食野亮太郎がハーツ移籍後即デビュー。3年後「マンCで輝けるように」

9月3日(火)6時37分 Sportiva

 MF食野(めしの)亮太郎がガンバ大阪からマンチェスター・シティに移籍すると発表されたのは、8月9日のこと。プレミアリーグ王者への突然の移籍発表は、大きな驚きとともに伝えられた。

 発表当初は「英国の労働ビザ取得が難しく、英国外へのレンタル移籍が濃厚」と伝えられていた。実際、ユース年代を含めて日本代表歴のない食野が英労働ビザを取得するのは極めて難しい、と見られていた。


スコットランドのハーツにレンタル移籍した21歳の食野亮太郎

 ところが、16日付のスコットランドの地元紙『エジンバラ・ニュース』が、「食野が英労働ビザを取得した。『特別な才能を持った選手』として特例で認められた」と報道。スコットランドのエジンバラを本拠地とするハーツにレンタル移籍する見通しだと報じた。

 そこからビザの手続きに約2週間を要し、食野は8月30日に渡英。ハーツとレンタル移籍の契約を交わし、その翌日に行なわれたハミルトン戦で早くも公式戦デビューを飾った。時系列で追うだけでも、目の回るような忙しさだ。

 英国ロンドン在住の筆者のもとには、ハーツから事前に入団会見の招待状が届いていた。当初の会見日は8月29日だったが、ビザの手続きに遅れが生じたため、1日遅れの30日に延期された。それだけでも、混乱ぶりが伝わってくる。本拠地タインカッスル・パークに足を運ぶと、ハーツの練習着に身を包んだ食野が会見場に現れた。

 スコットランドメディアの注目度も高く、会見には20名ほどの記者、カメラマン、関係者が参加。食野がエジンバラ空港に到着した際には、ひと目見ようとサポーターが出迎えたという。

 そもそも、なぜスコットランドのハーツだったのか——。そこには、マンチェスター・Cの名将ジョゼップ・グアルディオラ監督の意向は働いているのか。食野はそれらの疑問に対して、次のように答えた。

「ハーツ以外にも何チームか話をさせてもらって、全チームが自分をほしがってくれていたんですけど、なかでもハーツは自分の特長が生きる場所などをよく理解してくれていました。一番いいなと思ったのは、自分の課題を明確に提示してくれたこと。『そこを伸ばしていこう』と言ってくれたことと、そこの伸ばし方のプランを明確に持って歩み寄ってきてくれた。

 課題を提示してくれたことがすごくよくて、そこが決め手になった。もちろん、環境も街もすごくいいところですし、人もすごくいい。監督とも話をして、自分のことを一番ほしがってくれていると感じたので、ハーツに決めました」

 では、ハーツが指摘した「食野の課題」はどこにあるのか。

「Jリーグでは『ドリブルが注目』と言われていたんですけど、アシストの部分や、(ボールを持った時に)顔を上げる部分とか、あとはフィジカルづくりとか、そういうところのプランも明確に提示してくれて。『身体をデカくするけど、キレを失わずに』とか、そういう細かいところまで言ってくれたところが、自分のことをすごく考えてくれているなと。苦労するにしても、放っておかれるより、ずっと自分のことを気にしてくれて、温かい目で見てくれるというほうが助かるので。ありがたいですね」

 ハーツという選択について、グアルディオラ監督の意向や助言はあったのか。食野は「そこはなかったんですけど」と明かすが、レンタル先を決めるにあたり、「マンチェスター・シティの強化部が、僕に付きっきりでいろんなチームを回ってくれた」と言う。

 食野のもとには、オランダのクラブを含めて3、4クラブがオファーを提示していた。食野は強化部のスタッフとともに各クラブを訪問し、ロッカールームや施設を見学。最終的な決定権は食野にあったが、レンタル先を決断するにあたり、マンチェスター・Cのスタッフから多くの情報とアドバイスをもらったと言う。

 そして、食野が選んだのはハーツ。マンチェスター・Cの強化部も、このハーツを一番に推していた。

 一方、迎える側のハーツも、食野に大きな期待を寄せている。

 1874年創立の古豪で、5度のリーグ優勝を誇り、昨シーズンはスコットランドリーグを6位で終えた。ただし、4月以降のリーグ戦を6敗1分の未勝利で終え、今シーズンも開幕4試合で勝利がない。それゆえ、即戦力として食野に期待しているが、21歳の日本人アタッカーの成長にもプライオリティを置いていると言う。

「戦力としてはもちろんですけど、自分の成長を一番に考えてくれている。普通ならそのチームの目標があって、そのための戦力として呼ばれるんですけど、ハーツは『成長もしっかり手助けする』と言ってくれている。そういったところも(移籍の)決め手になりました。

 食野はマンチェスター・Cと4年契約を結んだ。

「今年がヨーロッパの1シーズン目なので、『まず試合に出てこい』と言われて。2シーズン目でステップアップし、3、4シーズン目でシティに帰れるか、帰れないかというところです。明確なプランを提示してくれたので、『あとは自分ががんばるだけだな』と感じています」

 イギリス到着の翌日に公式戦デビューを飾ったのだから、また驚いた。

 食野は大阪を出発すると、上海とロンドンで飛行機を2回乗り換え、入団会見の当日朝にスコットランドのエジンバラに到着。食野は「上海→ロンドン間は12時間かかるんですが、そのうち10時間は寝てました。起きたら、『もうロンドンか!』って」と笑ったが、さすがに長時間移動の疲労を考えると、翌日の試合ではプレーできないだろうと思った。

 だが、ハーツの考えは違った。

 食野がエジンバラ空港に着いたのが、イギリス時間8月30日の午前9時。普通ならその日の練習は軽く汗を流すぐらいだが、なんと同日午後からチーム練習に参加したという。しかも、本来ならチーム練習は午前に行なわれるが、食野の到着に合わせて全体練習の時間を午後に変更。試合前日の会見でも、クレイグ・レビーン監督が食野の起用を示唆していた。

 実際、食野はハミルトン戦でベンチ入りして、負傷者が出た前半31分から途中交代で出場。ホームで公式戦デビューを果たした。

 振り返れば、この1カ月はドタバタ続きだった。マンチェスター・Cへの移籍が完了したのは、市場が閉まるわずか6分前。その後も、英労働ビザを取得できるどうかの不透明な状況が続き、「この1カ月、生きた心地がしなかった」と食野は笑う。

 だが、ようやく舞台は整った。スコットランドで地に足をつけ、ここから自身の成長を貪欲に追い求めていきたい。

「自分は『その選手が戦術になってしまう選手』、エデン・アザールとかリオネル・メッシとか、そういう選手が好き。ひとりで局面を打開できる選手が理想なので、そういった選手になって、『シティで輝けるように』というイメージを自分の中で描いています」

 そう話す食野の目は輝いていた。21歳の挑戦が、英国北部のスコットランドで始まった。

Sportiva

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