フェラーリの上訴は棄却。赤旗後の“延長”が議論を呼んだWEC第3戦スパの結果がようやく確定
2024年9月11日(水)9時40分 AUTOSPORT web
FIAの国際控訴裁判所は、5月のWEC世界耐久選手権第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースの結果に対するフェラーリの、却下された抗議に対する上訴を棄却した。これにより、ハーツ・チーム・JOTAがこのレースの公式優勝者であることが確定した。
フェラーリの耐久レース部門のグローバル責任者であるアントネッロ・コレッタは、フェラーリが最初の抗議が棄却された後に上訴したことを6月に認めていた。
これは、アール・バンバーとショーン・ゲラエルのクラッシュにより、2時間近く赤旗中断された後、FIAがレースの全体時間を延長する決定を下した後に起こったものだった。
レースを延長する決定により、フェラーリは勝利を逃した可能性が高い。なぜなら、JOTAの12号車とポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車の2台のポルシェは赤旗直前にピットインしており、レースが再開され他車がピットインすると1位と2位にポジションを上げたからだ。
フェラーリ、FIA、JOTA、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの代表者は、9月3日にジュネーブで聴聞会に出席し、その決定が1週間後に発表された。
■それぞれの主張とその根拠
フェラーリの上訴は、スチュワードの決定第80号に対するもので、その中では、レースを延長したスチュワードの決定第71号と暫定順位の両方に対して控訴したと説明されている。
控訴の中でフェラーリは、スチュワードがレース時間を7時間44分に延長したことでWECのスポーティング規則に違反したと主張した。第14条3.1項はレース時間の変更を認めてはいるが、レース継続時間を6時間と定めている大会規則書の附則1に規定されている競技時間を超えることはできないと考えているためだ。
さらにフェラーリは、レースが不当に延長された後に提出した抗議は、WECスポーティング規則の第7.2.6条とインターナショナル・スポーティング・コード(ISC)の第13.2.1条および第13.7条に基づき、レース延長の決定に対して抗議する権限があったと主張し、不当であると信じている。
加えてフェラーリは、レース延長の決定を正当化する決定は、ピットストップのタイミングと使用されたタイヤに基づくスポーツの公平性の観点から正当化できないと主張し、その結果、2台のポルシェに「やすやすと」1位と2位でフィニッシュする機会が与えられ、チームはWECのマニュファクチャラー・ランキングで30ポイントを失ったと付け加えた。
これに対しFIAは「(ISC)第13.2.1条を正しく読むと、スチュワードの決定には抗議できず、上訴のみ可能である」と主張し、フェラーリは「(ISC)第13.7条で定められた抗議の有効性に関する要件を満たしていない」としている。
また、レースが中断された場合、赤旗期間はレース時間の一部とはみなされないとし、「公式レポートではレースの所要時間が6時間以上であるとは示されていないため、上訴人はレースが7時間44分続いたと主張することはできない」と述べている。
さらに、ポルシェが「やすやすと」1位と2位を得たというフェラーリの主張に対してFIAは「レースが11分間だけ再開されていれば、自社の車がトップの座を維持していたという主張を裏付ける証拠を何も提供していない」とフェラーリに反論した。
レースの暫定順位に対する抗議に関して、FIAは「控訴人がスチュワードの決定71号に対して抗議を提出し、その結果として暫定順位に対しても抗議を提出したことを確認したため、控訴人は抗議によって、そしてこの控訴によって、最終的かつ拘束力のある決定71号に異議を唱えようとしたことを示しており、控訴は却下されるべきである」と主張した。
一方、JOTAとポルシェ・ペンスキーも同様の主張を展開し、スチュワードの決定は抗議の対象ではなく、したがってフェラーリの最初の抗議は正当に却下されたと述べ、レースを延長するという決定は「適切」かつ「正当に行われた」と述べた。
■「スチュワードの決定には抗議できない」。ただし“注意”も
今回の判決で控訴裁判所はスチュワードの決定80号を支持する判断を下し、フェラーリの控訴はレースを延長するという決定自体ではなく、抗議の最初の却下に対してのみ提出されたと指摘し、次のように述べている。
「(ISC)の第13.2.1条および第13.7条を慎重に検討した結果、裁判所は、スチュワードの決定には抗議できず、そのような決定を訂正、または(それに対し)異議を申し立てるには、事務上の誤りの訂正、審査権、または控訴の3つの方法しかないと判断した」
また、第13.2.1条では、抗議の対象となり得るケースとしてスチュワードの決定は挙げられておらず、第13.7条では、抗議は競技者または前述の第13.2.1条に挙げられているケースのひとつに向けられるとされている。
さらに、裁判所は「この問題に関して上訴人が提出したすべての主張を却下し、スチュワードの決定には抗議できないと結論付ける」と述べている。
しかし裁判所は、“フェラーリは暫定順位に抗議できなかった”というFIAの主張を却下するよう注意した。これは、第13.2.1条の上訴理由リストに「明示的に記載」されているからである。
同裁判所は次のように記している。
「控訴人がスチュワードに提出した抗議は、その点では認められるものであり、裁判所は、スチュワードの決定は抗議できないという、正当ではあるが唯一の理由で抗議を却下したスチュワードは間違っていたと結論づける」
「スチュワードは、その点において暫定順位の問題に明示的に対処すべきであった」
しかし裁判所は、フェラーリが、ISCが設定した1時間の期限内に決定71号に対して上訴しなかったため、決定は「最終的かつ拘束力を持つ」と述べている。
判決は次のように締めくくられている。
「控訴人は暫定順位、あるいは最終順位に対して他に反論していないため、この点でも控訴は棄却されなければならない」
この判決の結果、カラム・アイロットとウィル・スティーブンスの12号車ポルシェ963が、正式にレース優勝者と宣言された。
なお、FIAのISC第13.2.1で明示されている抗議の対象項目は、以下のとおり。
・競技者またはドライバーのエントリー
・コースの長さ
・ハンディキャップ
・ヒートまたは決勝の構成
・競技中に発生した疑いのあるエラー、不正行為、または規則違反
・車両が規制に準拠していない疑い
・競技終了時に発行される暫定結果
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