FIAが主導するGT3規定ベースの電動GT選手権に向け、GMが興味「より魅力的な選択肢のひとつ」

2021年9月6日(月)13時0分 AUTOSPORT web

 2021年の4月に創設がアナウンスされた、FIA(国際自動車連盟)による新たな電動GT選手権『FIAエレクトリックGTチャンピオンシップ(仮称)』に向け、ゼネラルモーターズ(GM)でスポーツカーレース・プログラムのマネージャーを務めるローラ・ウォントロップ・クラウザーは、将来に向け評価している「より興味深いシリーズのひとつ」だとして参入の可能性を示唆。本格的EVシフトを見せる本業との関連性を持つ活動として検討を進めていることを明かした。


 この4月にもその技術概要が公にされ、続く5月にはディスカバリー社とその子会社であるユーロスポーツ・イベントによるシリーズプロモーター就任も発表された新EV選手権は、現在の市販モデルに電気自動車を展開する各メーカーやブランドに対し、モータースポーツを通じて電動モビリティの関連技術開発を行うプラットフォームの提供を目的としてグランドデザインが描かれた。


 そのため、現時点でカスタマーレーシング向けにGT3規定モデルを展開する多くのマニュファクチャラーに対し、既存レースカーの「アーキテクチャーと特定の設計要素」を活用し、その骨格とベースシャシーを利用して「電動モデルに変換」できる、コンバート案の展開が計画されている。


 これにより最大出力430kW(約577PS)、最低重量1490〜1530kgの範囲に収められた“GT3コンバートEV”の活用が見込まれるその新シリーズは、世界中の常設サーキットを舞台に2023年のラウンチを予定しており、翌年には北米でのシリーズ戦を中心にヨーロッパ、アジア、中東地域でのリージョン選手権開催も目指しているという。


 まだ具体的なシリーズ関与へのタイムラインは示していないものの、前出のクラウザーは自動車界の巨人たるGMにとっても「確実に調査に値する」新たなモータースポーツ・プログラムであるとして、終了が決まったLM-GTEのファクトリー活動に取って代わる可能性があることを匂わせている。


 その背景には、現在開発が進行中である2024年登場予定のC8型シボレー・コルベットをベースとした新型GT3車両の存在があることに加え、さらなる噂として2023年に市場投入が計画されている1000PS級の出力を誇るC8コルベットのプラグイン・ハイブリッドモデル、コードネーム“E-Ray”を使用する案も囁かれている。


 直近には市販EVの先駆的モデルである『Volt(ボルト)』にバッテリー・リコールの問題が発生するなど不安要素を抱えつつも、現在GMのEVモータースポーツ活動としてフル電動ブランドとして復刻させた“HUMMER(ハマー)”の商標を電動ワンメイクSUVによるオフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』で展開しており、市販ラインアップでは2025年までにグローバルで30車種のフルEVを投入する“オールエレクトリック・フューチャー”の計画を推進している。

FIAが主導する新たな電動GT車両は、現在のICE(内燃機関)を搭載するGT3カーと同等のパフォーマンス・ウインドウが狙われる
市販ラインアップでは2025年までにグローバルで30車種のフルEVを投入する“オールエレクトリック・フューチャー”の計画を推進している


■GMが電動GTシリーズに参加するかは「まだ未定」


「私たちは間違いなくこのエレクトリックGTに注目していますし、これは注目すべきもっとも興味深いもののひとつだと考えています」と語ったクラウザー。


「FIAがその計画を主導し、計画実現に向け動き出していることを考慮しても、それはこの新シリーズに多くの分野で安定性をもたらすでしょう。私としても、彼らがそのプログラムに多大な努力を払ってきたことを知っていますし、私たちも確実に調査を進めているところです」


 GMがこの新チャンピオンシップに向けた直近のテクニカル・ワーキング・グループに参加していることが明らかになっているものの、クラウザーはその潜在的な参加可能性については「ノン・コミットメントのままである」とクギを刺した。


「私たちがシリーズの初期段階に飛び込むかどうかはまだ未定です。GMの動向が注目されているかもしれませんが、現段階で言えるのは『(参戦の可能性が)検討され、調査されている』ということだけです」


 また彼女は、GM自身が本業で“オールエレクトリック・フューチャー”を標榜しているにも関わらず、モータースポーツでは内燃エンジン開発プログラムの余地があり、その技術開発における「進化の可能性を信じている」と語る。


「レーシングにおける“電化”がホットな話題になって久しいし、私たちの会社もある時点から商品群全体でそちらの方向に舵を切ることになる」と続けるクラウザー。


「でもル・マン24時間を筆頭に、ロレックス24(デイトナ24時間)などバッテリーテクノロジーではまだ到達できない、多くの遺産と歴史があるのも事実ね。確実に見据えなければならないのは、私たちが進むときの足掛かりだと思っている。レーシング部門の活動では、しばらくの間、マシンにICE(内燃機関)を搭載する予定よ。さらに他のテクノロジーを導入する機会が訪れるかもしれないしね」


「ICEプログラム以外にも、エアロダイナミクス、高度なシミュレーション技術など、私たちがレースから学んでいることはたくさんある。EVが搭載されているか、ICEが搭載されているかに関わらず、それが量産技術でもカギになる」


「これらの学習と技術移転が継続して行なわれている限り、モータースポーツは理にかなっており、私たちはそれを続けていくつもりです。私たちが望むすべてのものを提供する電気シリーズが立ち上がり、人々が大勢参加しファン層が増えれば素晴らしいと思う。来たるべきその日に向け、グリッド上で何らかの成果を達成する準備はしておかなければね」

GM(ゼネラルモーターズ)でスポーツカーレース・プログラムのマネージャーを務めるローラ・ウォントロップ・クラウザー
Gen7に移行するNASCARなども含め「内燃エンジン搭載カテゴリーでの活動も継続する」とクラウザー

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