「GT3より難しいけどおもしろい」/GT300マシンフォーカス:スバルBRZ R&D SPORT

2017年9月14日(木)11時52分 AUTOSPORT web

 2017年シーズンは15車種30チームが熾烈なバトルを繰り広げるスーパーGT300クラス。数多くある車両から1台をピックアップし、ドライバーや関係者にマシンの魅力を聞いていく。


 今回は、2017年からミッションを大きく変更し、トランスアクスル化したスバルBRZ R&D SPORTにフォーカスする。


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 BRZがGT300に投入されて2017年シーズンで6年目。JAF-GTであるBRZはシーズン中もマシンの開発が許されており、つねに改良が行われている。そんなBRZが、2017年に駆動系のレイアウトを大きく変更した。ミッションをトランスアクスル化したのだ。


 トランスアクスルとは、通常エンジンの近くに接続されるトランスミッションをリヤ側に設置するもの。その分、エンジンも車体の中心にやや近いところに設置することが可能になり、車体の前後重量バランスを理想的な50:50へ近づけることができる。


 トランスアクスルという仕組みは、チームが2012年まで投入していたレガシィGTで採用されていたが、このBRZでは初導入となる。

SUBARU BRZ R&D SPORT


 BRZの特長といえば、フロントの車軸よりも低く設置された水平対向エンジンの重心の低さとパッケージングのよさを生かしたコーナリング性能。トランスアクスル化は、このBRZの長所をさらに伸ばすことが狙いとなる。


 2015年からR&D SPORTに加入しBRZのステアリングを握る山内英輝は、BRZにとって2017年最大の変更点、トランスアクスル化したメリットについてこう語る。

SUBARU BRZ R&D SPORTをドライブする山内英輝


「ドライバーとしては、リヤのトラクションが増えたことが大きなメリットです。決勝レースのロングランでも安定して速く走れます」


「それから、タイヤのマネージメントもしやすいですね。2016年は(リヤタイヤの)空転が多かったんですが、2017年の方がよりトラクションがいいので、タイヤのライフもよくなって、コントロールがしやすくなりました」


「トランスアクスル化する前の2016年までは、(減速時に)時々ギヤが落ちにくいことがありました。リヤタイヤ(のグリップ)が落ちてきた状態でブレーキを踏むと、(荷重がフロントに寄るため)リヤの姿勢が浮いて(リヤタイヤが空転するような状態になり)ギヤが落ちなかったりしたんです。(トランスアクスル化した)今はそれがまったくないので、そういう部分でも助けられています」

SUBARU BRZ R&D SPORT
SUBARU BRZ R&D SPORT


■トランスアクスル化は作業時間短縮にも貢献


 トランスアクスル化したことによるメリットを感じているのはドライバーだけではない。チームの宍戸克幸チーフメカニックによれば、トランスアクスル化は作業時間の短縮にも貢献しているのだという。


「元々、BRZは自分たちで設計から製作までできます。僕たちメカニックがセットアップするのに『アジャスト部分はこうなっていた方がいい』『車高をいじるには、このあたりに調整する場所があった方がいい』ということをある程度反映できたり、整備しやすいように考えて設計から製作までできる。それがBRZというクルマの特徴です」


「2017年からBRZがトランスアクスル化されて、(車体の)エンジンルームから後ろが全部変わりました。2016年までのBRZはトランスアクスルではなかったので、例えばギヤボックスを下ろすためには多くのパーツを外さねばならず、作業量が多かったんです」


「それが、2017年のクルマでギヤボックスを下ろすときは、これまでの半分以下ぐらいの時間で済むようになりました。トランスアクスル化は、僕たちメカニックにとってもメリットがありますね」


 ドライバーやメカニックが、そのメリットを語るトランスアクスル化だが、その一方で山内によれば「まだ改善点を見つけられていない部分がある」という。このレイアウト変更によってホイールベースが延長されたのだが、それによってフロントの回頭性が低下しているというのだ。


「ホイールベースが伸びた分、安定性は増したのですがフロントの入りがよくないんです。でも、それを改善できれば予選でポールポジションを取れるでしょうし、上位で安定できると思いますよ」


■ダンロップタイヤとのマッチング、そしてGT-Rとの違い


 BRZは2015年からダンロップタイヤを履いている。タイヤメーカーによる争いが激しいスーパーGTにおいて、タイヤが及ぼす影響は言うまでもなく大きい。3年目となるダンロップタイヤとのマッチングについて、BRZにダンロップが採用された2015年からチームに加入している山内はどのように感じているのか。


「1年目(2015年)は初めてということもあり、フロント(タイヤ)の径も小さかったので苦労がありました。けれど、2年目(2016年)にフロントの径を大きくしてことでBRZのよさの旋回性能も高くなりましたし、どんどん走ることによってBRZに合ったタイヤも出てきたんです」


「2016年の序盤はタイヤに苦しめられて、リヤの摩耗が激しかったりと大変な部分がありました。でも、ダンロップさんが改善してくれたので、今ではリヤタイヤのみ交換という戦略も取れるようになりました」


 実際、R&D SPORTは第5戦富士でリヤタイヤのみを交換する作戦をとり、表彰台まであと一歩の4位で決勝レースを終えている。また、第6戦鈴鹿1000kmではタイヤ無交換で挑んだスティントもあり、BRZとのマッチングは3年目にして熟成が進んでいると言えそうだ。


 また、山内は今シーズン、スーパー耐久シリーズにもENDLESS SPORTSからENDLESS ADVAN GT-R、つまりニッサンGT-RニスモGT3で参戦している。JAF-GTマシンであるBRZと、GT3マシンのGT-Rにはどのような違いがあるのだろうか。


「GT-Rはジェントルマンドライバーも乗りやすいクルマというイメージです。トルクがある分、少しミスしてもリカバーしやすいんです。ただ、GT-Rには独特の走らせ方がありますね。ロールが大きいし(車重が)重たいので、いかにタイヤに(荷重をかけて)グリップを持っていくかというところを、とても繊細にやっていかないと難しいです」


 一方、コーナリングマシンであるBRZは、旋回とコーナー脱出の速さがドライバーに求められるという。


「(BRZは)富士(スピードウェイ)では圧倒的にストレートが遅いのに、1周回って帰ってくると周りと変わらない(ラップ)タイムなんです。それだけコーナー区間は速いのかなと思いますね」


 BRZのエンジンは2リッターターボ。GT300に参戦するライバル車たちが排気量4000ccほどのエンジンを積んでいるのに比べると、パワー不足は否めない。そんなライバルたちと渡り合うべく、BRZがストレートスピードに代わって備える武器が、コーナリングでのアベレージスピードの高さなのだ。


「ターボ車なのでエンジンの回転数を落とさないようにコーナリングを速くしないといけないし、一度ボトムスピードを落とし過ぎてしまうと、加速が遅れることもあります。そこは他の車両と比べるとコントロールが難しいです」


 山内はBRZをこう表現する。


「乗っている側としては、BRZの方が難しいけれどおもしろいですね」

SUBARU BRZ R&D SPORT


 第6戦鈴鹿1000kmを終え、R&D SPORTはチームランキングで7位。ドライバーランキングでも、井口卓人と山内はともに7位につけている。残るは第7戦タイ、そして最終戦もてぎだ。残り2戦、BRZはさらなる飛躍を目指す。


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