浦和・関根貴大、「24」番を背負い躍動。21歳のMFが追いかけてきた原口元気の背中

9月15日(木)11時38分 フットボールチャンネル

「相手が強ければ強いほど、思い切って仕掛けていける」

 終盤戦に突入するセカンドステージで優勝争いを演じている浦和レッズを、ひときわ眩しい輝きを放つドリブラーがけん引している。167センチ、61キロのチーム最小兵にしてレギュラーでは最年の21歳、MF関根貴大はハリルジャパンと3シーズン目を迎えたヘルタ・ベルリンで大ブレークの予感を漂わせている永遠のヒーロー、FW原口元気の背中を追いかけながら、成長への階段を駆けあがっている。(取材・文:藤江直人)

——————————

 自陣から仕掛けたドリブルでボールを前へ運び、センターサークル内で利き足の左足を振り抜いた瞬間、浦和レッズのボランチ・柏木陽介はミスを犯したと天を仰ぎかけた。

 30メートルを超えるロングパスの標的は右ワイドの関根貴大。右タッチライン際から真横へダッシュし、柏木がパスを放った刹那に右へ90度旋回した背番号「24」は、ペナルティーエリア内を目指していた。

 サガン鳥栖をホームの埼玉スタジアムに迎えた、10日のセカンドステージ第11節。ともに無得点で迎えた前半41分に試合は大きく動きかけたが、左足のインサイドに引っかかりすぎたのか、柏木のパスは右タッチライン方向へ大きくずれてしまう。

「オレがボールをもったら誰かが動き出す、というのがあるんだけど。言うたらパスはもっと丁寧に出さないといけない。今日はちょっとパスの質が低すぎた」

 試合後の取材エリアで、柏木は苦笑いしながら自身のパフォーマンスに首を傾げた。もっとも、覚悟したミスを帳消しにするどころか、ゴールにまで結びつける関根のスーパープレーが直後に飛び出す。

 スプリントする軌道をさらに右へと変えた関根は、コーナーフラッグ付近でボールに追いつく。そして、反転から素早く切り返す、流れるような動きで背後に迫ってきていたMF福田晃斗を置き去りにする。

 このとき、ボールが大きく前へこぼれてしまう。第二の刺客、DF吉田豊にすかさず間合いを詰められ、目の前に体を入れられたとき、関根は無意識のうちに自身の“勝負哲学”を実践していた。

「取られたら取り返せばいい、というのが常に自分のなかにある。1対1の場面で、抜くか、ボールを取られるかというのがシンプルで見ていて楽しいだろうし、僕自身もやっていて楽しい。それに、相手が強ければ強いほど、思い切ってどんどん仕掛けていけるので」

 ボールを収めようとする吉田の右側に生じた、わずかな隙を見逃さなかった。金崎夢生(鹿島アントラーズ)や小林悠(川崎フロンターレ)といったストライカーたちを沈黙させてきた猛者の背後から、素早く回り込んでは再び体を入れ替えた関根は、次の瞬間、必死に右足のつま先をボールにヒットさせる。

脳裏にあった原口元気の残像

 DF森脇良太へ下げられたボールはMF武藤雄樹、FWズラタンとペナルティーエリアに沿って美しくつながり、すでにマークする相手がずれていたサガン守備陣をさらに混乱に陥れる。

 仕上げ役は左ワイドの宇賀神友弥。ズラタンが落としたパスに、約20メートルの距離から丁寧に右足を合わせる。狙いすました一撃は、日本代表GK林彰洋が守るゴールの左隅へと吸い込まれていった。

「(柏木)陽介君ももうちょっと中に出すというか、自分としてペナルティーエリアの中でキーパーと1対1になるくらいのイメージだったんですけど、ちょっと外に流れて。

 ただ、チーム全体としても切り替えの速さというものはすごく意識している部分なので、上手く体を入れ替えられたと思います。そこから上手くつないで、またつないで、シュートも見事でしたよね。なので、あれは別に(自分がゴールに)関わったという感じはしないんですけど」

