決勝で発生した二つの大きなアクシデント─多重クラッシュとバニャイアのハイサイド。当事者たちの弁/第11戦カタルーニャGP
2023年9月5日(火)11時5分 AUTOSPORT web
カタルーニャGPの決勝レースでは、二つの大きなアクシデントが発生した。1コーナーでの多重クラッシュ、そして2コーナー立ち上がりでのフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)の転倒と他ライダーとの接触である。これらのアクシデントについて、各ライダーに話を聞いた。
スタート直後の1コーナーで起こった多重クラッシュは、5人のライダーが転倒するものだった。映像を確認すると、インサイドに位置取ったエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)がスリップダウンを喫し、アウト側にいたヨハン・ザルコ(プリーマ・プラマック・レーシング)、ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(グレシーニ・レーシングMotoGP)、マルコ・ベゼッチ(ムーニーVR46レーシングチーム)、アレックス・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)を巻き込んでの転倒だったようだ。
その後、2コーナーの立ち上がりでバニャイアがハイサイド転倒を喫して他ライダーと接触するアクシデントが発生し、レースは赤旗中断。バニャイアの救護活動とブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリーレーシング)のマシンから漏れたオイル処理が行われ、約20分の中断ののち、レースは再開された。しかし、バスティアニーニとバニャイアはメディカルセンターへ運ばれ、再スタートしたレースに臨むことはできなかった。
二人ともさらなる検査のために病院へと向かい、検査の結果、幸いにもバニャイアはいくつかの打撲はあるものの、バイクが乗り越えていった足に骨折はなかったという。一方、バスティアニーニは左足首と左手の骨折を負って手術を受け、サンマリノGP、インドGP、日本GPの参戦を欠場することがチームから発表されている。
1コーナーに入ったときにバスティアニーニの左やや後方にいたアレックス・マルケスは「(バスティアニーニは)そこまで深いブレーキングではなかった。でもバンク角はコーナリングできないものだった。彼はクリップにつけずにクラッシュした」と、そのときの様子を語った。
「そして、今日、このサーキットはとても難しかったと思う。1コーナーは追い風で、けっこう強かった」とも述べている。決勝日のカタロニア・サーキットは、強めの風が吹いていた。
同じく転倒した一人だったザルコは「こういうアクシデントは時々起こりうる」と述べ、このサーキットの1コーナーで大きなクラッシュが相次いでいる理由について問われると、以下のような見解を示した。
バルセロナ・カタロニア・サーキットの1コーナーでは2022年も今回のような多重クラッシュが発生しており、2年続けて同じコーナーで似たようなアクシデントが起こったことになる。
「1コーナーはちょっとタイトだから(こういうことが)起こり得るけど、レッドブル・リンクほどにはタイトってわけでもない。今日、僕たちはいつもより速いスピードで(1コーナーに)入った。5速を使っていたからだ。通常、5速は300km/hになる。300km/hに到達することがないから、はっきりしたブレーキの基準がないんだ」
「それに今日は、追い風が吹いていた。こうした全ての情報を知り、考慮しなければならない。でもそれらを考慮せずに『やってみよう、やってみたらすごいことになるかも』と言うライダーも、ときにはいる」
「でも、僕たちはあまりよくない週末もあると受け入れる必要がある。3つ、6つのポジションを得たら、レースは変わるだろう。でも(今日のように)変わることもある。そうなるとひどいことになってしまうんだ」
なお、このアクシデントにより、バスティアニーニはロングラップ・ペナルティを受けている。
■2コーナー立ち上がりでのバニャイアのハイサイド転倒
1コーナーでの多重クラッシュの直後、2コーナーの立ち上がりでも重大なアクシデントが発生した。2コーナー立ち上がりでバニャイアがハイサイドを喫し、クラッシュ。バニャイアはコース中央に投げ出された。スタート直後のため、当然、ライダーたちはまだ大きな集団の状態である。コース上のバニャイアの直後にいたビンダーは、避けきれずにバニャイアの足を乗り越えるような形で接触した。
映像を見直してみると、2コーナー立ち上がりでバニャイアがリヤを大きく滑らせてバランスを崩し、その後、グリップが回復してハイサイドを起こしていることがわかる。しかし、1周目で、このときトップを走っていたバニャイアのこの転倒の原因には、疑問を感じるところがある。
当然、バニャイアの囲み取材は行われなかったので、MotoGP.comで病院から出てきたバニャイアの映像からコメントを引用する。両手の松葉杖をつきながら歩くバニャイアはバイクのフィーリングについて問われると「わからない」と答えていた。
「ウオームアップ・ラップからグリップが低かった。リヤグリップが通常のものではなかったんだ。そして大きな衝撃を受けた。普通のハイサイドではなかった。あのとき起こったことを理解するのは難しい」
このコメントから、やはりリヤタイヤにいつもとは違う何かが起こっていたと考えられる。詳しいことは、本人がジャーナリストたちの取材に応じたところで明らかになるだろう。
また、為すすべなくバニャイアに接触したビンダーは、メディカルセンターへバニャイアに会いに行き、無事を確認したという。
「本当に難しいのは、(アクシデントのあと)戻ってまた走ることだ。よかったのは、彼が動くのが見えたこと。彼は動いていて、僕は片足か両足に当たったのだとわかった。詳しくはわからないけど……。でも僕は乗り越えていて、少なくとも、まともに彼に当たったのではなかった。どのライダーにとってもひどい悪夢になった。誰かがそこにいるのを見るのは恐ろしいけど、接触する側になるのはもっとひどい気持ちだよ、ほんとに。彼が問題ないのかはわからないけど、無事で本当にただ、よかったと思う」
今回のクラッシュでは、奇しくもドゥカティ・レノボ・チームの二人が転倒を喫した形となった。二人にひどく深刻な怪我がなかったことは、このひどいアクシデントのなかで幸いだったというべきだろう。