守田は昨季王者のフロンターレでエドゥアルド・ネットから定位置を奪い、日進月歩の成長を見せている。天野もマリノスが低調な中でコンスタントな活躍を披露し、今季はすでに自慢の左足で直接フリーキックを2本沈めている。

現時点で日本代表“昇格”のチャンスがある選手は?

 森保監督はJリーグで輝いている選手もしっかりと見ている。そういう意味では、アジア大会に参加した国内組の選手たちにも今後チャンスが開けてくるのは間違いない。ただ、A代表という輪の中に高い壁を越えて足を踏み入れるにあたって、J1で継続的な出場機会を得ること、そこで際立った活躍を見せることは最低条件になってきそうだ。欧州トップレベルのリーグで定位置争いに絡めるようになれば、A代表入りのチャンスはより広がる。

 もちろんU-21代表の選手たちも、すぐA代表に入るのが難しいことはわかっている。DF立田悠悟は「今A代表に選ばれている選手や、同い年で選ばれている選手もいますけど、その選手たちと自分は本当に差があると思っていますし、その差を早く埋めなければいけない」と語っていた。

 立田にとって「同い年」とは1998年生まれの冨安や堂安のことを指す。森保監督による彼らのA代表への抜てきが、U-21代表でも競争を喚起するのは間違いない。「何で自分たちは選ばれないのかと思っているでしょうし、思ってもらいたいです。その雰囲気、ギラギラしたものを出して欲しい」と指揮官は要求する。そして「まだまだ伸びしろがあるところを見せてくれれば、次のチャンスは必ず待っている」とも。

 現時点の話にはなるが、アジア大会組から早い段階でA代表への“昇格”の可能性があるとすれば、先述の立田とベガルタ仙台のDF板倉滉の2人だろうか。ともに清水エスパルス、仙台というJ1クラブのレギュラークラスで、身長185cmを超える長身センターバックという貴重な特徴を持つ。さらに森保監督のサッカーを理解して3バックに対応できる点も心強い。日本サッカーの将来のために大切に育てたいDFである。

東京五輪に向けた競争も激しく

 ここまで東京五輪世代とA代表の関係について述べてきたが、前者はまずU-21日本代表の中で生き残らなければ、その次のステップは見えてこない。森保監督は「これから先の東京五輪代表チームの活動において、もちろん絞り込みもしていかなければいけないと思いますけど、その都度の代表活動で色々な制限もあると思いますので、その時の最善の選択をしながらチーム作りを進めていきたい」と述べていた。

 ただ、森保監督はアジア大会でも「使える選手」と「使えない選手」をシビアに見極めていたように思う。ここであえて名前を挙げることはしないが、大会中に体調管理の甘かった選手、ウォーミングアップで気の緩んだ姿を晒した選手、チームに貢献するメンタリティを見せられなかった選手……「俺がやってやるんだ」という気持ちをピッチ内外で表現できなかった選手のことを、指揮官はちゃんと見ている。現にアジア大会でチームが勝ち上がっていく中、過密日程にもかかわらず出場機会がどんどん減っていった選手がいたのは事実だ。

 もちろんまだチャンスが完全になくなったわけではないが、東京五輪のエントリーは18人に絞られるだけに競争は今後より一層激しくなる。GK2人+フィールドプレーヤー18人の合計20人をエントリーできたアジア大会から2人減るだけでなく、そこにオーバーエイジ枠の選手も最大3人入ってくる。つまりわずか「15」の枠を、東京五輪世代で争うことになる。

 その競争には、U-21代表だけでなく、さらに下のU-19代表から絡んでくる選手も出てくるだろう。すでにトゥーロン国際大会で森保ジャパンに選ばれた経験を持つ浦和レッズのDF橋岡大樹や、昨年のU-20ワールドカップに飛び級で出場したサガン鳥栖のFW田川亨介をはじめ、ヴィッセル神戸で主力に定着したMF郷家友太、高校生ながらシーズン序盤は名古屋グランパスで主力だったDF菅原由勢、そして横浜F・マリノスに移籍したFW久保建英といったタレントも控えている。

 東京五輪まであと2年。アジア大会の銀メダルを経験した選手たちがどのように奮起し、自分を高めていくのか。そして今回はU-21代表メンバーに入らなかった選手たち、すでにA代表への挑戦権を掴み取った選手たち、さらに下の世代がどう絡んでくるのか。

 森保監督は「東京五輪経由のカタールワールドカップとは思って欲しくない。ワールドカップのアジア予選を戦う選手が東京五輪に出る」と話していた。つまり今の21歳以下の選手たちには、2年後にA代表クラスの実力になっていることを期待している。A代表監督と五輪代表監督が“兼任”になったからこそ起こる競争は、大きなうねりとなって日本サッカーを底上げしていくかもしれない。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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