 ベンチ入りした18人のなかで最年少の21歳は謙遜することしきりだったが、「攻」から「守」、そして「攻」と目まぐるしく自らの役割を変えた数秒間は巧さと強さ、そして泥臭さが完璧なハーモニーを奏でていた。

 結果として関根の頑張りが福田と吉田の2人を翻弄し、森脇と武藤、そしてズラタンが相手のプレッシャーをほとんど受けることなくパスをつなげる数的優位な状況を生み出した。

「いやぁ、そう言ってくれるだけで、ありがたいことです」

 今度ははにかみ笑いを浮かべた関根の脳裏には、いまもなお強烈な残像が刻まれている。テレビ越しに日本代表を応援した先のワールドカップ・アジア最終予選。ピッチの上では、憧れの存在が躍動していた。

「ホント、日本代表のなかで一番戦っていたと思います」

 初戦でUAE(アラブ首長国)代表にまさかの苦杯をなめて迎えた、6日のタイ代表との第2戦。先発に抜擢されたFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)の一挙手一投足に、関根は心を震わせていた。

 豪快なヘディングで均衡を破った、前半18分の先制弾だけではない。サイドからの仕掛け。相手ボールになったときの切り替えの速さ。負けてたまるか、という闘志。すべての面で原口は異彩を放っていた。

「攻撃だけではなく、守備という部分を誰よりも意識してプレーしていたと思いますし、実際にそれが(テレビ越しに)伝わってきた。ボールをもったらグイグイいくところはそのままだったし、特に右サイドでボールをもったときのプレーの幅というものが、すごく広がっていると感じました。守備でもあれだけ頑張って走れるのはすごいこと。ああいうプレーをすればチームとしても助かるはずなので、自分も見習っていきたいと思いました」

「コイツがいるので、オレは何も心配していません」

 レッズでプレーしていたときから、左サイドは「原口ゾーン」と呼ばれた。タッチライン際からドリブルでカットインして、スピードに乗った状態から右足で放つシュートは対戦相手の脅威になった。

 その「原口ゾーン」はブンデスリーガ仕様でさらにパワーアップ。加えて右サイドからもドリブル、シュート、味方とのコンビネーションを駆使した崩しと多彩なバリエーションを搭載していた。

 レッズの育成組織出身の偉大なる先輩として。そして、左右の両サイドを主戦場とする快足ドリブラーとして。4歳年上の原口の眩しく、大きな背中を関根はずっと追いかけてきた。

 迎えた2014シーズン。関根の昇格とともに、2人はレッズで初めて同じ時間を共有する。そして、ヘルタ・ベルリンへ完全移籍するまでの約半年間で、原口は自分の後継者は関根だと確信していく。

 原口の壮行試合を兼ねた、2014年6月1日の名古屋グランパスとのナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)予選リーグ。埼玉スタジアムのピッチ上で、原口はファンやサポーターへこんな言葉を残している。

「コイツがいるので、オレは何も心配していません」

 コイツとは、試合後のセレモニーで原口への花束贈呈役を担った関根。この瞬間、ルーキーはある決意を固めている。オフになって、背番号を「26」から「24」に変えたいとフロントに申し出た。

 レッズの「24」番は、原口がルーキーイヤーの2009シーズンから5年間にわたって背負ってきた。憧れの存在から託されたバトンを、背中の重みとともに引き継いでいく覚悟の表れでもあった。

 背番号の変更が認められた昨シーズン。5月のJ1月間MVPを受賞するなど、史上初の無敗でのファーストステージ制覇に大きく貢献した関根はこんな言葉を残している。

「ようやく背番号を意識しないようになったけど、浦和レッズのサポーターの方々は期待してくれていると思うし、その期待に恥じないプレーをしようと常に言い聞かせながら試合に臨んでいます」

原口に刺激を受け、埼スタで躍動

 レッズのレギュラーとして、無我夢中にプレーしてきた1年半あまり。成長したという自負を少なからず感じていたはずだが、原口はブンデスリーガでもまれながら、はるか先を突っ走っていた。

