スーパーGT:31号車TOYOTA PRIUS apr GT 2017年第6戦鈴鹿 レースレポート
2017年9月6日(水)11時1分 AUTOSPORT web
2017 AUTOBACS SUPER GT ROUND 6 鈴鹿サーキット
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
8月26日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ
観客数:2万7500人
8月27日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ
観客数:4万5000人
何か歯車が噛み合わなかった最後の鈴鹿1000km、クラッシュで無念のリタイア……
全8戦で争われるスーパーGTシリーズの第6戦、『46th INTERNATIONAL SUZUKA 1000km』が鈴鹿サーキットで開催された。今年もaprは2台のトヨタ・プリウスZVW51を走らせ、『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』を嵯峨宏紀選手と久保凛太郎選手に託すこととなった。
シリーズ序盤戦は苦戦を強いられていたものの、第5戦・富士において、本来はJAF-GTが苦手とするコースであるにもかかわらず、予選では6番手に。決勝ではタイヤ無交換でマージンを稼いだ結果、3位でフィニッシュし、今季初の表彰台に立つことになった。
本来の元気さを取り戻した『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』、そして無交換であっても最後まで性能を発揮し続けたブリヂストンタイヤとの組み合わせは、シリーズ最長のレースである、鈴鹿1000kmでこそ大いに威力を発揮しそうだ。まして伝統の一戦はこれが最後になる。歴史の終焉に名を刻むことを、チームもドライバーも大いに誓っていた。
公式練習8月26日(土)9:20〜10:55
レースウィーク最初の走行となる公式練習は、早朝まで降り続いた雨によって路面はあいにくのウェット。ただし、この後、雨が降らないことはほぼ確実であったこと、さらに鈴鹿では公式テストで十分な走り込みができていたことから、嵯峨選手が1周のみウェットタイヤを走行してチェックを行うも、その後は完全にコンディションが回復するまでピットに留まることとなった。
予想以上に路面が完全に乾くのに時間がかかり、走行再開は赤旗が出された後の、ほぼ1時間目から。今回は長丁場ということもあり、一発の速さを磨くより決勝でのコンスタントを重視。再び嵯峨選手が『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』に乗り込み、周回が重ねられていく。まず2分1秒台に乗せたところでピットイン。
続く10分間のGT300単独の走行帯にも引き続き嵯峨選手が挑み、終了間際に2分0秒882が記される。その後のサーキットサファリは久保選手がドライブ。6周を走行して、その多くを2分2秒台で走行した久保選手のベストタイムは2分2秒241。決勝重視のセットとして、想定どおりのタイムを記すこととなった。
公式予選Q1 8月26日(土)14:35〜14:50
今回もQ1担当は嵯峨選手。気温こそ31 度とあらかじめ予想していたとおりの温度だったものの路面温度に関しては37 度とやや低め。また、天気予報では日曜日もそう温度は上がらないと告げられていたこともあって、ソフトタイプのタイヤを選んで走行することとなった。
5.8kmのロングコースということもあり、アウトラップに加えたウォームアップは1周のみ。さっそく『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』のアクセルを強く踏み込んで、嵯峨選手はアタックを開始する。
セクター1〜セクター2のタイムは良好。いきなり好タイムが期待されたものの、130Rで勢い余ってオーバーシュートしてしまう。それでも、その周のラップタイムは2分0秒122。引き続き攻め立てた嵯峨選手は1分59 秒586をマーク。次の周はタイヤのピークを過ぎてしまい、2分を切ることができなかった。
この時点ではQ1突破となる14番手だが、チェッカーが振られたその周にタイムアップを果たした車両があったことから、ひとつ順位が落ちてしまい、コンマ03秒差でQ1突破ならず。
Q2で待つ久保選手にバトンを託すことはできず、決勝レースには15番手から挑むこととなったが、何と言っても1000kmにも及ぶ長丁場。戦術の駆使と追い上げによって、最後に笑うことが期待された。
嵯峨宏紀選手
「グリップが来るタイミングと、内圧が来るタイミングを合わせきれなかったというのがあって、ちょっと不完全燃焼な予選でした。ただ、長いレースなので予選の順位はあまり重要ではありませんし、むしろ作戦でなんとでも行けると思います」
「レースペース自体は悪くない予定のタイヤを使っているので、追い上げていくことは可能だとポジティブに考えています」
久保凛太郎選手
「今回僕は、サーキットサファリで5、6周しか走っていないのですが、嵯峨選手から聞いていた動きからアジャストして、特に問題点のようなところは感じませんでした。決勝をイメージした走りで周回を重ねられれば何も問題ないでしょう」
