DeNA大和の光るベテラン力。目指す頂へ「あの悔しさを晴らしたい」

9月15日(日)6時37分 Sportiva

 誰もが肝を冷やしたに違いない。

 9月14日のヤクルト戦、8回裏、坂本光士の投じた145キロのストレートがダイレクトで大和の右足首にヒットした。バッターボックスで卒倒した大和は苦悶の表情を浮かべ立ち上がれず、そのまま担架で運ばれグラウンドを去っていった。ざわつく客席、慌ただしくなるベンチ、たれこめるような重い空気が横浜スタジアムに漂っていた。試合後、自ら車の運転をして帰路につき、15日の中日戦にも出場の意思を示した、という情報もあり、ベイスターズにとって貴重な戦力を失わずにすみそうだ。


ベイスターズに移籍して2年目、今やチームに欠かせない存在になっている大和

 
この数日前、大和に話を聞いていた。

 持ち前の守備力を買われ、昨シーズンはセカンドや外野を守ることがあったが、今シーズンは本職であるショートに専念し、打っても1番や9番といった難しい打順をこなしながら、ここまでチームを支えている。

 DeNAは春に10連敗を喫し最下位に沈む苦しい状況もあったが、浮上のきっかけとなった交流戦で大和は2度のサヨナラ安打を放ち、チームに勢いをもたらせた。

 打率こそシーズン当初から2割3分台だが、得点圏打率は3割近くをマークし、とくに満塁の場面では11打数6安打(成績は9月12日現在)と勝負強さを見せている。大和は「たまたまですよ」と謙遜するが、勝負どころで頼れる選手であることは間違いない。

 今季の大和のバッティングの特徴は、センター方向へのヒットが多くなったことだ。内角の難しいボールも、巻き込むようなスイングでヒットにする場面が目立つ。「極端に言えば、試合ごとにフォームは変えています」と語る大和だが、現在のバッティングに大きなヒントを与えたのがチームメイトの宮崎敏郎だった。大和はシーズン前、宮崎にアドバイスを求めた。

「最初に聞いたのは、バットの軌道についてです。基本的に長打を狙うためには、バットを上から落とすといったイメージなんですけど、宮崎のバッティングを見ていると、上から振っているようで、実際のところは下から出ている。

 もしかしたら、自分ものその方があっているのかもしれないと思ったんですよ。実際、そうやってスイングすると、インコースの厳しいボールでもさばけるようになりましたからね。いいスイングができている時は、やっぱりヒットが出ますよね」

 もともとプルヒッターだった大和だが、右足を軸にしたコンパクトなインサイドアウトのスイングで、今はセンターから逆方法(ライト方向)を意識している。独自性の高い宮崎のスイングは到底真似できるものではないが、大和はエッセンスを取り入れ、確実に自身のバッティングのレベルアップにつなげた。

 かつては可能性を広げるためスイッチヒッターに挑戦したこともある大和だが、その飽くなき探求心は、若い選手が多いDeNAの手本になっている。

「常に野球は変化しているわけですし、相手からも研究される。だから、自分から変わっていかなければいけないんです。年齢も年齢ですし、常に危機感を持って日々を過ごしています」

 若手への影響力と言えば、守備における所作や振る舞いもそうだろう。ピンチの場面のみならず、絶妙なタイミングで大和はマウンドに向かい、ピッチャーに声をかける。今永昇太をはじめDeNAの投手陣は、大和の何気ない言葉に助けられることが多いのだと言う。

「そこは確かに意識していますね」

 大和はそう言い、続けた。

「若いピッチャーが多いですし、流れやタイミングひとつで投球内容がガラリと変わることがありますから、そこはすごく大事にしています。キャッチャーがマウンドに行ける回数は決まっていますし、必要な時は自分が行く。ただ、年齢が離れすぎているピッチャーの場合は、セカンドに柴田(竜拓)がいれば、『声かけてこい』って伝えますけど(笑)」

 ベテランならではの目配りと気配り。DeNAにとって、大和は今やなくてはならない存在だ。

 現在、チームは2位につけており、CS(クライマックス・シリーズ)進出の可能性は高い。CSは短期決戦であり、ミスが許されない。やはり守備力のある大和の存在は必要不可欠になる。大和は阪神時代に5度(2010年、2013年、2014年、2015年、2017年)CSを経験している。

「やっぱり独特な雰囲気がありますよね。CSのような短期決戦は流れが重要な試合になってきますし、難しい戦いだと思います」

 とくに2014年は、リーグ2位でCSに挑み、広島、巨人を相手に無敗で日本シリーズに進出。ソフトバンクとの日本シリーズでは初戦こそ勝利したものの、2戦目からまさかの4連敗を喫し、日本一を逃した。大和は外野守備で好プレーを連発したが、打つ方では16打数1安打と結果を残せなかった。

「負けなしで日本シリーズにいって、ひとつ落としたら(負けたら)ガタガタとなってしまった。僕自身も打てなかったですし、あの悔しさは今も残っています」

 大和が移籍してくる前年の2017年、筒香嘉智を筆頭にDeNAの若い選手たちも同じような経験をしている。リーグ3位からCSを勝ち上がり日本シリーズに進出するも、ソフトバンクの前に善戦むなしく敗れ去った。つまり大和は、現チームメイトと同じマインドを有しているといっていいだろう。日本一になれなかった悔しさが、心の奥底から消えることなく滞留している。

「野球をやっていると、うれしいことよりも悔しいことの方が多いんです。だから努力をするし、結果が出た時の喜びは大きい。ベイスターズの選手は、2年前の日本シリーズを経験しているメンバーがほとんど。そういう意味では、悔しい気持ちを晴らしたいと思っている選手は多いと思います。もちろん、僕も同様に」

 そして一呼吸置くと、表情に力がこもった。

「最終的にどう終えるのかを考えて、このチームの勝利に少しでも貢献したい。そのためだったら何でもやりますよ」

 デッドボールを受けて心配されたが、大和は治療を終え現れると、右足を引きずりながらも「大丈夫です」と気丈に語った。

 DeNAに来てよかったと語る大和の頂点を目指す戦いは、まだ終わらない。

Sportiva

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