渋野日向子は、周囲が騒がしくても、体調が悪くても、なぜ強いのか

9月3日(火)7時17分 Sportiva

 日本女子ツアーのニトリレディス(8月29日〜9月1日/北海道)は、ツアー屈指の実力者たちが熾烈な優勝争いを展開。最終的には、一昨年の賞金女王である鈴木愛(25歳)が通算11アンダーで優勝し、今季4勝目を飾った。

「この1カ月は、まったく自信がなかった」という鈴木だが、2日目を終えてトップタイに躍り出ると、3日目、最終日も安定したプレーを披露。最終的にアンダーパーが18人という難コースにありながら、唯一のふた桁アンダーをマークして、あらためて実力の高さを示した。

 そんな鈴木の強さが際立った大会ではあったが、大会を通して話題の中心にいたのは、やはり全英女子オープンの覇者、渋野日向子(21歳)だった。

 体調が悪いなかでも、きっちり優勝争いに加わって、通算7アンダー、単独5位でフィニッシュ。さらに、国内ツアーにおける連続イーブンパー以上(連続オーバーパーなし)のラウンド記録を「28」まで伸ばして、アン・ソンジュ(32歳/韓国)の最多記録に並んだ。


ニトリレディスでも優勝争いを演じた渋野日向子

 今回もまた、多くのファンやメディアの期待に十二分に応えた渋野。その奮闘ぶりには頭が下がる。「お見事」という言葉しか出てこない。

 全英女子オープンから帰国後、彼女を取り巻く環境は一変した。そうした状況にありながら、当初の予定どおりにハードスケジュールを消化。北海道meijiカップで13位タイと健闘し、続くNEC軽井沢72トーナメントでは優勝争いまで演じて3位タイの成績を収めた。そして、プレー中はいつもと変わらぬ「シブコ・スマイル」でギャラリーを魅了した。

 だがその間、まさしく疲労困憊だったはずだ。ゆえにその後、1週間のオフウィークを過ごしたとはいえ、肉体的にも、精神的にも、完全にリフレッシュできたとは言い難い。しかも、”渋野フィーバー”が一段と増しているなかで、渋野が本当に気持ちを休めることができた時間は、どれほどあったのだろうか。

 それを思えば、ニトリレディスを前にして発熱したことも頷ける。練習ラウンドをキャンセルし、病院で診察を受けると、急性副鼻腔炎と診断された。

 安静すべき状況にあり、大会の前夜祭も欠席した。しかし渋野は、大会前日のプロアマ戦に出場すると、試合本番でも圧巻のプレーを見せた。体調が悪いにもかかわらず、連日ファンの声援に応え、渋野らしい受け答えでメディアへの対応もきちんとこなした。

 イン(10番)スタートの初日は、ボギーが先行し、後半の1番、3番でもボギーを叩いて苦しい戦いとなったが、最後の3ホールで連続バーディー。1アンダー、19位タイとまずまずのスタートを切った。

「(17番でボギーのあと、18番でバーディーを取り返して)『いい流れがくるかな』と思っていたなかで、後半に入って(1番と3番でボギーを打って)2オーバーまでいってしまったんですけど、残り3ホールで(連続)バーディー。アンダーで上がってこられたのは、予想外かな、と。(3連続バーディーの前に)とくに気持ちの切り替えはしていないですけど、『早く終わりたい』と思って、バーディーを取ったら『はよ終われるかな』と思っていました。

 体調は全然大丈夫です。万全です。体調は完璧ですけど、ショットはポンコツです。ショットは今までと違うかな、というところがありました。何が影響しているんですかね? 練習せんかったから? 忘れちゃったかな、振り方を(笑)。ドライバーもちょっと変な、今まで出なかった球筋があったり、アイアンも微妙な当たりがあったりして……。

(鈴木愛と比嘉真美子と同組でプレー)もう、2人とも私とはレベルが違いすぎて。愛さんは際どいパットを決めるところとか、(私とはレベルが)全然違うなと思いましたね。比嘉真美子さんもそう。やっぱり飛びますし、ボギーを打たないゴルフをしていたので、本当に(私とはレベルが)全然違いますね。すごく勉強になりました」

 2日目は、13番でイーグルを決めるなどして「68」のラウンド。4つスコアを伸ばして、通算5アンダー、トップと2打差の4位タイまで順位を上げた。

「(ショットの感覚は)まだ戻っていないと思います。アイアンはだいぶマシになりましたけど、ティーショットはまだ不安がある。(それでも4位タイで予選を通過したことは)自分でもびっくりです。(大会前は)熱もあって、試合に出られるかどうかもわからなくて、周りからも『無理して出なくていい』と言われたし……。そこから、この結果を見ると、『どうしたんだろう』という感じですね。

(イーブンパー以上のラウンドが継続できたことについては)正直、よかったなと思います。(ティーショットなど)考えている部分があるので、もうオーバーを打っても仕方がないという気持ちもあったんですけど、こうやって継続できたことはうれしいな、と思います。

(北海道ならではの食べ物は)食べましたよ。お寿司系とか、海鮮系は食べました。昨日はサラダを食べたくて、サラダを3皿頼んだら、それでお腹いっぱいになっちゃったんです」

 3日目は、5バーディー、4ボギーの「71」。通算6アンダーとして、ひとつスコアを伸ばした渋野は、そのままトップと2打差の4位タイで最終日を迎えることになった。

「この3日間、アンダーパーで回れたのはよかった。(連続イーブンパー以上のラウンド)記録もつながってよかったです。優勝すると(目標の)1億円を突破しますけど、それは考えていません。やっぱり今、自分の頭の中にあるのは、明日アンダーを出せば(連続イーブンパー以上のラウンド最高)記録に並ぶこと。それが、大事かなと」

 迎えた最終日、渋野は多くのギャラリーが見つめるなか、随所に見せ場を作った。優勝には手が届かなかったものの、この日もひとつスコアを伸ばして、前日に掲げた目標、連続イーブンパー以上のラウンド記録をさらに更新。ツアー最高記録に並んだ。

「誰も成し遂げていないことで(歴代で)1位になるのはすごく価値があると思う。(記録に)並んだからには、新しい記録を作りたい」

 ラウンド後、そう語った渋野。一方で、「長い1週間だった」とも漏らした。今大会も肉体的、精神的な疲労は相当なものだったに違いない。それでも、優勝争いに加わって最後まで大会を盛り上げ、誰もが期待する”記録”まで達成して見せるあたりはさすが。異常なほどの喧騒のなか、心乱されずに戦っている渋野には、あらためて脱帽である。

 全英女子オープン優勝を経て、渋野は1つ上のステージに上がった感がある。そんな渋野の強さについて、ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏はこんなふうに語っていた。

「(スター選手になると)コースの外に出ると、ファンやメディアに追いかけられて、いろいろなことを考えなければいけないけれど、コースに入ったら、ボールを打つこと、その場、その場のプレーに集中して、ゴルフのことだけ考えればいい。要するに、プレーをしている時のほうが自分でいられる。

 だから、周囲に騒がれても、コースに行ってプレーをすれば、結果を出せる。強い選手っていうのは、だいたいそういうパターンが多い。要は、試合に出ているほうがラク。ラクって言うと語弊があるけど、プレーしていたほうが雑念を忘れられるからいい」

 いざ、コースに立てば、渋野は一プロゴルファーとして、目の前の一打に全力を尽くす。そこがブレなければ、彼女は今後も、我々を大いに楽しませてくれるに違いない。

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