「正直言えばまだビビってアクセルを抜いているところもあるので、そこを踏んでいければ、もっと高いところでラップを刻んでいけると思います。作戦を仕掛けた方がチーム的にも機能しそうな気がしていますし、レースでは行けるでしょう。」
金曽裕人監督
「使っているタイヤが夏用なので、温め方が難しいこともあって、タイヤの内圧の上がり方とタイヤの温め方のタイミングにズレがあったようですね。130Rでフロントのグリップが得られなくて、コースアウトしたのがもったいない。もう1周待ってから行けばよかったのに。ドライバー的には行けそうな気がしたんでしょうね」
「でも、アベレージがいいのは分かっているし、淡々と走ることが可能なので、これは作戦でリカバリーします。それが十分可能なことはわかっていますから予選の順位はそんなに気にしていません。しっかり挽回して見せますからご期待ください。」
決勝レース(173周)8月27日(日)12:30〜
夏休み最後の週末、そして最後の鈴鹿1000kmということもあって、大観衆が詰め寄せた日曜日。予想どおり例年ほど暑すぎず、程よく“夏”を感じさせるコンディションとなっていた。
スタート進行の開始と同時に行われる20分間のウォームアップには、まず嵯峨選手が乗り込んでアウト〜インを行い、すぐに久保選手にバトンタッチ。3周の計測の間に2分2秒125 をマークし、再び嵯峨選手が『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』に乗り込むことに。最後の1周で2分2秒448が記されることとなった。
ひとつ予想外だったのは、決勝のスタートを控えた段階で気温は30度と予想どおりだったのだが、強い日差しが路面温度を47 度にまで高めていたことだ。これはレースウィーク一番。そのことが果たしてどんな影響を及ぼすか。
今回のスタート担当は久保選手。オープニングアップのうちにひとつ順位を上げて14 番手に。この後2周に渡って1台ずつ抜き続け、早々に12番手に浮上する。そして予定どおり早めのドライバー交代を10周目には行うことに。タイヤ無交換で嵯峨選手はコースに送り出されたこともあり、先にピットを済ませていた車両の1台を除き、前に出ることにも成功する。
やがてライバル車両が最初のピットストップを行うごと、順位は上がっていくはずだったのだが。しかし、タイヤ無交換策は予想以上の磨耗によって裏目に出てしまう。
ペースが上がらず、最終的には10秒落ちともなる2分13秒台にまで落ちてしまったことから、やむなく2回目のピットストップを早めに行うことに。ここからはしっかり4本交換とする作戦に切り替える。ラップタイムが回復した後は、まだ我慢の時と久保選手は淡々と周回を重ねていく。
60周目に再び嵯峨選手が乗り込み、71周目には1台をかわすなど『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』の調子も上々。終盤にはしっかり順位を上げてくることは確実と思われていた。
だが、16番手を走行中の87周目、130R で嵯峨選手がクラッシュ!クラッシュパッドが吹き飛ぶほどで、ピットに緊張が走るが、まもなく無事な嵯峨選手の姿がモニターに映され、一安心。しかし、レース続行は不可能で、3時間11分で『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』は無念のリタイアを喫することとなった。
残るレースは、あと2戦。今回のリタイアでランキングトップとの差は35ポイントになってしまったが、まだ王座獲得のチャンスは首の皮一枚ながら残されている。まずはタイ、チャーンサーキットでの第7戦に今季初優勝を誓う。
嵯峨宏紀選手
「自分自身、状況的にはっきりしない部分はあるんですが、何もできなくて、そのままクラッシュパッドへ。チームには申し訳なく思いますし、非常に残念です。そもそも最初にチョイスしていたタイヤが思いの外、磨耗が激しくて当初予定の周回数までつなげられなくて」
「最初の僕のスティントは無交換で行ったんですが、10秒落ちでしか走れない状態になっていたんです。そこから先は4本、新品で無交換もやらないことにして行っている途中でぶつかってしまい悔しいです」
久保凛太郎選手
「もう、タラレバしかないから何とも言えませんが、本当にレースは荒れましたので、最後まで走れていれば、間違いなく上位ポイントは獲れていたでしょう。何はともあれ、大きなクラッシュだったのに、嵯峨選手に怪我がなくて良かったです」
「次のタイはどうか分かりませんが、最終戦のもてぎは絶対に相性のいいコースなので、まだ上に行けるチャンスはあると思うので、頑張ります」
金曽裕人監督
「優勝狙いで、作戦はチャレンジしていこうという傾向だったんですが、最初に履いたタイヤが思いの外、路面温度が上がってしまったことでロング行けるはずが行けなくて、作戦が一発目から崩れてしまった……」
「でも、次に履いたタイヤで完全にリカバリーできて、『よし、これは見えてきた』というタイミングで宏紀が、行き過ぎてしまってクラッシュしてしまいました。怪我がなかったから良かったけど、そこまでプッシュする必要はなかった。もっとレース展開を感じながら走ってほしかった」
「チャンピオン獲得には優勝しかない、というドライバーの責任感が裏目に出てしまったように思います。今年はまだポイントがばらけた状態にもあるので、僕らにはまだチャンスがある。チャンスがあるから、あと2戦ですが精いっぱい戦うつもりです。」