 タイ代表戦を観戦しながら、現時点における原口との“差”を見せつけられてから4日。心技体のすべてで刺激を受けたからこそ、関根は埼玉スタジアムのピッチで誰よりも躍動した。

 総走行距離11.313キロはレッズでナンバーワン。スプリント回数も武藤の22回に次ぐ17回を数えた。テレビ越しに見た原口を励みにしながら、攻守両面でがむしゃらに走り回った。

 先制点から3分後の前半44分。キャプテンのMF阿部勇樹が、自陣から猛然とドリブルで駆けあがる。柏木に続く意外性に富んだプレー。冷静沈着な35歳のベテランは、関根の動きを見逃さなかった。

 関根は3バックの右を務める森脇良太と意思疎通を図りながら、攻め上がるときには一人が中へ、もう一人がタッチライン際へそれぞれポジションを取るようにしていた。果たして、阿部がオーバーラップしてきたときには、関根がゴール前に生じたサガン守備陣の“ギャップ”にフリーで走り込んでいた。

 スルーパスを受けた関根は、一瞬のタメを作って武藤を最終ラインの裏へ走らせる。そして、振り向きざまに利き足とは逆の左足から繰り出したスルーパスで2点目をアシスト。勝ち点1差の3位で埼玉スタジアムに乗り込んできていたサガンの戦意を、わずか3分間で萎えさせた。

「何だか自分っぽくないアシストでしたね。左足で、ちょっと陽介君チックな。いつもだったら、あのままモリ君(森脇)にパスが出るんですけど、相手がちょっと食らいついていたので。そこを阿部さんが判断して、自分のほうにボールが出てきた。

 最終ラインやボランチの選手がああやってボールを前へ運んでくれれば、よりコンパクトにパスをつなぐことができるし、攻撃の選手もやりやすい。本当にいい形が出たと思います」

代表への視線。ライバルになる可能性も

 充実した表情とともにアシストを振り返る関根に、取材の輪が解けたあとにひとつだけ聞いてみた。背番号「24」にふさわしいプレーができていると実感しているのか、と。

「うーん、まだまだじゃないですか」

 予想通りの反応を示した関根は「ゴールが少ないので」という言葉も残している。今シーズンはここまで2ゴール。昨シーズンは6ゴールをあげているだけに、チャンスを作るだけでは満足できないのだろう。

生年月日が「1993年1月1日以降」という出場資格を有し、招集への待望論が常に沸きあがりながら、関根はリオデジャネイロ五輪に臨んだU-23日本代表のなかに居場所を築けなかった。

 しかし、悔しさや無念さは振り返るためではなく、未来への糧にするために存在する。関根の視線はすでに原口と共演できる現時点で唯一の場所、年齢制限にとらわれないA代表の戦いへと向けられている。

「一緒に戦えればベストですよね。そこ(A代表)が目標ですけど、逆にいえばライバルになるのかな」

 競い合う相手が強いほど燃える。いつか訪れると信じる“そのとき”を思い描きながら、「ライバル」という言葉に熱い想いを込めた関根に呼応するように、数時間後には原口もドイツの地で大暴れを演じる。

 現地時間10日のインゴルシュタットとの第2節で、2つのアシストをマーク。チームの快勝に貢献して、フライブルクとの開幕戦に続いてリーグ公式サイトが選出するマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。

 それでも、到底満足できないのだろう。試合後に更新した自身のツイッターやインスタグラムで、原口はこんな言葉をつぶやいている。

「連勝。これを継続して、次はゴールを求めていきたい」

 残り6試合となったセカンドステージ。サガンを蹴落としたレッズは勝ち点(25)と得失点差(+12)でフロンターレと並び、総得点で「4」及ばない2位でしっかりと追走している。

 悲願の年間チャンピオン獲得へ。レッズの右サイドに君臨する167センチ、61キロの「小さな巨人」が放つ輝きが、ドイツから伝わってくる刺激を触媒としながらますます眩くなっていく。

(取材・文:藤江直人)

フットボールチャンネル

「原口元気」をもっと詳しく

「原口元気」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