【コラム】31歳・槙野智章、森保ジャパンで再スタート…ロシアW杯出場の意地と誇りを示す時

2018年9月4日(火)7時20分 サッカーキング

9月の日本代表メンバーで唯一、ロシアのピッチに立った [写真]=Getty Images

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 2018 FIFAワールドカップ ロシア・ラウンド16、ベルギー戦の激闘から2カ月。いよいよ森保一監督率いる新生・日本代表が新たな一歩を踏み出す。

 今回のメンバー選考はご存知の通り、ロシアW杯の主力組は招集されず、リオ・デ・ジャネイロ五輪世代中心の構成。30代は今季J1首位を走るサンフレッチェ広島のキャプテン・青山敏弘、ロシアW杯組のGK東口順昭(ガンバ大阪)、そして槙野智章(浦和レッズ)の3人だけ。W杯のピッチに立ったのは槙野ただ一人。それだけに託されるものは非常に大きいのだ。

「自分が選ばれた意味をしっかりと理解しないといけない。W杯に出場した雰囲気だったり、日の丸の大切さ、A代表の大切さを今回初めて招集された若い選手たち、経験のない選手たちに落とし込んでいくのが僕の役目。伝えるのは大事な役割だと思っています」と槙野は1日のセレッソ大阪戦後、神妙な面持ちでこう語っていた。

 A代表とU−21日本代表を兼務した森保監督とは広島で少年サッカーに明け暮れていた頃からの長い付き合い。そこも槙野にとっては大きな部分だろう。

「森保さんはもともと憧れの人。地味で目立たないけどチームに欠かせない選手って大事ですよね。サッカー教室で教えてもらう機会があったんですけど、誠実な人柄に触れて、さらに好きになりました。後から本で読んだんですけど、『ドーハの悲劇』の後、ポイチさんはホテルで自殺しようとしたらしいんです。飛び降りようとしたら、柱谷哲二さんに『ポイチ、何してるんだ!』って止められたと。そこまでサッカーを真剣に捉えている人だと知って、尊敬の念が一段と高まりました」と槙野は話したことがある。

 指揮官が2004年から広島でコーチ業をスタートさせてからは、指導者と選手の関係になった。特に大きかったのは、森保監督が2005年から吉田靖監督率いるU−18日本代表コーチも務めた時。槙野、柏木陽介(浦和)、内田篤人(鹿島)、香川真司(ドルトムント)らいわゆる「調子乗り世代」の面々は個性豊かで、2007年のU−20ワールドカップ(カナダ)でも16強まで勝ち上がった。

 森保監督はアジア大会期間中に当時を振り返り、「吉田ジャパンの選手たちは自分のキャラクターを出していくことに長けていた。今の選手の方が少し大人しいかなというのはある」とコメントしていた。とりわけ凄まじいコーチング力で周りを動かし、チームを盛り上げる槙野の強烈なキャラクターには一目置いていた。そうやって自身に大きな信頼を寄せてくれる指導者と再びタッグを組めることは、槙野にとって至福の喜びに他ならないはずだ。

「森保さんと仕事をしている時間はかなり長いので、僕のキャラクターだったり、プレースタイルを分かっている方。試合に出る出ないにせよ、食事会場や練習などいろんなところで他の選手とコミュニケーションを取って時間を共有できるようにしたいです」と彼は新指揮官と若手のパイプ役になることを明言した。

 もちろん戦力としても負ける気はない。今回はセンターバック要員にロシアW杯組の植田直通(サークル・ブルージュ)や遠藤航(シント・トロイデン)、森保チルドレンの佐々木翔(広島)、東京五輪世代の冨安健洋(シント・トロイデン)らが名を連ねるが、槙野の経験値を超える者は誰一人いない。しかも、森保監督はアジア大会を戦ったU−21代表でも3−4−2−1システムをベースにした通り、新たな代表でもこのフォーメーションを採用すると見られる。これまで同布陣を採っていた広島や浦和と、4バックを軸とした代表の間で難しさに苦悩することが多かった31歳のDFにとって、代表とクラブのシステム一致は大きな追い風になりそうだ。

「3バックの経験を生かせる? そうですね。だと思ってます」と本人も目を輝かせたが、今後は吉田麻也(サウサンプトン)や昌子源(鹿島)らロシアW杯の主力組が戻ってきても、槙野は十分競争できる環境になりそうだ。4年後の2022年は35歳になるが、彼自身の中ではここで終わるつもりは一切ない。34歳でフル稼働した長谷部誠(フランクフルト)の例もあるだけに、代表続行に闘志を燃やしていくという。

「僕は『ベテラン枠』とか『盛り上げ役』で呼ばれているんではないというところを見せないといけない。そういう気持ちは強いです。吉田選手とも連絡を取っていますけど、今回のメンバーで戦ってA代表の価値を下げないようにしないといけない。チリも非常にいいメンバーで来るというのは聞いているので、しっかりやっていきたいです」

 吉田不在の今、リーダーとしても大きな期待が寄せられる槙野。ロシアの地で昌子の控えに回った悔しさを胸に秘めながら、大舞台のピッチに立った数少ない生き証人の意地とプライドを示すこと。そして、チリとコスタリカを相手に暴れ回ること。それが今回は彼に託される命題だ。森保ジャパン初陣2連戦は、最終ラインを統率するこの男の一挙手一投足がチームの命運を左右すると言っても過言ではない。

文=元川悦子

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