小田凱人は「最高のテニスした」 “名勝負”を生んだ好敵手ヒューエットが称賛 大逆転負けも「金メダルより価値がある」

2024年9月8日(日)16時30分 ココカラネクスト

小田を祝福するヒューエット。(C)Getty Images

 瀬戸際からの大逆転劇だった。

 現地時間9月7日、パリパラリンピックの車いすテニス男子シングルス決勝がローランギャロスで行われ、初出場で世界ランキング2位の小田凱人(18、東海理化)は、フルセットの末に同1位のアルフィー・ヒューエット(26、英国)を撃破。この種目で史上最年少の金メダリストになった。

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「やばい……カッコよすぎる、俺」

 試合後、テレビのフラッシュインタビューで小田は思わず感嘆の言葉を漏らした。まさに究極の状況で生まれた名言と言える。

 単なる驕りではない。18歳がエモーショナルになり、己に痺れたのは、最終第3セットの第9ゲームで崖っぷちに立たされていたから。過去の対戦成績で7勝8敗と負け越しているヒューエットに、マッチポイントを握られていたのだ。

 世界ランク1位の猛者に先行された小田。「正直、負けると思っていました」という本人の言葉にあるように、心身ともに追い込まれていたのは想像に難くない。だが、ここから18歳の若武者は特大のポテンシャルを発揮する。

 なんと怒涛の4ゲーム連取。ヒューエットのサービスだった第12ゲームにいたっては、3連続ポイントを奪取し、一気に逆王手をかける。そして最後は強烈なフォアハンドリターンで雌雄を決した。

 赤土のコートで繰り広げられた熱戦。「マジで俺は今日、確定したことがある。俺はこのために生まれてきた。ここで優勝するために、金メダルを取るとるために俺は生まれてきました」と漏らした小田。その迫力を直に感じたヒューエットも若き日本人を称賛している。

 英紙『The Independent』の取材に応じた26歳は、「金メダルまであと1ポイントだった状況は、ずっと心に残ると思う。2、3インチの差で逃した金メダルを手にできなかったのは、正直なところ苦しいよ」と吐露。その上で小田のパフォーマンスを振り返っている。

「彼はパラリンピックの決勝でマッチポイントを食い止めた。あれだけの状況で萎縮することなく、最高のテニスをやった。彼は本当に最高のテニスを披露したんだ。個人的には、あそこで試合の流れを掴めなくなってしまったような気がして、そこが一番悔しい」

 さらに小田に「今日の僕らの試合はスポーツ史に残る」と伝えたというヒューエットは、「負けを認めるよ。ただ、この試合で僕らが車いすテニスのために、そしてパラリンピックのためにしたことは、きっと金メダルよりも大きな価値がある」と胸を張った。

 名勝負に、グッドルーザーあり——。小田のドラマチックな勝利にはヒューエットという好敵手の存在があったことは記憶しておきたい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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